中野 陽介さん
ノバルティスファーマ株式会社 勤務
1 .プロフィールをお聞かせ下さい。
2017年に入学いたしました、中野陽介(なかの ようすけ)と申します。私は2006年に4年制大学の理学部 物質生命化学科を卒業し、グラクソ・スミスクライン(以下GSK)という製薬企業に勤めていました。GSKではMR職として、呼吸器・アレルギー・泌尿器領域等の薬剤を担当した後、2011年に抗癌剤事業部に異動しました。
2015年に現在のノバルティスファーマ(以下NPKK)との企業間トレードが行われ、私の所属していたGSKの抗癌剤領域がNPKKに統合される事となりました。そのため、2015年3から2017年1月まではNPKKのMR職として勤務していました。
2017年1月に希望が叶い、東京本社のメディカルアフェアーズという部門に移りました。ちょうど神戸大学大学院を受験している最中の事だったので、色々と考える時期でもありました。現在は東京でMSLとして勤務しています。活動内容としては、主に自社医薬品や臨床試験に関わる情報提供活動を行っています。
2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?
いくつかありますが、一番の理由は、神戸大学の魅力的な先生方から直接講義を受けられるという点です。受験当時は兵庫県内でMRをしていましたので、平日の大阪での講義も含めフルに参加できるだろうと考えていました。神戸大学MBAが得意とする学問領域の一つに「人的資源管理」があり、私の興味を持っている領域とも合致していました。
「働きながら学ぶ」というコンセプトは、普段の業務で感じている課題の解決に結びつくのでは無いかとも考えました。「休職して大学院に通う」よりは、妻の理解を得られそうだと考えた事も、小さくは無い理由です(笑)
大学では主に理系の内容ばかりを学習していた事もあり、「経営学」という分野へのイメージは殆どありませんでした。「MBA」という響きに若干の憧れを持っていた事もあり、いずれ海外の大学院で学位を取得出来たら、とは漠然と考えていました。
2016年3月ごろ、同じNPKKで仕事をしていた池田麻利絵さんから『私、この4月から神戸MBAに通うんです!』というお話を伺いました。そこで初めて、国内MBAに対する興味が生まれました。その後折に触れ、彼女から神戸MBAの素晴らしさ・楽しさ・厳しさを聞き、2016年の夏頃に受験する事を決めました。
3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。
この文章を書いているのは2018年の6月です。コア科目とプロジェクトは2017年に終わりましたので、選択必修科目として取っているいくつかの講義を除けば、土曜日のゼミが主なMBAでの活動となります。
平日は仕事の合間に修士論文の参考資料を読んだり、インタビューを行ったりしています。出退勤時の電車の中で書籍や論文を読むのと、昼休みを利用してインタビューのアポ取りや資料をまとめたりしています。金曜の夜に都内から移動し、大阪か神戸に泊まります。
土曜は講義が無ければ朝から自習室に篭り、研究内容をまとめています。ゼミの後は、大抵はゼミメンバーで食事に行き、論文進捗からの現実逃避を行います。日曜の始発で東京の自宅に戻り、大体午前10時からは家族との時間を過ごすようにしています。
2017年4月の入学から12月頃までは、本当に嵐のように過ぎ去ったと感じています。特に入学直後の4月から8月頃までは、大量の書籍、レポート、ケースプロジェクトだけでなく、RST(日英産業事情応用研究)やJBCC(日本ビジネススクール・ケースコンペティション)への参加で、睡眠時間は相当削っていたような記憶があります。
4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?
上林憲雄先生は人的資源管理がご専門で、所属するゼミ生もこの領域に興味を持っている方が大半です。ゼミでは各ゼミ生の修士論文進捗状況を発表するのですが、各々異なった業界・職務に就いているメンバーがどのような問題意識を持っているのか、そしてどのような解決策を考えているのかを聞くことが出来るのは大変面白い時間です。それぞれの研究に関連して、上林先生や他のサポートの先生方からの理論に基づいたご指摘、あるいはTAさんやフェローの先輩方からの実践的なアドバイスは、MBAゼミならではの学びだと思います。
自身が業務の中で感じている問題意識を「それは何故か?」「本当にそれが問題なのか?」と深掘り・吟味しつつ、「誰が聞いても明確に分かる問題意識とその解決策」へと進化させていく過程は難しくもやりがいのある時間です。また、ありきたりなテーマ・結論にならないために独自の視点とアプローチが求められるので、各自が創意工夫を行っています。
私の取り組んでいる研究は「被買収企業社員の離職要因」というタイトルで、リテンション・マネジメントに関連するテーマを選択しました。自主的な就職・転職では無い形で企業に所属する事になった従業員は、どのような要因で買収企業から離れていくのか。また、社員の背景によって違いはあるのか、「コア社員」が離職する事でどのような影響があるのか、離職を予防する事はできるのか。出来上がった修士論文を企業の経営者に提示できるような、納得度とインパクトの高いものにするため、妥協せずに研究を続けたいと思っています。
5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。
4月から8月までは、やはりケースプロジェクトが印象的でした。私のチームは遠隔地からの通学者(東京・名古屋・富山・滋賀)で構成されており、平日に集合する時間はあまり取れませんでした。そのため、平日はSkype会議を深夜まで行っていましたし、発表の直前には深夜の路上でPPTを修正したりもしていました。皆とても優秀で、彼らと一つのプロジェクトに向かえた事は本当に良い経験でした。
8月には所属する教室も決まり、最初のゼミが開催されました。この時点では、修士論文のテーマは茫洋としていて上林先生から「ありきたりなテーマ」との厳しいコメントも受けました。今思えば確かに、あまりにストレートな内容だったと思います。(当初は「製薬企業における離職率を低下させる」をテーマにしようとしていました)
8月から1月までは、テーマプロジェクトがMBA生活の中心でした。生活リズムはある程度整うようになってきたので、体力的には少し余裕が生まれていました。この余裕故か、テーマのメンバーでは毎週のように打合せの後に懇親会を行っており、テーマの決定まで1ヵ月近く徘徊する事になってしまいました。多くの企業へもインタビューに訪問し、自身のキャリアや修士論文のテーマにも示唆を得るきっかけになりました。
1月からこれまでの期間は、自身の研究に向き合いつつ幅広い視野を持つ機会に恵まれました。2月のRSTでは英国の数々の一流企業を訪問し、彼らが世間の変化にどのように対応しているか、どのようなビジョンを持ち仕事をしているのかを知る事ができました。また、JBCCの実行委員会に参加し、他大学MBA生との交流機会を得られた事で、神戸大学のみならず「日本のMBAのプレゼンスを上げる」という考えも生まれてきました。1年半という限られた期間ながら、色々な経験をする事ができたな、と感じています。
6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。
しばらくは今の企業で、会社への恩返しをしたいと考えています。大学院通学に伴い、土曜日の出勤や有給休暇取得等、周りの方に沢山フォローしてもらいました。また、希望の部署への異動が叶った直後の事でもありますので、今の部署で自分が社会と企業にどのような貢献が出来るか、活動を通して考えたいとも思っています。
将来的に、「自分にしか出来ず、現在は存在しない仕事」に思い至った時には起業する事も有り得るとは考えています。私はこれまで12年間、医薬品産業で過ごしてきましたので、おそらくこの産業から離れる事は無いだろうとも考えています。日本の保険医療制度や地方と都市部の医療格差について色々と思うところがあるので、それらに対する取り組みが出来ればと思っています。
7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。
残り2ヶ月半となった修士論文の提出まで、健康には気を付けつつも止まらずに走り抜けたいと考えています。時間との戦いの中ですが、妥協は生涯後悔してしまいそうなので、最後の一文字まで気を抜かずに書き上げたいと思います。先生方の言葉を借りると「将来、自分の棺桶に入れられるような」修士論文に仕上げたいですね。
同時に、これまで一緒に過ごしてきた同期との関りも大事にしたいと思っています。ゼミ生とは月に何度か会う機会がありますが、他のゼミに所属する同期とは六甲駅やバス停ぐらいでしか顔を合わせる機会が無くなってきています。同期間での学外活動(ゴルフ部、マラソン部、スノーボード部)もこれまでに発足していますので、これらを通じた関りは終了後も継続し、年に1-2回ぐらいは皆さんとお会いできればと感じています。
これまでのMBA生活は多くの方々の協力あってのものだと度々感じています。先生方、OBOGの方々、同期と会社の人々からのサポートはもちろんですが、週末不在にすることを許してくれた家族に対し、これからの人生を通じて恩を返していきたいと思っています。