神戸大学MBA

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2007年度ミニプロジェクト発表会
 

2007年8月11日(土)

プロジェクト実習は、神戸大学MBAプログラムの一大特徴を成す「プロジェクト方式」の一部です。3月末のオリエンテーションで入学生は初顔合わせをしますが、その場でチーム編成が発表され、それ以降4ヶ月間にわたって全員がチームリサーチに従事します。その間、講義科目が並行して走りますが、受け身で授業を受けるだけでは学習効果がいまひとつ上がりません。プロジェクト実習は、講義で学んだことを学生が主体的に応用し、さらに修士論文の入り口に向かって研究の難しさと醍醐味を知る機会を提供するものです。

今年度のテーマはミスカリキュレーションに据えました。すなわち、誰かがどこかで良かれと思ってやったことが予想外の失敗に終わった事例に着目し、誤算が生まれるプロセスを明らかにし、普遍性のある教訓を導きだそうという趣旨です。昨年度のリバイタリゼーションが甲乙付けがたい接近戦につながったことを踏まえて、今年度はバーを上げることにしましたが、さすがに人が語りたがらない失敗の研究は難易度が高かったようです。71名の入学生をバックグラウンドに応じて14のチームに割り振りましたが、総体的に苦戦が目立ちました。

最終報告会は、去る8月11日(土)に開きました。合計8名の教官で審査に臨み、ダントツトップの金メダルは日本イケアチームの手に渡ることになりました。二位以下は接近戦で、銀メダルはタリーズコーヒーチーム、銅メダルはインデックスチームに贈られましたが、ユニクロチームと大正製薬チームがすぐ後に控えていたことを書き添えておきます。

今年度のハイライトは、何と言っても発表会が終わったあとの宴会です。大学構内でみんなおそろいのTシャツに着替え、大挙して三宮まで繰り出して、随分と盛り上がりました。砂川教授はともかくとして、原田教授から芸を引き出すとは、幹事役も大したものでした。あそこまで行くと、もはや芸術です。今年度最大のミスカリキュレーションは、ああいう人たちをいつの間にか入学させていたところにあったような気がします(もちろん、嬉しい誤算の方です)。

あれから7週間、MBAの学生たちは5つのゼミに分かれ、今度は自ら選ぶテーマの下で個人プロジェクトを立ち上げつつある頃だと思います。論文の成否はテーマの選択で大勢が決してしまうので、そこにミニプロの経験が生きてくれればと願っています。

さて、今年度のテーマは難しかったと書きましたが、その意味について少し触れておきたいと思います。人は失敗より成功を語りたがるというのも難しさの一端ですが、それは一端に過ぎません。

本当の難しさは事象の認識に潜んでいます。昨年度のリバイタリゼーションでは、企業の業績が反転した時点を特定するのが比較的容易でした。ところが、今年度のミスカリキュレーションでは、時点を特定することがそもそも格段に難しいのです。ミスカリキュレーションの帰結が表出化した時点はすぐに特定できたとしても、その原因がどこまで過去にさかのぼるかは、そう簡単にわかるものではありません。したがって、今年度のテーマに挑むには、まずはミスカリキュレーションの5W1Hを慎重に考え抜くことが大きな出発点となったのです。

大多数のチームはここでつまずきました。ミスカリキュレーションの5W1Hを決めないことにはリサーチが進まないと思いこみ、そこを急いで固定してしまったのだと思います。金メダルを手にした日本イケアチームはそこが違いました。

日本イケアチームには、8名の審査員のうち、2名が4点をつけたほかは全員が5点を出しました。それを見て、多くの学生は首をかしげることになったのです。打ち上げの席でも、どうしてあそこまで大差が開くのかわからない、なぜあのチームが優勝なのかわからないという声を私も少なからず耳にしましたが、これぞまさに勝負あったの構図です。それだけ差異化のポイントが深いということでしょう。

全部で14チームありましたが、ミスカリキュレーションの5W1Hを真摯に考え抜き、最後まで悩みに悩み抜いたのは、日本イケアチームだけだったと言ってよいかと思います。真実はそう簡単に向こうから名乗り出てくれないことを知っているプロの研究者たちは、そこに共鳴したのだと思います。決めつければ作業は前に進むでしょうが、それで真実に近づけるかと言えば、そうではないのです。

これは、仕事の上でも同じでしょう。手っ取り早く何かを進めようとすれば、どうしても目的への接近につながらない無駄足を踏む可能性が高まります。急がば回れとはよく言ったものだと思います。

(文責:三品和広)