大田 結さん

CM音楽プロデューサー(株式会社ステップ勤務) 2019年度入学生 鈴木竜太ゼミ

01:はじめに

みなさん、はじめまして。「神戸大学MBAってどんなとこなんやろう」「どうやったら合格できるんやろう」などの情報を集める中でこちらのページにたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか?私も受験前に、この「合格への道」を熟読した一人です。今日は「少しでも情報がほしい!」とこのページを見てくださっている方に、志望動機や入学試験のこと、そして「神戸大学MBAってこんなとこやで!」を、私の個人的な経験をもとに書かせていただこうと思います。拙文ではございますが、神戸大学MBAへの入学を目指される方にとって少しでもお役に立てれば幸甚です。

02:志望動機・受験のキッカケ

私は2005年に大学を卒業し、CM音楽制作会社に入社いたしました。MBAというと「Mac Book Airのこと?」と聞かれるような業界です。学生時代を含め20年近く音楽業界に携わってきた私の日常会話における頻出ワードは、「キャッチー」「売れセン」「ワクワクできそう」「キュンとする」など抽象的なものばかり……、自分の制作した音楽に対し「なぜこの音楽がいいと思ったのか」を論理的にうまく言葉にできるようになりたいと思ったこと、さらに「クリエーティブの値段」や「クリエイターの組織コミットメント」について考えるときに、そのベースとなる経営学を体系的に学んでみたいと思ったことが、MBAへ興味をもったキッカケです。また「学校」というフラットな環境に身を置いたときに自分がどんなキャラクターを発揮するのだろうか、という好奇心も少しありました。

受験を決めてから夏頃までに、いくつかの社会人を対象にした大学院の説明会に参加しました。数あるMBAコースの中で神戸大学を選択したのは、①在職しながら学ぶ、②通信はサボるだろうから通学タイプ、③ディスカッションが多い、④修士論文を重視している、⑤学生の質がよさそう、という理由からです。他大学院では「転職に有利!」「役職や給与がアップ!」などMBA取得後のメリットの押し出しが強く、なんだかしっくりこないなぁ……と思っていたところ、神戸大学のセミナーでの「その人次第だし、僕は何も変わらなかった」「MBAを取得したいだけなら他の大学にした方がいい」という言葉に、誠意と親近感を感じ、神戸大学で学びたい気持ちを強くしました。

また大学の先輩が神戸大学MBA出身だったため、具体的にどのようなスケジュールで勉強を進めたのか、私のような業界からでも入学できる可能性はあるのか、などを聞かせていただく機会もありました。MBAというと俗に言う「意識高い系」ととられることも多いのですが、実際入学してみると先輩から伺った通り、同級生は「所属組織や業界に何らかの危機感を抱いている人の集まり」という感じで、飲みに行ってもお互いの組織の相談や議論を真剣にしていることが多く、純粋に学びたい!という欲求が強いように思います。さらに、他大学院に比べ、比較的業界に偏りがないことも特徴であると聞き、多種多様の職種・立場の方と共に学べることにも大きな魅力を感じたことから、神戸大学MBAの受験を決めました。

また私の場合は、入学後に同業界の方から「クリエーティブにMBAの知識なんかいらんやろ」とか、逆に「そんなお堅いことを勉強したら、クリエーティブな発想なんてできなくなるよ」と言われることも少なからずありました。しかし、私はそうは思いません。私たちの仕事のアウトプットは「作品」と言われますが、クライアントのお金を使い、クライアントの課題解決のために制作された作品であり、クリエーティブで課題を解決するための作品です。よってアーティストのそれとは異なります。MBAでの講義や、同級生と過ごす中でのたくさんの気づきが、クライアントと同じ目線も持って課題を発見することにつながり、共に課題を見つめることができたら、よりよいクリエーティブ・アウトプットにつなげることができるかもしれない、と考えています。

03:試験対策全般

14年間、会社で音楽のことばかり考えてきた私は、試験を前にはじめて「経営ってなぁに?」と考えはじめました。それくらい「経営」という単語が遠い存在で「経営偏差値」がとても低い私が、どのようにして試験に向き合ったかをお話ししたいと思います。

―研究計画書・経歴詳細説明書

「経歴詳細説明書」に関しては、あまり胸を張って「どやっ!」といえるものもなく、正直に経歴を記入したのみです。音楽プロデューサーという職業だけで不合格にされるのではないかと不安に思っていたのですが、やはり「研究計画書」が勝敗を分けたように思います。大学院の進学など考えたことがなかった私は願書を書き始めた当初、「私、これ知りたいねん!」という内容をA4の用紙にツラツラと書くだけだと考えていました。そもそも「研究」そのものをナメていたのだと思います。答えを何でも教えてくれるのがMBAだと勘違いしていましたし、研究により自分で明らかにしてやる!という気持ちはなかったと思います。
神戸大学のMBAは、日々の業務の中から生じた問題意識に対して、解決すべき課題をテーマとして取り上げて研究し、その成果を会社に持ち帰り、自らが実践することが求められています。ですので、テーマは自分の目線から見えている課題を選ぶことが大事です。私の場合は「人材資源が競争優位を左右するにも関わらず、気づけばフリーランスの育成機関のようになっている自社」に疑問を感じ「じゃあ、どうしたら自社のクリエイターに喜んでもらえる組織にできるのかな?」というテーマを当時の自分なりに深掘りしました。研究計画書の基本的な型は諸先輩方と同様、下記の①を熟読しました。そして、この研究がいかに大事か、どこまでが先行研究で明らかになっているのか、今なぜこれが知りたくて、これを知ることがどういうことにつながるのか……はじめての研究計画書にとまどいながらも、伝わる文章を心がけ丁寧に書いたことを思い出します。今思い返せば、研究計画書を書くうちに、どんどん研究したい気持ちが高まったような気もします。とんでもなく偉そうなことを書いていたなぁ……と思いますし、それがわかるようになったのも、神戸大学MBAでの1年間の学びの成果かもしれません。研究計画書は言わば、受験生から神戸大学MBAへの少し押しつけがましいラブレターみたいなものかもしれないな、と今となっては思います。
(参考にした本①)飯野一・佐々木信吾『国内MBA研究計画書の書き方』(中央経済社、2003)

年が明けると、ひんやりと寒い六甲台キャンパスで、英語と小論文の試験があります。

―第一次選考(筆記試験・英語)

研究計画書の提出が11月の末。12月は繁忙期であることに加え、宴席も多く、研究計画書を提出したことで安心してしまったのか、全く準備をしませんでした。年内最後の忘年会でしっかりとドンチャン騒ぎをした翌日の12月30日。大学から取り寄せた英語の過去問を見て、すごく悲しい気持ちに包まれたことを思い出します。出題傾向は毎年異なり、回答時間(60分)に対して長文であり、さらに対訳の問題も、該当箇所を読むだけでは回答できないような意地の悪い問題やなぁ、という印象でした。試験までの一週間は、時事英語の本を読んでみたりしましたが、一番役にたったなぁ…と感じているのは下記の②の本です。
私は英語が得意ではありません。「辞書持ち込みやし何とかなる!」と思っていましたが、実際に問題を解いてみると、辞書を引く時間はあまりないことに気づきます。それを事前にわかりながら、テストの当日、私はとても丁寧に辞書を引きました。受験生のカツカツというペンの音と、私のペラペラという辞書を引く音……、終了10分前にまだ解答用紙は白紙のまま、という絶望的状況の中、すごい勢いでペンを走らせた記憶があります。会いたくて会いたくて震える、ということは聞いたことがありましたが、焦りと絶望で手が震えたのは人生で初めてでした。
持ち込みの辞書に関しては、私は調子にのって「ビジネス実務英和辞典」を一旦購入したものの、過去問を見る限り私に必要なのはもっと一般的な辞書だと気づき、最終的に高校生のときに使っていたような英和辞書を購入し直しました。正直なところ、あまりいい点数は取れていないと思いますが、MBAでの学習において英語の課題もあることから、その読解ができる程度の語学力を問われている試験であり、高得点をとることで合格に近づく、という類の審査ではなかったのかもしれないな、と自分にとって都合の良い解釈をしております。
(参考にした本②)グローバルタスクフォース『MBA速読英語』(大和書房、2005)

―第一次選考(筆記試験・小論文)

小論文は、経営学における時事問題が出題される傾向にあります。こちらも過去3年分の過去問を実際の時間で解かれることをオススメします。特に、最近手で文字を書くことが少ないでしょうし、500~600文字を手で書くのにかかる秒数の目安を予め立てておかれた方がいいと思います。
MBAでの学習では、レポート課題が頻繁にあります。そのレポートでは当然ながら要約を求められたことは一度もなく、講義で学んだエッセンスを頭において、もしくはケースのどこが問題なのかをしっかり捉え、自分なりの視点を見つけ考察し、論理を展開することが求められます。この小論文の試験は、そのレポート作成能力を問われているように思いますし、自身の考えを示しながら、最後の結論まで論理展開できるかどうかがキーになると考えます。小論文を書いた経験がなかった私は、下記の③の本を読みました。こちらの書籍は、小論文を書く思考プロセスがわかりやすくまとまっており、非常に参考になりました。さらに、トレンドを把握するため、『日経キーワード』を確認し、各トピックにおいての論点や視点を必ず3つ言えるような対策を行いました。
(参考にした本③)吉岡友治『大学院・大学編入学 社会人入試の小論文 改訂版 思考のメソッドとまとめ方』(実務教育出版、2013)

―第二次選考(口述試験)

一次試験の合格通知とともに受験生ごとに異なる集合時間の案内通知が届きます。この「合格への道」を見ていると「待ち時間が長い」と書いていたので防寒対策はしていきましたが、教室はあたたかく、さらに私は午後の一番の時間だったため、待ち時間はありませんでした。逆に「待っている間に脳内リハーサルするぞ!」と思っていたのに、そんな時間もないまま、面接室の扉を張り切ってノックしました。

面接官は2名、そのうちの1名は今ゼミでご指導いただいている鈴木竜太先生です。研究計画書の内容によって面接官が割り振られているという話を聞いたことがあり、ヒト系のゼミで学びたいと考えていた私は、扉を開けた瞬間「よっしゃー!」と思わず口に出そうになりました。「自身の抱える問題意識について、神戸大学の経営学の教授に話ができる!」ということが何だか嬉しかったのです。とても緊張した面接の時間はおよそ10分。志望動機や研究内容の説明を行いましたが、メインは「なぜこの研究をしたいと思ったのか」「この研究は、誰にどんな意味があるのか?」の質疑応答です。受験生が、いかに深い問題意識をもっているか、そして神戸大学MBAで学ぶにあたり論理的思考能力や説明能力がどれくらいあるのか、を見ているのだと今となっては思います。

私は一次試験で不合格だと確信し諦めていたため、口述試験の準備をしたと言えるレベルのことは何一つしていないのですが、一次試験の合格発表があったその日のうちに、先に書いた大学の先輩を再度ご飯にお誘いし、その体験談から想定質問を考え、面接に挑みました。面接ではわからない質問があったり、研究計画書の不十分な点を指摘されたりしましたが、「わからないことがあるのは当たり前、そのわからないことをこれから神戸大学で勉強するのだ!」という気持ちで、質問に素直に答えていきました。「最近読んだ書籍は?」と最後に聞かれ、「〇〇経済オンライン!!!」と勢いよく答え、面接官の先生が苦笑いしていたのも記憶に残っています。

04:入学後について

入学前に想像していた何倍もの明るい笑顔で、2年目の桜を見ることができています。
六甲台のキャンパスで同級生と「はじめまして」の日、髪色が真っ赤だったせいもあるのか、私は誰とも目が合いませんでした。同級生の中には入学試験のときから、「あの髪色でMBA!?なんで??」と思っていた方もいたようで、オリエンテーションにご機嫌に現れた私を見て「受かってるー!!神戸大学MBAは懐が広い!!」と思ったと聞きました。私もそう思います。諸先輩方からは「神戸大学MBA開講以来のパリピ」と称されることもあるくらい外見は浮いていますが、今では同窓会組織の理事をしているくらいに、神戸大学MBAに馴染んでいると(自分では)思っています。

入学前は朝まで飲んでいることも多かったのですが、朝型の生活に切り替え、主に会社の始業までの時間をMBAの学習の時間に充てています。MBAでの学びは、疑問の点と点がつながるアハ体験の日々だな、と私は感じていて、しんどいながらも飽きることはありません。クリエーティブ領域で仕事をする私は、もともとアウトプットが得意なタイプであることも手伝っているのか、「このレポートでどんなおもしろいことが書けるか」とワクワクし、現在では修士論文にワクワク・ドキドキしています。

1年次はほぼ毎週、金曜日の夜は梅田キャンパス、土曜日は朝から晩まで六甲台キャンパスで過ごすことになります(カリキュラム上、土曜日の受講だけでも単位取得は可能です)。入学当初は、毎週の講義で先生が当たり前に使っている経営用語が「日本語か英語かもわからへんなぁ…」と知恵熱が出たり、グループディスカッションの授業で同級生の議論についていけず、足を引っ張っているなぁ…と胃が痛くなったり、さらには、宴席を断る回数が増えたり、断って一生懸命書いたレポートの成績が悪かったり、自分の思考の乏しさに腹が立ち、毎週末、闇深いブルーな気持ちに支配されていました。「そんなブルーな気持ちを色にしてみたら絶対オモロイやろうなぁ…」とダメ元でマーケティングの教授に相談したところ夢が叶い、今年の4月よりナガサワ文具センターさんから、万年筆インク「Kobe INK物語―ロマネスクブルー」として販売していただけることになりました。願書を書かれる際にはぜひ使ってみてください。きっと入学後の自分を想像し、ワクワクできると思います。

いまでもブルーな気持ちは時折顔をのぞかせますが、初対面で一切目が合わなかった強面のお兄さん、久しぶりに女友達できたわ!と言ってくれる腎臓内科の女医さん、製薬会社でIT開発をしている頭がキレるシングルマザーのオバチャン(お姉さん)をはじめ、間違っていることはズバーッと指摘してくれるポテト好き人事、私がイライラしていてもホワホワと母のように和ませてくれる税理士、言うことが全部素敵な男社会を生き抜く美声のブランド推進室長、周りを見ながら絶妙なタイミングでチームに意見をくれる新規事業開発担当のお姉さんなど……、年齢や業種を超え、研究・仕事の悩みから日常のあらゆる話題を素直に相談できる仲間になれたこと、そして一緒に勉強できるこの環境を体験できたことは一番の財産だなぁ、と感じています。
残念ながら、1年次の2月後半よりCOVID-19の影響で遠隔授業に切り替わったため、数カ月にわたり校舎に行けておらず、少し寂しい気持ちもありますが、残り少ない学生生活を私なりにしっかり噛み締めようと思います。受験を迷われている方に「神戸大学MBAってどんなとこ?」と聞かれたら、「たまにしんどいけど、考える武器が色々もらえるRPGみたいにワクワクできるとこ」とお答えしたいです。

05:おわりに

ついつい長くなってしまいましたが、ここまで読んで頂きありがとうございます。「人生でイマが一番真面目に勉強してるんちゃう?死ぬ前にいいモンみせてもらったわ!」といつも励ましてくれる家族、授業前には「なぁ教えてー!」「音楽業界の私にはわからへんもん!!」と言い、授業が終われば「学割で飲みに行こー!」「みんなで書き初めやろー!」とワガママを言う私にいつも優しく接してくれ、付き合ってくれる同級生の皆さん、「クリエーティブ業界だからわからない」を盾にしている私を丁寧に(いや、厳しく)ご指導いただいている先生方、そして私がMBAに通うことをしぶしぶながらも許可してくれた会社の仲間に、とても感謝しています。
修士論文が書き終わった頃に「ロマネスクブルー」がすごく爽やかなブルーに見えるんだろうなぁとワクワクしながら、この文章を締めくくりたいと思います。