北尾信夫 さん
神戸大学経営学部卒業 松下電器産業株式会社先端技術研究所勤務 2002年度入学生
1. プロフィールをお聞かせ下さい。
神戸大学経営学部を卒業後、松下電器産業株式会社に入社し、システムズエンジニアとして数多くの映像音響システムの企画・設計・開発に携わった後、2001年より先端技術研究所にて基礎研究寄りのR&Dテーマの探索・評価など技術戦略の立案に関する仕事を担当しています。神戸大学のMBAには2002年4月に入学し、加登ゼミに所属させていただいて研究開発投資のオプション価値による評価について研究いたしました。
2. MBA取得によって目的は達成されましたか?
ここ数年の企業経営の変化はすさまじく、時折、なじみの薄いマネジメント上のキーワードを聞くにつけて、自分の知識が随分時代遅れになってきたことを感じ、もう一度大学で勉強してみようと決意しました。学部卒業から20年経って改めて経営学を勉強してみると、あれからほとんど変化の無いように見える領域や、飛躍的に進歩した領域など、授業のひとつひとつに驚きがありました。さすがに正門前の階段では息があがるようになったものの、気持ちだけは学部生時代と変わらない新鮮さで勉強することができました。お蔭様で、私の当初の決意どおり学習棄却も順調に進み、最新の経営学の成果を、胸を張って職場に持ち帰ることができそうです。
3. 神戸大学MBAを選択して良かったと思われますか?
それぞれの分野の第一人者の先生方から直接教わったこと、そして様々なバックグラウンドを持つ同級生のネットワークは何物にも替えがたい財産になりました。神戸大学MBAのカリキュラム上の配慮もそうですが、このような得られるものの大きさも、勉強を続けるための大きな力となりました。
4. 神戸大学MBAコースのカリキュラムの特性についてお聞かせ下さい。
企業にとって、最新の経営学の研究成果導入の成否が競争力の差に直結するようになっています。実務家が経営学の理論を正しく理解することは、理論の実務への誤った適用を避けることに役立つばかりか、実務で観察された様々な問題点を理論に立ち返って対処することを可能にします。また、修士論文執筆の過程で繰り返し問われる論理的なものの見方は、ついつい圧倒的な現実の前に流されがちな社会人にとって、立ち止まって深く考えることの大切さを改めて教えてくれます。それゆえ、神戸大学MBAの特徴である「研究に基礎を置く教育」という基本コンセプトはアカデミックな外見とは裏腹に、私にとって極めて実践的なものであったと思います。
5. 研究スタッフの特性や評価
この1年半、様々な新しいことを知るにつれて興味の対象は当初の研究計画を超えてどんどん広がっていきます。しかし、私の興味がどこへ趣いても、そこには必ず気鋭の研究者がおり、私の疑問を解決するために快くお時間を割いていただきました。このような神戸大学MBAの研究スタッフの層の厚さと、どの先生方もより良いカリキュラムを提供していこうという情熱を持っていただいていることにとても感激しました。
6. 特に印象的な授業・イベント・出来事は何ですか?
この濃密な1年半を振り返ってみると、私にとって幾つかの決定的な出会いがあったように思います。私の研究のテーマとなった「オプション理論」に出会ったのは榊原先生の「ファイナンス応用研究」の授業でした。難解な理論の分かり易い解説を聞くうちに、これこそが、そのとき私が抱えていた実務上の課題解決の決め手となるのではないかと直感し、帰ってからも興奮してなかなか眠れなかったほどでした。その後、リアルオプション理論に関して砂川先生のご指導を賜ることができ、修士論文として完成することができました。
小島先生の「経営戦略・顧客価値創造」の授業は神戸大学MBAの通過儀礼です。朝から夜遅くまで続く議論と膨大な事前・事後レポートは仕事をしながら勉強をすることの覚悟を改めて問われます。追い詰められますが、完走した後、確実に一皮むけた自分に気づくことができました。
「定性的方法論研究」も印象に残る授業でした。さながら短編小説集のように週替わりで現代の経営学をリードする先生方に、ご自分が拠って立つ方法論を解説いただきました。この授業を受けてから後は社会科学系の本の読み方が根本的に変わりました。
そして、加登ゼミで鍛えていただいたことに感謝したいと思います。論文進捗報告会での議論は毎回白熱し、報告の順番に当たった日はフラフラになりました。加登先生には、考え抜くことの大切さと自分の仕事に愛着を持つことの大事さを教えていただきました。
7. 修了されての印象、満足感をお聞かせ下さい。
まさに頭の中の入れ替え完了という感じです。神戸大学MBAに通うことに理解と協力を頂いた職場や家族のために、ここで得た知識やネットワークを活かして、より大きな仕事に挑戦していきたいと思っています。
8. 修了までの投資額や回収見込み
1年半で使ったお金は学費、定期代、書籍代で150万円程度です。投資と回収は私の研究テーマでありましたので、投資価値があったことを実証していくことは、卒業後の宿題のひとつでもあります。
9. 今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。
企業の研究所はその企業にとって将来の競争力優位の源泉を生み出す装置です。このような使命を考えたとき、研究所には自然科学系の研究者と同様に社会科学系の研究者がいてもおかしくないと思っています。そんなスタンスで「企業の研究開発」の研究(Research on research)を深め、世界に誇れる研究開発マネジメントの仕組みを構築していきたいと考えています。
10. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをおねがいします。
MBAの1年半ないし2年はとても短いので、来し方、行く末をしっかり見つめた上で自分のトータルなキャリアのパズルの一片ととらえるのが良いと思います。入学するまでも、入学してからも、とてもハードなので目の前のハードルをクリアすることだけに全力を注ぎがちになりますが、どこのMBAを選ぶか、どのようにMBAを過ごすか、パズルの形は前後のキャリアをどう考えるかで、変わってくるように思います。
在学中の皆様のご活躍と、これからMBAを受験しようと考えておられる皆様のご健闘をお祈りします。