英国産業事情応用研究(RST2018)報告
【日程】2019年2月10日(日)~ 2月16日(土)
【行先】 ロンドン、クランフィールド大学(イギリス)
日英産業事情応用研究(通称RST=Reciprocal Study Tour)は、英国クランフィールド大学と神戸大学が協働して提供しているMBA生向けプログラムです。このプログラムは、6月に行われる、クランフィールド大学MBA生が来日する日本研修プログラムと、2月に行われる、神戸大学MBA生が渡英する英国研修プログラムから成り立っています。今回は、2月に行われた英国研修プログラムの様子を紹介します。
引率教員から一言
本年の英国研修は、2月10日(日)から16日(土)までの日程で行われました。本年度の参加者は22名と大所帯となりましたが、リーダー陣のもと、よくまとまり、大きな事故もなく無事研修をおくることができました。クランフィールド大学で長い間、神戸MBAの面倒を見てくださったDavid Simmons教授が退官され、今回からMs. Marianaが新しく担当されることになりましたが、今年も、企業訪問に講義に文化体験にと盛りだくさんのスケジュールを準備していただきました。クランフィールド大学の皆さん、企業訪問にご協力をいただいた企業の方々、関係の方々に心より御礼を申し上げます。
また神戸大学MBAのみなさん、事前準備、プレゼン等お疲れ様でした。実りある研修旅行になっていれば幸いです。以下、英国研修の概略、参加した神戸大学MBAの方からの感想記を紹介します。
研修概要
2月10日(日)
(夕刻)ロンドン・ホテルに集合
(夜) クランフィールド大学Ms. Marianaを交え、恒例となったパブでのキック・オフ・ディナー
2月11日(月)
(午前)港湾運営会社DP World London Gateway Logisticへ。会社概要等説明を受けた後、実地見学。大型クレーンが何機も並び、コンテナが山積みされている光景に圧倒されました。
(午後)ロンドン中心部にある創業1851年の Georgian Hotelへ。英国流のおもてなしにつきお話をうかがった後、Afternoon Teaを賞味。
(夕方)恒例となったロンドン・アイ(ロンドンにある大観覧車)乗車体験、その後、テムズ川のディナークルーズ。初日から盛りだくさんの一日でした。
2月12日(火)
(午前)海底ケーブルの製造・敷設会社Alcatel Submarine Networks。
(午後)保険の総本山Lloyds of London。タイタニック号沈没の際も鳴らされた鐘(ルーティングベル)等も見学させてもらいました。
(夜) 自由時間。ミュージカルにショッピングにと束の間の自由時間を楽しみました。
2月13日(水)
朝早くにバスでミルトンキーンズへ。Tech Mahindra社訪問。昼食はこれまた恒例となったローカル線の古い駅舎を利用したRichimond Station Tea Roomsにて英国伝統のCream Tea。昼食後クランフィールド大学へ。
(午後)Andrew Angus教授による「Brexit」、退官したにも関わらず神戸MBAのためにと駆けつけてくださったDavid Simmons教授による「British Culture」の講義。
(夜) クランフィールド大学主催によるウェルカムディナー。
2月14日(木)
(午前)百貨店チェーンJohn Lewisのディストリビューションセンターへ。説明とセンター内見学。その巨大さとテクノロジーに驚かされました。
(午後)神戸MBA生によるプレゼンテーション。「Summary of prescription drug industry today and tomorrow、What is “OMOTENASHI” value ? & Quiz UK and Japan、Japanese rail way introduction -SHINKANSEN」好評でした。
(夜) クランフィールド大学MBA生主催のカラオケパーティー。
2月15日(金)
(午前)007ジェームスボンドの愛車を製造するAston Martin社へ。注文生産で1から作り上げられる他の自動車メーカーとは一線を画すビジネスモデルを学びました。
(午後)大学街オクスフォードを視察、夕刻ロンドンにもどりました。最終日夜は、打上げ食事会をしました。
2月16日(土)
(朝) 解散
ここからは、神戸大学MBA生の感想記です。(原文のまま掲載)
事後レポート 英国研修
RST2018 サブリーダー 中山亜委
2019年2月11日(月)~2月15日(金)にかけて、MBA生22名、引率教員1名、合計23名が英国研修に参加しました。研修先のクランフィールド大学は修士・博士課程に特化し、70年以上の歴史を有する名門校。AACSB、AMBA、EQUIS、3つのMBA国際機関から認定を受けた「Triple crown」の称号を誇るビジネススクールです。また、ヨーロッパで唯一の「飛行場を所有・運営する大学」としても有名で、構内には航空宇宙工学コース専用の滑走路が敷かれています。
年明け早々、プレゼンテーション班と企業研究班に分かれて事前活動が始まりました。プレゼンテーション班は3チームに分かれ、それぞれ「日本の製薬業界について」と「日本のおもてなしについて」、「新幹線技術とMaaS戦略について」をテーマに準備開始。企業訪問班は訪問予定の英国企業について調査し、RST参加メンバーへの共有会を行いました。訪問企業に渡すお土産の買い出しやフリー時間の過ごし方など、私事も含めてやるべき事は山積み。ワクワクしながらも準備に追われて睡眠時間を削る日々が続きました。しかし今振り返ってみると、この事前研修のおかげでたった数日間の研修があんなにも豊かで実りあるものになったのだと気づきます。
研修は、現地集合の現地解散。研修開始前日にはイギリスに到着するように、各自で飛行機を手配します。早めに到着して自由時間を楽しむ人もいれば、飛行機が遅れて前日の深夜にたどりついた人も。費用が許しさえすれば、直行便で早めの時間に到着する便を取ることをお薦めします。というのも、翌日からはぎっちり詰まったスケジュールと時差ボケで、想像以上にハードな毎日が待っているからです。
滞在中の詳細は、以下のレポートを参照ください。普段の業務とは畑違いの会社を見学したり、有名大学の講義を聞いたり、本番直前まで英語での発表練習に追われたり、アストンマーチンでお土産を買いあさったり(笑)。刺激に次ぐ刺激、緊張に次ぐ緊張、疾風怒涛の日々が始まります。しかし、その分学びも多く、この英国研修に参加しなければ見られない企業、見られない世界、そして見られない仲間の素顔に出会うことができました(笑)。
滞在中は内容があまりに盛りだくさんで、ついていくのがやっと。帰国後、家族への第一声は、「しんどかった~」。でも、終わってしまえば何もかもが良き思い出です。「オックスフォード大学」という一つの大学があるわけではなく、その地域に集合する複数の学院を指すのだということを、私は初めて知りました。あの美しい大学構内を情熱的すぎるガイドさんの英語シャワーを浴びながら歩いた経験を、私はきっと忘れないでしょう。
英語が得意な人も苦手な人も、英国研修に参加することで、自分の視野の広がりを実感できます。一皮むけた大人になること間違いなし!素晴らしいプログラムを用意して下さった、神戸大学・クランフィールド大学の先生方に、心よりお礼申し上げます。
続いて、それぞれのパートの担当者からの各活動コメント
企業訪問
- DP World London Gateway Logistic Park
DP world (Dubai Ports World)=アラブ首長国連邦のドバイに本拠を置く港湾管理会社・ メガターミナルオペレーター、に訪問させていただきました。まず圧巻であったのはその規模!港の広大な土地と重機と海上輸送コンテナの数に圧倒されました。加えて驚いたのは、その大きさとは対照的に自動化されたオペレーションによって、コンテナが精密に制御されており、規模に対して人員が少ないということでした。参入障壁の高さだけではない、市場優位性の源泉を垣間見ることができました。講義(座学)で習った内容を見学によって体験することで、腑に落ちました。 - Georgian House Hotel
直前に訪問したDP worldとは打って変わって、家族経営の小さなホテルに訪問しました。本ホテルはロンドンの中心にあることから、数多くのホテルと競合の関係にあるため、如何にして差別化を図るかが見どころでした。このホテルでは、なるべくハイテク製品を表に出さずに、ローテクにより古き良きロンドンデザインの雰囲気を顧客に楽しんでもらうこと、ハリーポッター人気にあやかって魔法使いの部屋のような個室をいくつか設けることで差別化を図っていました。 - Alcatel Submarine Networks
Alcatel Submarine Networksは、フィンランドのノキアを親会社に持つ世界有数の光海底ケーブルサプライヤーで、世界中に約60万km(地球15周分)の海底ケーブルを敷設しています。グリニッジ天文台にほど近い工場では、3S(整理・整頓・清掃)の行き届いたフロア内で通信ケーブル用精密機器の部品加工と組立作業を見学しました。海底の地形調査、経済性の高いルート解析ノウハウに加え、ケーブル敷設・保守のための特殊船舶を自社で6隻保有するなど、参入障壁の高さがうかがえました。 - Lloyds
世界最大級の保険引受組織であると同時に保険市場そのものでもある、という他に類を見ない存在です。1652年頃にオープンした海運業者らが集まるコーヒーショップを起源とし、日々世界で起こる事故災害を記録したノートが保管され、タイタニック号の記載も。その斬新なデザインのビルは金融街シティの中で異色の存在感を放っており、内部を見学し、再保険の仕組みと今後の展望について学んだ事は非常に貴重な経験となりました。 - AON
AONは世界120カ国に営業拠点を持つ多国籍企業としてグローバルネットワークを形成している企業です。AONをはじめとする保険ブローカーは、被保険者(保険をかけようとする企業)の立場で最適な保険を提案してくれるため、自社の保険を最適かつ無駄のないものにする上で非常に有用です。グローバルに進出が必要な日本企業にとって、リスク分散・回避の上で一つの選択肢としてこのような企業の存在と戦略を学ぶことができたのは今後の財産です。 - Tech Mahindra
Forbes Global Digital100のNon- US部門で1位となっているグローバルIT企業への訪問でした。一般企業のIT化支援や、ITやデータの力で街で暮らす人を支援する試みについて高い視点で取り組まれており、興味深く伺うことができました。M&Aで企業を大きくしながら、そのたびに企業文化も更新していく積極性がとても印象的で、勢いを感じました。 - John Lewis
John Lewisはイギリスの老舗百貨店で、王室ご用達のお店でもあります。今回の企業訪問で注目すべきはその格式ではなく、オムニチャネル化への進展でした。EC比率が日本より遥かに高いという事情もありますが、セブン&アイでさえ失敗したオムニチャネル化を見事に成功させています。利益の面では苦戦をしていますが、オムニを進めなければさらに苦しい状況になっていたでしょう。事実同業が昨年破綻しています。日本でもECの比率が今後高まることは間違いがなく、John Lewisの取組みは参考にすべき貴重な事例であり、多くの学びを得ることができました。 - Aston Martin
プレミアムブランドの更に上に位置するラグジュアリーブランドの本社ショールーム・工場を見学させて頂きました。顧客との接点全てを完璧にコントロールするマーケティングを行い、製品のみでなく工場ですらもそのブランドを表現する一部となっていることを目の当たりにし、量産ブランドとは全く異なる価値観の時間の流れの中で、「この企業は車を売っているのではなく歴史とブランドを売っている」ということを体感することができました。『For the Love of beautiful』という壮大なブランドテーマに恥じない世界観に触れることができた感動的な企業訪問となりました。
Cranfeild授業
- Lecture: Brexit and the UK
2016年6月にEU離脱の是非を問う国民投票の末、“離脱派”が僅差で勝利して約2年半。離脱時期が1ヶ月後に迫る中での講義では、英国が今後どう歩み世界と共存していくのかを国民も大いに模索しながら刻一刻と迫るその瞬間を迎えようとしている様に感じられました。離脱条件を巡り英国とEUの交渉が難航しており、英国は果たして離脱するのかという岐路に立たされた状況を体感できる正に現地でこそ受けられる緊張感のある講義であったと思います。 - Lecture: British Culture and cultural trends
英国の提携校であるクランフィールド大学で講義を受けることができました。みんなテンションが上がっており、普段の神戸大学の講義に比べて、いつもに増して前のめりで講義を受講していたように感じました。講義では、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドより成る連合王国の歴史であるイギリスの歴史を背景にそれぞれの文化とBrexit and the UKでの講義でのEU離脱の内容も重ねながら、過去、現在、そしても未来を鑑みながらの大変興味深い講義となっていました。
Kobeプレゼンテーション
- 日本の製薬業界について
“日本の製薬業界”というテーマでプレゼンを行いました。日本の医薬品市場は、世界3位の規模を有しながらも、成長率はプラトーに達しており、各社のバリエーション豊富な生き残り戦略を経営的な示唆を交えて紹介しました。 - 日本のおもてなしについて
“日本のおもてなしを高付加価値サービスとシンプルサービスという切り口でプレゼンを行いました。紹介ケースにお寿司屋さんを入れたところ、彼らも寿司に興味があった様子が反響からうかがえました。
また、日英比較クイズを日英全員参加型で行い、会場が一体となる躍動感が感じられました。正解者が不在となる一幕があり、焦りましたが神対応で更なる盛上りに繋がりフレンドシップとなったことは貴重な経験だったと思います。双方向のプレゼンは私たちも彼らも楽しいものですね” - 新幹線技術とMaaS戦略について
モビリティのコアコンピタンスである新幹線技術の紹介と、将来のモビリティのゲームチェンジであるMaaS(mobility as a service)戦略について、3人でプレゼンさせて頂きました。英語が苦手な私は、プレゼン経験が少なく、準備が大変でしたが、グローバルで活躍している素敵な仲間のおかげで、ただ、一方的に伝えるのではなく、クイズも織り交ぜた笑いある楽しいプレゼンができました。やってよかったと思える貴重な経験を積むことができました。
オックスフォード大学散策
- Oxford University
オックスフォードでは、映画ハリーポッターの世界がほぼそのままの歴史ある建物が残るキャンパスツアーに参加。ツアーガイドの詳細な説明付きでロンドンとは違う伝統や歴史、ただの旅行では見ることがない景色など感じることができました。きっとMBAの次はここに留学したくなるはず。RSTに参加しなければ分からないし、英語が出来なくても何とかなります。ともかく、来年の2月に1週間休む段取りして履修登録すべし!