中川 雅史さん

LINEヤフー株式会社勤務 2024年度入学生 栗木契ゼミ

はじめに

みなさん、こんにちは。私からは、MBA受験の動機と、大学生活の心持ちについてお話したいと思います。入学を検討されている方の背中押しになれば幸いです。

神戸大学MBAを志した経緯

私にはMBAを志す理由が2つありました。1つは自身が過去に新規事業開発で経験した失敗の要因を解消するヒントを得たいと思ったこと、2つ目は自身が働くLINEヤフー社の「オープンコラボレーションハブLODGE」から新規事業が生まれにくい課題を突き止めたかったことです。この2点が志の起点となっていました。加えて西日本を代表する神戸大学の経営学を学び、今後のキャリアに新たな視座を得たいという思いから、神戸大学MBAへの入学を希望しました。

受験準備について

研究計画書

研究計画書は書き方に悩む方も多いかと思います。もちろん志望理由をしっかり書くことも大事ですが、「計画書」となると勝手が違いますよね。私は幸運にも神戸大学MBAの修了生に知人がいたため、面談やレビューを通じて仕上げていきました。

重要なのは「なぜその研究をしようと思うのか?」「なぜその解が必要なのか?」「なぜ今なのか?」という「なぜ」を何度も反復しながら、自分自身に腹落ちさせていくイメージを持つことです。また「その研究をどのように実行するのか?」「研究成果は(自社のビジネス課題に)どう活かされるのか?」といった、入学後や修了後に考えるような内容も記載する必要があります。

しかし、この計画書は在学中の軸となるものであり、学びや気づきとともにアップデートしていく「夢の地図」だと思っていいのではないでしょうか。「なぜこの研究をしようとしていたのか?」「なぜMBAに来たのか?」「自分のキャリアにどう影響するのか?」と向き合う機会が在学中に何度もあります。その度に修正や追加をしながら大切に育てていくことになると思いますので、まずは現在の思いと将来の展望を存分に描くことをお勧めします。

筆記試験

私の受験年度までは英語試験(辞書持ち込みOK)がありました。著作権の関係で過去問はほぼ公開されていませんでしたが、ビジネス英語の単語一覧や用語集、よく使われるフレーズ集などを読んで準備しました。

小論文については、過去問からその年のビジネストレンドや時事問題が出題される可能性が高いと予測し、関連用語の意味や事例を調査し、自社や身近な情報と掛け合わせて作文する練習をしました。私の年は「生成AI」に関するテーマが出ると予想し、各業界における生成AI活用のメリット・デメリット(課題)と対応策の整理、自社の事業との関連性まで文章化する準備をしました。

業界キーワードを組み合わせた文例作成には生成AIも活用し、そこに自分の思考や自社の状況を加えてリライトしていました。この過程で、それまで関心を持っていなかった自社の「サステナビリティ経営」について初めて知るきっかけにもなりましたね。

面接試験

面接試験(口述試験)では、まず研究計画書の内容について話しました。特に起点となる出来事の要因について深く質問されました。ここで重要なのは、何が事実(ファクト)で、自分の考察は何か、そして現時点で解明できていない謎は何かを明確に区別できていることです。特に現時点での考察は抽象的な言葉で濁さず丁寧に説明し、「解明できていない謎」は正直に明確に伝えることが大切です。

私の場合、新規事業開発の経験から「新規事業チーム作りのリソース支援」をテーマにしていたため、「この課題が解決できたら、将来起業する気はありますか?」といった質問も受けました。研究成果を将来どう活かすつもりなのかという問いもしっかりありました。

在学中の様子について

社会人経験を経てMBAに入学し、仕事と学業を両立させる生活は、多くの人が経験することではありません。学生時代と比べても全く異なる景色を見ているような新鮮なインプットが日々ありますが、短期間に凝縮されたカリキュラムは相当にタフです。

あえてこの環境に飛び込もうとしている皆さんや同期生は、良い意味で「変態」の集まりだと思います。神戸大学MBAには多様な目的やバックグラウンドを持つメンバーが集まりMBA1年目の講義も一方通行ではないため、同期生の業界知識や専門性の高い話を聞いて意見交換し、教員ともたくさん対話して多くの刺激を得られます。同じ理論や事例を学んでも、これまでの社会経験などから各自の解釈は多様な切り口が生まれます。「学んでいる!」「しんどいけど前に進んでいる!」という懐かしさと高揚感、学生気分を体験できることも貴重ですが、この多様性を面白がれることこそが経営学の魅力の1つだと私は思います。この感覚と学びの実績は、その後の修士論文作成のベースとなる知識、体力、モチベーションに繋がります。ただし、目先の講義や課題だけに忙殺されないよう、自身の研究に役立つ情報とそうでない情報を区別すること、同期生とのワイガヤだけに終始せず、ラスト半年の修士論文作成という個人戦への備えとして過ごすことが大事だと私は思います。

最近は生成AIを使って文献調査やレポート校正などに活用する機会も増えています。インターネット企業に勤める身として、私は活用しない選択肢はないと考えていますが、アウトプットされる内容には常に疑いの目を持ち、自分の頭で再処理できる範囲で使うようにしています。生成AIを「楽をするため」ではなく、その分、他のことを考える時間や事例研究のインタビューを丁寧に行う時間だと思って行動するようにしています。テクノロジーに溺れてしまわないよう注意が必要ですね。

また私がお勧めするのは、「私はこう思うが…」と異なる角度から意見を率直に言ってくれる同期生を1、2名見つけておくことです。講義内で行うグループワーク等では協調が必要かもしれませんが、自身の研究の幅を広げるには、単に同調し合うだけでなく、建設的な議論ができる仲間がいる方が有益です。私の場合、MBA1年目後半の「テーマプロジェクト研究」のメンバーがそうでした。互いに関心のある情報を共有したり、書籍を貸し借りしたり、先行研究をシェアすることで、自分が持ち合わせていない知識や視点を得られ、とても助かりました。雑談のように議論し、研究内容について壁打ちできる相談相手がいることで、MBA2年目の研究の推進力が大きく変わってくるように思います。

最後に

何より見失ってはならないのは、受験動機と研究計画書です。冒頭で「研究計画書は夢の地図」と表現しましたが、自身のキャリアや事業課題の棚卸しから始まり、MBA在学中に学びながらアップデートし、最終的な研究成果(修士論文)は、卒業後のキャリアの道標となる可能性を秘めています。「私はなぜ神戸大学MBAに来たのだろう?」と問い続けながら、自分の真の目的をぶらさずに過ごすことで、充実したMBA生活を送れるのではないでしょうか。神戸大学MBAの受験を検討される皆様の参考になれば幸いです。

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