芹川 至史さん

西日本旅客鉄道株式会社勤務

1 . プロフィールをお聞かせ下さい。

筑波大学大学院理工学研究科(現:システム情報工学研究科)修了後、1996年に西日本旅客鉄道株式会社へ入社しました。入社後5年半の間、土木設備(線路、橋りょう、トンネルなど)のメンテナンスを行う現場を経験した後、支社および本社施設部門の技術スタッフを経て、現在所属する新幹線管理本部では、企画部門のスタッフとして主に工事予算を担当し、2008年に神戸大学MBAに入学しました。

新幹線は、先人達の優れた設計思想や技術力、安全を確保するために考案した高度な仕組みを受け継ぐことにより、1日に約17万人のお客様に対して約300本の列車を300km/hの高速運行を可能とし、開業以来極めて高い安全性を保っています。また、新幹線は指令・運転士・車掌・駅・車両・地上設備などの様々な部門で構成し、各部門の高度な技術をすり合せるとともに、緻密な連携を行うことにより運行システムを構築しています。さらに、運行範囲は新大阪駅から博多駅までの6府県をまたがる広範囲であり、各地域の連携も必要です。企画部門スタッフとして、新幹線の運行システム全体の安全性とお客様の快適性を高めることを常に考え、業務に取り組んでおります。現在、2011年春の「山陽・九州新幹線相互直通化」に向けた様々なプロジェクトを進めており、博多駅の改良や車両基地の改修など、安全を第一に、さらにお客様に対して快適な空間を提供することを念頭に、工事施工部門と運行管理部門の調整を行い、プロジェクトを進めております。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

本社施設部門にてメンテナンスや防災対策などに関する工事予算を担当している際、本社内の経営企画・財務・安全といった経営に係わる各部門の方々と業務を行う中で会社経営についての関心が高まるとともに、社内研修プログラムにおける経営戦略やファイナンスなどMBA関連の講義を受講することにより、専門の土木技術だけでなく経営学を学ぶことの重要性を認識しました。社内研修プログラム終了後には、経営に関する様々な理論や戦略というものにさらに触れてみたい思いが残り、会社に留学制度(学費会社負担により通学可能な制度)が用意されているとともに、身近な存在として同じ施設部門に神戸大学MBAの先輩がいたこともあり、社内留学制度募集への応募を考えたことが、MBAを目指すきっかけでした。その後、MBAプログラムのHPや書籍(日経キャリアマガジン2008年度版)により、関西No.1の学生満足度の高さおよび入試倍率の高さから、魅力あるプログラムが用意され、様々な職種や年齢の志が高い多くの学生が揃っていることを確信することができました。講師陣の充実、理論と実践のバランスの良さ、勤務しながら通えるパートタイム制、プロジェクトチームによるケース研究などといった神戸大学のMBAプログラムが、非常に魅力的なものに感じられました。特に、勤務しながら通う社会人コースであるため、現在の業務課題と講義や研究を結び付けて、解決を目指すことができると考えたことが、最も大きな理由です。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

2年次を迎えたこともあり、ゼミ一本に集中する学生の方が多くなっているものの、「せっかくMBAプログラムに通っているのだから可能な限り多くの講義を受講したい」と考え、4月から5月中旬にかけての毎週土曜日(8:50から12:10)には、金井教授と髙橋教授による「組織行動応用研究」を受講し、午後には教授によるゼミへ参加しています。ゼミでは、専門職学位論文作成に向けて、先行研究レビューをはじめとして、自らの研究について内容を精査しているところです。金曜日夜の講義については、鉄道会社に勤務していることから、6月に4回開講される「公益事業経営」を受講することを考えており、その他の授業は受講しておりません。

一方、1年次は可能な限り、毎週金曜日(18:20から21:30)と土曜日(8:50から18:20)の講義を受講していました。受講する講義から、経営に関して全般的に学びたいという考えもあったため、多くの科目を受講しました。特に印象に残る選択科目として、次の5つの科目が挙げられます。本場のMBAにて活躍されていた三品教授による「ゼネラルマネジメント応用研究」と松尾教授による「オペレーションマネジメント応用研究」では、講義の内容の濃さだけでなく、良い意味での緊張感があり、自らが講義へ臨む姿勢が受身では何も得ることができないことを改めて学びました。また、金井教授による「コーチング」、小島教授による「経営戦略応用研究」、原教授・延岡教授による「テクノロジーマネジメント応用研究」、小川教授・栗木教授による「マーケティング応用研究」の講義により、自らの業務における課題に対し、解決に向けたきっかけを得ることができました。いずれの講義も教授による理論の説明・解説があり、それに対して実戦を経験した学生による発言が双方向に交わされることにより、自分自身も理解を深めることができたと感じております。

金曜日の講義が行われている期間は、1週間に3つの講義があり、課題図書・事前課題レポート・事後課題レポートなどの作成があるとともに「ケースプロジェクト研究」や「テーマプロジェクト研究」のチーム内ミーティングや資料作成、仕事・学校・家庭に対する時間配分をはじめとして、平日および休日における家庭生活のバランスの取り方も非常に難しいものがあります。仕事面における上司や同僚の理解を得ることも大切ですが、特に家族の理解が無ければ、本当にMBAプログラムに支障を来たしてしまいますので、この機会に家族の有難さについて、きっと実感できると思います。時間の確保にも苦労しますが、出張の際などに、新幹線の車内で読書やレポート作成等を進めることができ、出張が本当に貴重に感じるときがありました。

4 .ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

テクノロジーマネジメントが専門の原教授のゼミに所属しており、入学前から自らの課題や疑問として考えていました安全に関するテーマについて、取り組んでいます。その中でも、組織的な違反や不安全行動に対して、安全性を高めるための組織マネジメントや潜在的な危険に対する防護層を強化するための安全文化の構築を中心として研究を進めています。ゼミ生は、様々な分野の企業に勤務する学生と神戸大学MBAの先輩でもある博士課程の方々と、各々の研究について進捗を報告するとともに、全体でディスカッションを行う形式により進められます。自分とはテーマや分野が異なったとしても、それぞれの経験や知識をもとにして、積極的に他の人の報告へコメントを行うよう心掛けています。特に、博士課程の先輩から頂く多面的な意見およびMBA論文を完成させた経験に基づくアドバイスが、我々の研究を進める上で非常に効果的であるとともに、大変心強く感じております。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

多くの方が、最も印象に残ったものとして最初の「ケースプロジェクト研究」を挙げると思います。私も6人のチームとして、4月から8月の発表まで何度となくミーティングを重ねるとともに、静岡を拠点とする企業に対する調査を行いました。しかしながら、結果は必ずしも満足できるものではありませんでした。そのため、「テーマプロジェクト研究」では、同じ原ゼミのメンバー6人でチームを構成し、安全・品質・リスク・不祥事などを共通のテーマとして議論を重ね、「食品メーカーにおける品質不祥事の発生原因」に取り組みました。自分なりに、今度こそは入賞を目指したいと考えていました。中間報告ではMBAフェローの方々に「経営学として相応しいテーマではない」とまで指摘を受けたため、改めて6人で毎週、最終講義終了後に教室に残り、議論を続けました。その結果、テーマにインパクトがあったことからも、金賞を頂くことができました。ケースプロジェクト研究において、さらに一歩踏み出すことができなかった反省をふまえて、チーム内で年齢や職種が異なるとともに様々な分野の異なる多面性のあるメンバーがそれぞれの意見をぶつけることにより、ひとつの結論を導き出すことの大切さを学ぶことができたと同時に、チームをスムーズに導くための方策、チーム内のポジション、さらに自分の考えや発言を見直すために、非常に良い機会となりました。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

キャリアプランと呼べるほどのものを持ち合わせていませんが、自らが神戸大学で学んだ経営学に関する成果を自らの業務を通じて発揮したいと考えています。高速道路の大幅割引などの社会制度の変更をはじめとして、今後様々な要因により大きな影響を受けることが想定されます。今後、外部環境の変化に迅速に対応するため、柔軟に組織変革を行うことがより一層求められると考えていることから、経営学がわかる技術者として、変革マネジメントに携わることによって、活躍できるポジションを得たいと考えています。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

神戸大学MBAへの入学により得られたことは、様々な業種・職種・役職の方々と知り合えたことです。これ程多くの優秀な人材がMBAの学位取得を目指し、共に学び、切磋琢磨できる機会は、本当に得難いものであります。残りの学生生活も残り少なくなってきていますが、このような素晴らしい環境の中で、「働きながら学ぶ」という貴重な時間を享受したいと考えております。これからの最大の課題は、何はともあれ修士論文の作成となります。論文作成を通じて、ひとつのテーマについて、MBAプログラムを通じて学んだ確たる成果の証にしたいと思っています。