神戸大学MBA

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2017年度テーマプロジェクト研究最終発表会
 

2018年1月6日(土)

神戸大学のMBAのカリキュラム改革元年、テーマプロジェクトもこれまで担当されてきた松尾博文先生から引き継ぐ形で、三矢、鈴木(竜)の新しい担当のもとでのスタートとなりました。新しい担当になり、不慣れな分、学生側の戸惑いもあったかもしれませんが、例年通り、MBA学生がプロジェクトに熱い想いと時間と能力を注いでくれたことに感謝します。また、加護野先生をはじめ、シニアフェロー、そして研究科の先生方に審査員として参加していただき、担当する私自身も様々な学びのある機会でした。この点についても感謝申し上げます。各チームの研究テーマについての学びだけでなく、チームでの議論やチームビルディングのあり方についても多くの学びがあったプロジェクト研究ではなかったかと思います。

今年も、12チーム、各チーム20分の発表と10分弱の質疑応答を行い、7名の審査員(加護野・高嶋・平野光・藤原・松尾博・三品・シニアフェローの飯田氏)が評価しました。発表のタイトルと主なケース対象企業は発表順に以下のようになりました。ここにあげました研究に協力していただきました企業や関係者の皆様だけでなく、とりあげなかったものの協力してくださった企業ならびに関係者の方々、アドバイスをいただいた専門家の皆様に心より感謝申し上げます。



発表タイトルとケース対象企業・事業

  • 神戸サンバ祭り
    「脱・後ろ向き!中高年社員に対するポジティブな社外転身施策」
    大日本住友製薬、NEC、ANA

  • チームなないろ
    「変革企業にみられる組織の重さを解消する組織モデルの研究:変化する時代」を生き抜く組織とは
    ディライト株式会社、トラスコ中山、サイバーエージェント

  • ポッキーズ
    「経営人材に関する研究:外様経営者に学ぶキャリア形成」
    XEBIO、天藤製薬、元LIXIL副社長八木氏

  • チーム中小企業 金賞
    「斜陽産業において中小企業が持続的に発展するための企業連携」
    京都試作ネット、ファクトリエ、中川政七商店

  • チーム陵南
    「新規事業開発により成長する企業の研究」
    DUSKIN、Benesse、DMM.com

  • Team シルバー
    「高年齢社員活躍に向けた次なる一手:活躍できる社員と活用できる企業」
    大和ハウス工業、アクアテック、LFC

  • Team王将
    「サブカルチャーが創り出す、グローバルニッチBtoCビジネス」
    Tokyo Otaku Mode、NTTソルマーレ、pixiv

  • トルネード
    「時代の変化に対応する商品戦略」
    タミヤ模型、ホッピー株式会社、ロッテ

  • 本音でGO
    意味的価値開発を成功に導く、意思決定・評価マネジメント形態の解明
    バリュープランニング、木村石鹸、YSテック

  • チーム名湯めぐり 銀賞
    「変化する採用の最前線:優秀な研究開発者の採用方法」
    シオノギ製薬、日東電工、大日本印刷、セプテーニ、ユニリーバ

  • オーシャンズ5 銅賞
    「勝ち組中堅企業の真髄を探る:不協和戦略と自己実現の協奏」
    ヴィレッジバンガード、MACASEL社、ビーズ社、ネイチャーラボ

  • メーカーズ
    「大手国内企業における新規事業立ち上げの仕組み」
    パナソニックのGCC、ソニーのSAP EIZO、アイリスオーヤマ



金賞 チーム中小企業

今年の金賞のチームは頭2つほど飛び抜けて評価が高い発表でした。審査員含め、会場の全員がこのチームの金賞に疑問の余地なしではなかったかと思います。発表では、中小企業の連携の重要性が指摘されながらもなかなかうまくいかない現状とその理由としての水平的な連携と垂直的な連携の難しさが指摘されました。その上で、持続的な発展をもたらす企業連携をいうという問いが示されます。この問いは、高い視点でありつつ、メンバーにとって地に足がついた問いでした。そして、京都試作ネットとその代表理事である最上インクス、注染の技術を活かし様々な染め雑貨を販売しているナカニの事例から、単に連携するだけでなくその結果として自社の可能性が広がる連携こそ重要であることが示されます。それだけにとどまらず、ケースを掘り下げ、その結果示された中小企業の「ななめ」の連携とそれを支える経営者の「偏愛」が可能性を広げ連携になりうることを示しました。問い不思議さと答えの面白さ、クリアな発表と相まって文句なしの発表でした。これらの結論の導出まで、粘り強く、自分たちの考えを鍛え上げたことが伝わるものでした。審査員からも文句なしの評価でした。改めておめでとうございます。





銀賞 チーム名湯めぐり

銀賞は、接戦でしたがチーム名湯めぐりが勝ち取りました。テーマは今人材マネジメントではホットな採用の問題、特に研究開発者など優秀な人材の採用をいかにすべきかという問いをもとに発表を行いました。メンバーの一人が属しているシオノギ製薬の事例をもとに研究者の採用に関する問いを掘り下げ、AIを取り入れて採用を行っているユニリーバ、科学的な採用方法を行なっているセプテーニの事例をとりあげ、まさに最前線の採用について検討を行いました。結論としては、このような高度に専門的な人材の採用に関する意思決定はやはり専門性を理解する現場が行うこと、様々な高度な方法(AIや科学的方法)でふるいをかけることがかえって優秀な人材を取りこぼすことがあること、そしてやはり一本釣りで採用を行うことが良いのではないかということが示されました。問いの導出までの面白さと事例の新しさに比して、結論がやや平凡になってしまった点が悔やまれます。もう一歩事例からの思考が進めることができれば、あるいは審査員が指摘したようにAIや新しい採用手法によりフォーカスして新しい採用方式の可能性を考えるような方向もあったかもしれません。ただホットなテーマに果敢に挑み、興味深い発表でした。






銅賞 オーシャンズ5

銅賞は、同点でしたが決戦投票でオーシャンズ5に輝きました。中堅企業の生き残り戦略に焦点を絞り、個性的な製品で輝いている事例をもとに研究を進めました。チーム名にあるようにブルーオーシャン戦略を理論的なフレームワークに用いながら、個性的な本屋であるビレッジヴァンガード、斬新なグッズを売り出しているビーズ社、そしてシステムやアプリの開発のMACASEL、オイルシャンプーを売り出したネイチャーラボと中小・中堅規模の商品やサービスに個性を持つケースを分析していきました。発表ではどの市場に打って出るかというブルーオーシャン戦略的な発想が大事なだけではなく、その組織の人間が自由な発想で強みを生かしていくことを可能にするマネジメントがその根っこにあることを突き止めました。発表では、自身たちの仮説が裏切られて新しい仮説を見つけてくるというプロセスでストーリー立てがなされました。これが逆にわかりにくくした部分もありましたが、思い切って自分たちの仮説に固執しなかった点は概してうまくいったのではないでしょうか。事例のユニークさとあわせて面白い発表でした。




各人に提出してもらった内省レポートも拝見して、今回のテーマプロジェクトを振り返ると、それぞれのテーマに関わる深い理解と知識だけではなく、チームビルディングや研究的思考への気づきも多くあったように思います。深い思考とテーマへの深い理解にたどり着くためには、表層的な議論だけでは難しいですが、喧々諤々の粘り強い議論は時にチームのモチベーションに影響を与えてしまいます。また分業は効率のためには必要ですが、一方で分業は衆知を生かすことができなくなりますし、時に個々人の努力を無にしてしまうことがあります。これらは一度ある程度固まったものを壊すという作業に通じ、人間の心理的には非常に困難な作業です。ただこれを乗り越えて、繰り返し模索をしたチームが良い結果を得ているように思いました。

シニア人材の活用、中小、中堅企業の生き残り、大企業病からの脱出、創造的商品の創出、経営者人材の育成と今年のテーマも、時代に沿った良いテーマが出揃ったと思います。今回のテーマでの思考や気づき、内省をもとに、さらに発展して次なる修士論文につなげてもらえればと思います。

(文責 鈴木竜太)

※2017年度 金賞チームのインタビューはこちら