神戸大学MBA

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2011年度テーマプロジェクト発表会
 

2012年1月7日(土)

今年で4年目のテーマプロジェクト研究の発表会。前期の三品先生のケースプロジェクト研究でのグループでの学び、歓喜と落胆、内省、そういうものを受け継ぎ、一段高いレベルでの成果の発表会となりました。テーマプロジェクト研究では、次のことが要求されています。勝てるチームの編成、グループ内にある程度の知識の蓄積がある研究課題の設定、仮説の形成、ケース企業の選択とインタビューの実行、既存研究・理論と現実の対照、研究者の意見聴取、さらに、課題設定・仮説の見直しから始まるサイクルの繰り返し、得られた知見を20分間の発表に凝縮する作業。すべてのチームで、このグループ研究のプロセスが実行されたことが発表から確認できました。

今回は、11チーム、各チーム20分の発表と10分の質疑応答を7名の審査委員(加護野先生、来年度の演習担当の金井、高嶋、藤原、原、南先生、そして、指導教員の松尾)が評価しました。発表のタイトルとケース対象企業は発表順に以下のようになりました。

『イノベーションX:未知なる市場の開拓者たち』(東大阪宇宙開発協働組合,PD Aerospace, AXELSPACE, ウエザーニューズ)
『引き算経営』(鳥貴族、スーパーホテル,スカイマーク)
『Entrepreneurがsmall businessをbig businessに成長させるための鍵』(とうない そうざい店,ロック・フィールド,RGF, (株)あさひ,サイバード,パソナグループ)
『神戸から東北へ贈る企業再生・成長の示唆』(カワノ,大丸百貨店神戸店,神戸酒心館,新須磨病院,酔仙酒造,石渡商店,私立仙塩総合病院,公立南三陸診療所)
『モノづくりから価値づくりへ。個の創造性を活かす経営』(富士重工,任天堂,マッスル,Y Combinator)
『潰れた企業の経営者の語りに学ぶ』(千吉(株),(株)松栄堂,スポーツナビケーション(株))
『スポーツビジネス成功への光を求めて?価値創造モデルの探求?』(日本女子プロ野球機構,プロ野球関西独立機構,オリックス・バファローズ,大分トリニータ,Major League Soccer, Soccer United Marketing)
『「非同族社長』選びの真相は??同族経営と決別した中小企業の研究?』(ヤマト卓球,日本石材センター(株),(株)枡一市村酒造場)
『共通価値の創造』(インド公文,株式会社いろどり,ニッセンホールディングス)
『持続可能な社会に向かう企業経営?中小企業の挑戦?』(エコビズ,シャボン玉石けん,池内タオル)
『コミックマーケットに見る日本型ユーザー・イノベーション』(コミックマーケット,徳間書店,Ruby)

金賞は、一歩抜きんでた評価で、『神戸から東北へ贈る企業再生・成長の示唆』のチームが獲得しました。研究テーマを、被災企業が復興・躍進するための鍵となる経営者の行動とは何かとして、神戸で震災を克服した企業を調査、分析し、3つの鍵となる経営者の行動を導出しました。鍵は、トップの早期再興宣言、資金調達、災いを転じさせるビジネス変革。さらに、東北で4つの企業・病院の経営者にインタビューを実施し、各組織の再生状況の聞き取り、神戸の教訓の伝達とそれについての討議を行いました。資料・文献調査、研究者からの聞き取り、神戸の再生企業をもとにした仮説形成、東北の再生途上企業との討議を通じたある意味での仮説の補完と、立派な研究になりました。ともかく資金が必要ということ、「震災復興に関して、神戸のケースを調べてもネットで見つけられなかった。」というような被災地の声が報告され、この研究プロジェクトの意義が共有されました。責任の重いトッピックに真っ向から取り組み自分たちを追い詰める姿勢、フルタイムの仕事とMBAの他の授業の準備に加えて研究を短期間に推進・完結させる実行力、中間発表のフィードバックを受けて、最後に本気の本気を出した結果が評価されました。

銀賞は、『スポーツビジネス成功への光を求めて?価値創造モデルの探求?』のグループが授与しました。スポーツ・文化ビジネスのトッピックは過去3年間、たびたびチャレンジされましたが、なかなか成功モデルの見出しにくい難問でした。そういう意味で、スポーツビジネスの専門家が何人か所属しているこのチームをもってしても、銀賞受賞は私にとって嬉しいサプライズでした。今回も、中間発表時点では、問題解決の光というようなものは見えませんでした。この時までには、地域密着モデルのみでは経営が成り立たないというところまで仮説が来ていたのですが、それでは、何がさらに必要かというところは闇でした。土壇場に、米国のサッカーリーグ(MLS)の形態の調査、MBAの他のチームメンバーの紹介で可能となったMLSのキーパーソンへの英語でのインタビューで光明がさしました。リーグ全体の統合的な利益にこだわった経営とリーグレベルでのマーケティング組織の外部化という解が成功モデルとして提示されました。これは、地域密着を補完する有望な仮説でしょう。難しいトッピックに最後まであきらめずにくらいつき、決勝ゴールを決めたというところでしょうか。プロスポーツの本質である醍醐味のようなものが発表から感じられました。

銅賞は、『引き算経営』ということで、鳥貴族、スーパーホテル,スカイマークのケーススタディへ授与されました。「安かろう、悪かろう」でない低価格サービスの提供、コスト構造の分析、価値の再構築、従業員の動機づけ、経営者のリーダーシップと理路整然と成功モデルの分析が提示されました。メディアによく紹介されている企業ですが、このグループの発表には論理性と説得力がありました。よくできました。

受賞を逃した発表にも珠玉がありました。『潰れた企業の経営者の語りに学ぶ』は京都の老舗呉服店の千吉が会社を清算するケースを、その当事者に語らせています。会社を潰すということは経営者にとってどういうことかを考えさせられました。金井先生からは、よくこんな話を聞いてこられましたねというコメントを引き出し、加護野先生からは、会社にはいい潰し方と悪い潰し方があるというコメントをいただきました。失われた20年、グローバル金融の暴走と破綻、自然大災害、恐慌前夜のような時代に、すべての経営者は、心の整理をしておく必要があるでしょう。

もうひとつ、非常におしかったのが、『コミックマーケットに見る日本型ユーザー・イノベーション』の発表です。コミケなる私の認識と理解の範囲を超えたコミュニティを取り上げ、そこに何を見出すかが焦点となっていたと思います。中間発表時点では、コミケの世界を忠実に再現した発表で、トップの評価を得て、最終発表への期待は高いものがありました。コミケをユーザー・イノベーションの最新研究と結び付けようとしたのですが、少し無理がありました。ケースに語らすことに専念すれば、もっと違う何かがみえるのではないかという期待があります。私も含めた審査員のリアクションは、もう一年大学に残って、このトッピックをやりぬいてくださいということでしたが、もちろん、落第ということではありません。すごいポテンシャルのあるトピックでした。

他にと、まとめてしまうのは恐縮ではすが、ロボット、ロケット、サステイナビリティ、フューマニタリアン、起業、社長人事と最新の経営問題への練りぬかれた発表の連続でした。

今回の発表の教訓としては、誰のためになされて、誰のために役立つ研究かということが明確に出ている研究が評価されたことを挙げます。ケース企業として取り上げた会社に役立つフィードバックを研究結果として出すという軸を持つということが大事かもしれません。潰れた老舗の話とかコミケの研究は誰のためのどの分析単位の研究ということで焦点を絞っていくことが必要だったかもしれません。しかしながら、研究というのは難しいもので、こうでなければいけないとは言い切れなくて、有用性という青い鳥を追うと、どんどん逃げて行くということもよくあります。ともかく、研究では、焦点を定めて、愚直に、最後までやり抜くものだと思います。その意味で、今回もMBA生全員が真摯に研究に取り組んだことを指導教員としてありがたく思っています。

最後になりましたが、フィールド調査研究に協力していただきました企業・組織、経営者、従業員の皆様に厚く御礼を申し上げます。最近、神戸大学の先生に限らず、他大学の先生の貴重なご指導もいただいており、深く感謝しております。また、中間発表では、神戸大学MBAの先輩であるMBAフェローの皆様に研究方法も含めて厳しいコメントをいただきましたことに御礼を申し上げます。

(文責:松尾博文)


※2011年度 金賞チームのインタビューはこちら



銀賞チーム


銅賞チーム