一井 奈津美さん

 三井物産人材開発株式会社(三井物産株式会社)勤務

1 .プロフィールをお聞かせ下さい。

2025年度入学の一井奈津美です。航空会社にて客室乗務員として勤務した後、金融機関の人事部門にて採用・育成・労務・企画と、人事業務のひととおりを経験しました。2020年には三井物産人材開発株式会社に入社し、中堅社員や管理職手前の社員を対象とした研修の企画・開発と講師業を担当。大学との共同研究を通じてDE&Iの推進業務にも携わりました。2025年からは三井物産株式会社へ出向し、現在はグループ全体の事業開発促進施策の企画・開発に取り組んでいます。気づけば、「人」と「組織」に向き合い続けて約10年。キャリアの形はいろいろ変わってきましたが、軸はずっとそこにあった気がします。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

きっかけは、正直に言うと「もやもや」でした。

現在、事業開発促進施策の企画・開発に携わりながら、「答えのない問い」に向き合い続けて数年。手ごたえがなかなか感じられない日々の中で、ふと気づいたことがありました。世間一般でいわれている「事業開発」と、当社グループにおける「事業開発」は、どうも様子が違う。その実態をアカデミックの知見を借りながら明らかにしたい。そのもやもやが、受験を決意した原点です。

もうひとつ、実家がファミリービジネスで中小企業を経営しています。今すぐ継ぐつもりはないけれど、将来どんな選択肢が来ても対応できるよう、経営全般を体系的に学んでおきたいという気持ちも背中を押してくれました。

本学を選んだ理由は、主に3点あります。

1点目は、プロジェクト方式(PRM)の存在です。業界も年齢も違う社会人メンバーとチームを組み、課題を分析して解決策を導くというプロセスは、多様な視点と論理的思考力を同時に鍛えられる、まさに求めていた学び方でした。

2点目は、体系的に経営を学べるカリキュラムです。グローバルスタンダードの最新文献も取り入れられており、理論と実践の両軸で学べる環境に惹かれました。

3点目は、人事・組織領域の教授陣の厚さです。受験前から仕事でお付き合いのある教授もいて、そのときにいただいた的確なアドバイスに触れ、「ここで学びたい」という確信が生まれました。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

現在はM2なので、修論以外の修了に必要な単位はすでに取得済みのため、2週間に1回のゼミに加え、興味のある科目を自分のペースで受講しています。論文執筆が最優先の時期なので、平日の隙間時間や週末をうまく使いながら研究を進めています。M1の怒涛の日々と比べると、ずいぶん人間らしい生活が戻ってきました。

とはいえ、M1のころはなかなかタフな生活で、平日は9時から18時ごろまで勤務。昼休みはレポートに必要な資料を読込、退勤後にレポートを書く。締め切りが重なったときは時間休などで早めに退勤しなんとか時間を捻出する。そんな日々でした。

土曜日は8時50分から18時30分まで授業。終わったらプロジェクトワークのグループディスカッションをして、そのままメンバーと飲みに行き終電で帰宅。

日曜日だけは聖域で、家族と愛犬との時間を最優先に、できる限り勉強には手をつけないリラックスDAYと決めていました。このメリハリがなければ、正直もたなかったと思います。

4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか? また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

所属しているのは、宮尾学教授のゼミです。

本学では、学生がゼミを自由に選べるわけではなく、研究計画書をもとに大学側が割り振る仕組みになっています。密かに「宮尾先生のゼミに行きたい」と思っていたので、いざ割り振られたときは心の中でガッツポーズをしました。

その宮尾先生への思いのきっかけは、コア科目「Technology & Management」の授業でした。イノベーターに関する講義の中で、学生からの実務的な質問に対して理論と実務を丁寧に結びつけながら答えてくださる姿に、「この先生のもとで研究したい」と感じました。

ゼミの序盤は、「良い問いの立て方」や「MBA論文として求められること」など、研究活動の土台となる考え方をしっかりインプットしていただきました。その後は各自で研究を進めながら、ゼミの場では進捗を共有し宮尾先生と同期メンバーからフィードバックをもらうスタイルです。中盤からは宮尾先生との1on1にて個人の研究にフォーカスをしていきます。宮尾先生ご自身も民間企業のご経験をお持ちで、現業の課題感を理解した上でアドバイスをくださること、そして学生の意向を尊重した進め方をしてくださることが、自分のスタイルにとても合っています。

研究テーマは「事業開発人材の育成」です。現在はインタビュー調査の真っ最中で、分析を進めるたびに「あれ、これでいいのか?」と迷いが生じ、先行研究に立ち返る、というサイクルを繰り返しています。答えが出ないもどかしさはありますが、一つひとつの発見が論文の骨格になっていく感覚もあって、苦しいながらも充実しています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

一言で言うなら、「こんなはずじゃなかった(笑)」です。ただ、この言葉には二つの意味があります。

まず、想定外の大変さという意味です。入学前から「大変だろうな」とは覚悟していましたが、実際のレポート量は想像を遥かに超えていました。多い週は1週間に3科目分のレポートを、現業をこなしながら仕上げなければならない。現業でもさすがに疲れが顔に出てしまっていたようで、上司や同僚に「大丈夫?」と声をかけていただく場面もありました。支えていただいた皆さんには、本当に感謝しかありません。プロジェクト方式のケースプロジェクト、テーマプロジェクトのグループワークも然りです。アイデアを発散するのは楽しく、いろんな業界・年齢のメンバーの視点が飛び交って、「そんな見方があるのか!」という発見の連続でした。一方、それをひとつの答えに収束させる作業がこれがまた大変。「今日こそ早く終わろうね」と言って始めたミーティングが、終わってみれば3時間経っていた、なんてことも日常茶飯事でした。

そして、もう一つの意味では、想定以上の充実さです。「やめたい」と思ったことは、正直、何度もありました。それでも結局やめなかったのは、このしんどさ自体が本学の掲げる将来のビジネス社会を担うリーダーを育てるためのプロセスだと腑に落ちていたからだと思います。自分を半分、実験台にしながら「今の自分はどこにいるんだろう」と俯瞰する感覚で乗り越えていました。さらに、入学から半年ほど経つと、同期の人となりが見えてきて、本音で話せる関係になっていきました。名だたる企業から集まったメンバーが、それぞれの個性と会社の色を持ち寄っている多様性は、毎回新鮮な刺激でした。「みんな大変なのは同じだから、頑張ろう」と励まし合えたことが、何より支えになりました。

そして気づけば、物事をすぐに結論づけようとしなくなっていました。以前は答えを急ぎがちだった自分が、「もう少し違う角度から見てみよう」と立ち止まれるようになった。これがMBAで得た、一番大きな変化かもしれません。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

まず目の前でやるべきことは明確です。「事業開発人材の育成」という現職の課題に、MBAで得た理論と視点を持ち込んで、実務に還元していくことです。論文で明らかにしようとしていることが、そのまま人材育成施策の設計に活きると確信しているので、まずはここからです。

長期的には、HRのプロフェッショナルとして、本質的にビジネス部門に寄り添える存在になりたいと思っています。人事の経験だけでも、経営の知識だけでもなく、その両方を持っているからこそできることがある。MBAはそのための大きな一歩だったと、修了後に胸を張って言えるようになりたいです。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

まずは、修士論文をやり切ること。それに尽きます。「事業開発とは何か」という大きな問いを抱えてここに飛び込んだわけですから、自分なりの答えを出して卒業したい。その気持ちはぶれていません。

それと同時に、残りの時間を同期の仲間たちと大切に過ごしたいと思っています。この1年半で築いた関係は、修了後も絶対に続くと確信しています。

最後に。MBAへの挑戦を温かく見守ってくれた職場の上司・同僚の皆様、そして愛犬とともにいつも応援してくれている家族へ、心から感謝を伝えたいと思います。ありがとうございました。

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