肥後 和宏さん

株式会社つるや勤務 2020年度入学生 森村文一ゼミ

1.はじめに

今日は、入学後1年以上経過し、今だから実感する、「あの受験対策が有用だったなあ」、「あの受験準備が入学後に役に立ったなあ」という視点で、執筆させていただきます。

「合格への道」をご覧になっている皆さんは、神戸大学MBAに関心を抱き、受験について、どのような対策をすれば良いか、情報収集をされているのではと思います。私自身についても、先輩方の「合格への道」を10年分は拝読し、受験準備にとても有益だったことを記憶しております。ですので、受験準備と入学後の活動に繋がりを持たせて説明したいと思います。あくまで、個人的な経験から、私の舞台裏をお見せすることになりますが、神戸大学MBAを目指される方にとって、少しでもお役に立てましたら幸いです。

2.問題意識

私の問題意識は、「どのように社内改革を進めていくか、問い直し・実践する」ことでした。そこで、以下に、会社概要と私の役割について記します。

私は、愛媛県松山市に本社を置く、株式会社つるや(小売業)に所属しています。主な事業内容は、靴や雑貨の消費者向け販売になります。その中で、私の役割は、靴部門の責任者になります。しかし、約2年前を振り返ると、全社ベースの業績は、非常に好調だが、任されている靴部門は、不振が続いていました。このまま不振が続くと、事業部の存続に影響がある状況でした。この危機感が、「靴事業を問い直し・実践する」ことへの問題意識に繋がります。

3.受験決意

私の受験は、所属企業の代表の承諾によって実現しました。所属企業では、これまでMBA入学者はいません。前例がなければ、前例をつくっていくことが大事だと思います。そこで、所属企業の代表に、MBAを目指したいことを相談しました。その場で、受験にあたり「2つ条件」の提示がありました。1つ目の条件は、優秀な学生が集まるMBAを選択することです。2つ目の条件は、MBAで得たことを社内で生かすことです。この2つの条件に合致する、関西と関東のMBAを3校ほどに絞りました。最終的に、愛媛県から通学可能か、仕事との両立が可能か、ということを考慮して、神戸大学MBAへの入学を決意しました。その際、参考にしたのが、神戸大学MBAのホームページです。神戸大学MBAでは、プロジェクト方式の中に、6名前後のグループメンバーで研究活動するテーマプロジェクトという課題があります。先輩方のテーマプロジェクトの面白い研究成果を拝見して、とても興味が湧きました。研究活動を通して、様々なバックボーンの学生とのディスカッションを通して新しい視点や発想が創造できる可能性を感じました。このような事前調査を代表に説明し、承諾をもらうことで受験が固まりました。

4.試験対策全般

私は、できるだけ入念に準備をしよう、ということが出発点になります。その理由は、1回きりの受験にすることを決めていたからです。私の場合、愛媛県からの受験になります。愛媛県から第1次選考、第2次選考を進み、合格するための時間的・経済的負担を考慮して、複数回の受験は難しいと考えました。その結果、英語・小論文・経歴詳細説明書/研究計画書について、どれが重要かという視点を捨て、どれもできるだけ入念に準備しようと決めました。よって、私の準備は、受験の約1年前から、スロースタートしました。

5.英語対策

英語対策は、TOEIC公開テストの基準スコアを活用することが、英語に不安がある方や、比較的時間がある方にお勧めの方法になります。

私は、英語の過去問を取り寄せ、解答してみて、やや難解だったと記憶しております。ですので、過去問の試験レベルを簡単に感じる方は、私の事例にあてはまりません。募集要項を確認すると、TOEIC公開テストの基準スコア(2020年度730点)以上で、英語科目免除になります。そこで、試しにTOEIC公開テストを受けてみました。しかし、点数が良くありませんでした。TOEICを効果的に学習する方法について調べていると、リクルートが運営する、スタディサプリENGLISHという、TOEIC対策に役立つアプリケーションによる学習法を知りました。そこで、申し込んでやってみると、短期間で英語科目免除になるスコアを獲得することができました。

TOEIC公開テストによる英語科目免除を活用するメリットは、小論文・研究計画書/経歴詳細説明書に集中できることです。また、TOEICのReadingパートの修練によって、入学後、とても役立ちました。例えば、私の所属するゼミでは、先行研究を読むことが最初に重要だと教わります。その理由は、どのように現象を掘り下げるかという眼鏡を得るためと、できるだけ納得できる"わかった"に到達するためです(森村文一先生)。その際、先行研究が豊富にある英文で書かれた論文を読むようになります。なんとか、先行研究(英文)を読解できているのもTOEICの学習のおかげです。

TOEIC公開テストによるスコア取得は、少し回り道とも捉えられますが、入学後に有用な場面が多いため、英語に不安がある方や、時間がある方にお勧めできる方法と思います。もっとも、願書提出に、TOEIC公開テストのCertificateが必要になるため、準備時間と相談する必要があると思います。

6.小論文対策

小論文対策は、インプットとアウトプットがとても重要だと感じます。そこで、小論文対策のインプットとアウトプットについて以下に説明します。

小論文対策のインプットとは、小論文の型を知ることです。どんなに優れた主張も型が悪いと、読み手に誤解を生じさせる可能性があります。ですので、参考文献等で型を習熟することが良い結果を生むファーストステップと思います。そこで、私が使った参考図書を挙げておきます。

参考図書

(1) 飯野一・片山良宏・尾形英之・釜池聡太 (2011)『国内MBA受験 小論文対策講義』中央経済社

(2) 濱口健宏・波田野年洋・押久保政樹・奥山新 (2019)『国内MBA入試対策 小論文対策の論点 ~小論文を構想する~  長文・グラフ・会計問題の視点から』パブフル

(3) 吉岡友治 (2013)『大学院 大学編入学  社会人入試の小論文 [改訂版]  思考のメソッドとまとめ方』実務教育出版

次に、小論文対策のアウトプットとは、小論文の型に沿って文章を作成することです。まずは、過去問を取り寄せ、やってみることを推奨します。私の場合、最近において文字を紙に書くことが減っていたため、漢字がなかなかでてこないことに気が付きました。普段から、PCやスマートフォンの漢字変換に慣れているためと想像されます。受験年で文字数(私の受験年は、600文字以内)は変わるかもしれないですが、規定文字数の中で、自分の主張を、客観的な知見からサポートさせ、一貫性のある文章にする必要があります。そこで、願書提出後、第1次選考まで、参考書等の練習問題を1日1問~2問ずつ解くことを次のステップにしました。2~3週間後には、体感として、500~600文字はこの程度だという実感と小論文の構造への理解が深まり、対応できるトピックスの幅が広がりました。

小論文対策のメリットは、入学後のレポート作成にそのまま役立ちます。ほとんどの授業では、課題レポートがあります。レポートの分量は、授業によって異なりますが、おおむね2000文字~3000文字でした。小論文で得た型のスキルが、そのまま課題レポートに有益だったと振り返ります。

7.経歴詳細説明書/研究計画書

経歴詳細説明書は、研究の背景を明確にする役割があります。仕事のハイライトとは何かを追求するために、自分自身の転機、成し遂げた成果、不足する能力を整理していくと、新たな問題や取り組む課題に気づきます。私自身は、ひとまず、入社後から時系列に、職務内容と仕事の成果、不足する能力を下書きしました。その後、全体を俯瞰して、フォーカスするポイントを定め、その前後を含めて、経歴詳細説明書を作成しました。その結果、研究に対しての動機付けが明確になりました。

次に、研究計画書は、先輩方の「合格への道」に記されている通り、重要度はとても高いと思います。しかし、研究計画書は、そもそも何なのか、分からなかったため、参考文献を読むところから始めました。

参考文献

(4) 飯野一・佐々木信吾 (2003)『国内MBA研究計画書の書き方-大学院別対策と合格実例集-』中央経済社

(5) 伊丹敬之 (2001)『創造的論文の書き方』有斐閣

研究のテーマを決めることは、とても難しいことと思います。私の場合、自社・消費者・競合企業の視点で、自社と取り巻く環境について現象を整理しました。そうすると、不思議なことや面白い現象があることに気がつきました。例えば、市場環境は、右肩下がりだけど、ある特定の企業だけ業績が良かったりします。その企業は、協業によって製品開発をして、ヒット商品をだしていることがわかりました。その協業のメカニズムって、どのようになっているのか?とても不思議に思いました。それで、研究領域を、協業による製品開発について、と定めてみることにしました。このように、自社と取り巻く環境について現象を整理すると、新たな視点に気づくかもしれません。

受験前の研究計画書に求められることを考察すると、①なぜその研究テーマを選択したか、②どうやって研究を進めるか、③研究結果はどのような意味をもたらすか、ということに、論理的に答えることができるかどうかを問われていると思います。じっくりと取り組み、何度も修正をしながら、少しずつ前進していけば、本当にやりたい研究テーマが詰まった研究計画書になるかと思います。

8.第1次選考当日(小論文)

第1次選考の小論文は、対策どおり、型にはまった文章を書く事ができました。私の場合、書き始める前に10分ほどで、次の4つのStepを箇条書きで下書きし、思考を整理しました。その手順は、次のとおりです。Step1.自分の主張は何かを決めます。Step2.それをサポートする理由を4つに絞ります。その理由は、規定文字数600文字の中で、4つ程度の理由が、多面的な視点で主張をサポートできるからです。Step3.サポートする理由の内容を考えます。客観的な意見に、具体例を加え、説得的に主張できるように工夫します。Step4.想定される理由の反論を示し、理由の順番を組み替えます。あとは、練習どおり、書くだけです。普段は、あまり綺麗な字ではないため、意識して丁寧に書きました。

9.第2次選考当日(面接)

第2次選考の面接は、経歴詳細説明書/研究計画書の読み直しが効果的と思います。経歴詳細説明書/研究計画書を書いてから第2次選考まで、数カ月経過しているため、何を思考したか、なぜ記入している研究がしたいか、問い直すことが大事です。

当日、面接官の先生は2名でした。主に、提出した経歴詳細説明書/研究計画書に基づいて質問されると思います。私の場合、特に、経歴詳細説明書の内容について質問されました。ですので、書いたことを丁寧に説明することが欠かせないと思います。約10分間という面接時間だったため、経歴詳細説明書/研究計画書を読み直し、どのような研究をしたいかもう一度問い直していれば、十分対応できると思います。

10.入学後について

入学後は、多くの仲間との出会いが待っています。その中で、テーマプロジェクトの体験について、触れておきます。入学前に実施した、神戸大学MBAのホームページによる事前調査と比較して、実体験はどうだったか、気になるところです。その答えは、期待以上の経験だったと振り返ります。テーマプロジェクトでは、個性豊かなメンバーとの活動がとにかく面白かったです。その理由は、メンバーそれぞれ、得意なことが異なることを前提とし、同じ目標設定の中での創造的活動だからです。例えば、メンバーの山本さんは、緻密なタスク管理が得意であり、そのおかげでチーム全体の役割分担や進捗をスムーズに進めることができました。一芝さんは、理論的考察が得意で、常に話題の提供を促し、プロジェクトの中心的役割を果たしてくれました。願野さんは、豊富な営業経験を生かして、人との繋がりから、研究対象の人脈を広げていき、まだ世の中に知られていない企業対象の発見につなげました。砂野さんは、メンバーがある方向に流されそうになった時に、異なる視点で意見をして、より良いアイデアの方向性をつくりました。山口さんは、複雑なことを、わかりやすく伝えることが得意であり、本番のプレゼンテーションをたった一人で引き受け、みごとに重責をはたしました。個の特性を理解し、その上で議論を盛り上げ、時に調整をし、新しいアイデアが生まれるという体験が私の財産になりました。よって、入学後は、テーマプロジェクトをはじめ、多くの活動を通して、新しい発見や経験が待っていると思います。

11.最後に

私にとって、神戸大学MBAは、大きな川を渡るような挑戦でした。もしかしたら、「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」という諺で表現できるかもしれません。その意味は、悪い時もあれば、良い時もあるということです。自社の事業を問い直し・実践するため、神戸大学MBAが浮かぶ瀬になったと確信しています。受験準備という小さな一歩ずつが、入学後に、多くの学生たちとの百回を超えるディスカッションの経験に繋がります。その結果、学内で得た知見を社内の組織や事業にどのように融合させていくか、これからの課題として問われています。このような機会は、愛媛からの参加を受け入れてくれる神戸大学MBAの門戸の広さにあると感謝しています。

繰り返しになりますが、受験準備の内容が、合格の先にある学生生活をより有意義な経験にすると思います。英語・小論文・経歴詳細説明書/研究計画書の対策について一つずつ向き合っていくことで、授業や修士論文の課題に繋がっていきます。1年半という、短い期間の中で、基礎的なことを復習する時間は少ないと思います。よって、受験前がその時かもしれません。受験準備は孤独ですが、入学後は一変して、仲間と一緒に取り組めるようになります。現在、修士論文を執筆中になりますが、ゼミの森村文一先生や多くの方が、日々支えてくださっています。

最後になりますが、神戸大学MBAに興味を持っている方やすでに受験を決めている方にとって、1つでも有益な情報になっていれば、大変嬉しく思います。