2025年度ポスターセッション MBA生のコメント

ポスターセッションについて 平井 有里さん(所属ゼミ:上林 憲雄ゼミ)

Q1:MBA論文報告会(ポスターセッション)を終えての感想をお聞かせ下さい。

平井 有里さんと同期の皆さん

MBA卒業を前に、最後の大きなイベントを終え、本当に終わってしまうんだという寂しさを感じる一方で、久々に再会した同級生の晴れやかな姿から、この一年半がどれほど充実していたかが伝わり、心から「お疲れさまでした」と伝え合いたい気持ちでいっぱいです。ポスターセッションの会場に足を踏み入れ、この間を共に駆け抜けてきた仲間たちの集大成に触れた瞬間、深い尊敬の念と感動がこみ上げました。これはもう誰が一番ということではなく、この一年半、それぞれが自身の課題と真剣に向き合った時間そのものが、かけがえのない価値ある経験だったと断言できます。

論文執筆は孤独な作業に思えますが、会場に足を運んでくださったご家族の方々を含め、これほど多くの方に支えられてこの期間を過ごすことができたと実感しています。

M1の皆さんは、おそらく1年後の論文執筆やポスターセッションを想像して不安に感じているかもしれません。でも安心してください。1年前、私たちも全く同じ気持ちでした。とはいえ、1年後は必ずやってきます。その頃には、すでに終えたケースプロジェクトや、これから進めていくテーマプロジェクトを通じて、より一層励まし合って一緒に頑張る仲間ができています。同じ目標に向き合う仲間がいることほど心強いことはありません。どうか安心して、目の前の学びに臨んでみてください。

Q2:論文の執筆やポスターの準備にあたって難しかったのはどういった点ですか。

私がMBAの入学を決意したのは、実務で感じていたある問題を解決したいという思いからでした。それが私の論文のテーマとなったのですが、論文執筆の過程では、自分の当たり前を打ち壊すようなご意見や視点をいただき、何度も立ち止まることがありました。そのような時でも、ゼミの指導教授である上林先生が、私の迷いに忍耐強く耳を傾け、その都度、的確に導いてくださったことは大きな支えとなりました。この場を借りて感謝をお伝えしたいです。また、多様なバックグラウンドを持つ仲間との議論、そしてこれまでの実務経験は、一つとして無駄なものはなく、すべてが論文の基盤となってくれたと思います。

論文執筆で最も難しかったのは、現場で感じていた課題を学術的な問いに落とし込み、先行研究との対話を通じて論理を構築することでした。実務家として培われた固定観念は、それが日常であるゆえに柔軟性を欠きがちであることを痛感します。しかしながら、先行研究との対話こそが、自身の問題を深く掘り下げる機会を与えてくれたのだと思います。

一方で、ポスター準備では「いかに分かりやすく伝えるか」が最大の難しさでした。論文執筆において積み上げた議論を、限られた紙面とシンプルな言葉で表現するためには、大胆な要約と構造化が求められました。

私の所属するゼミは8月初旬にポスターの第一稿を仕上げるプログラムになっていましたが、これは私にとって非常に有効なステップだったと感じています。当時は、先行研究を読み進める中で拡散し続けた思考を、自身の論文へどう収束させるかに悩んでいた時期でした。そこで、ポスターという限られた一枚の媒体に「何を問い、何を答えたいのか」という原点に立ち返り、思考を凝縮させる作業が不可欠だったと感じています。この作業を通じて、研究を俯瞰し、問いと答えをシンプルに描き出せたことは、論文を完成させる上で非常に大きな意味を持ちました。私にとってポスターは単なる発表資料ではなく、「思考を研ぎ澄ますためのツール」だったのです。

そしてポスターセッション当日は、研究を「内面化し、深く掘り下げる時間」から「社会に向けて開く」という社会化の第一歩の場となりました。幅広いバックグラウンドを持つ方々にわかりやすく説明する難しさを感じながらも、質疑応答や対話を通じて、自身の研究にまだ足りない視点や、多様な考え方があることを実感しました。いただいたフィードバックや議論の体験は、これから迎える実践に向けて新たな課題と道筋を示してくれたように感じています。

こうして終えたポスターセッションは、私にとって「卒業」というゴールではなく、ここで得た知を携えて、実務で挑戦を続けるための出発点だったと感じています。

1年半の学びを通して、このポスターセッションをはじめ、神戸大学のMBAプログラムが、学術的探究と実務応用を極めて綿密に統合して設計されていることを実感し、改めて深い感銘を受けています。この学びの道のりを支え、導いてくださった全ての方々に心より感謝申し上げます。皆さんと出会い、ともに過ごしたこの時間と経験を糧に、これからまた職場の仲間と共に新たな価値創造に挑戦していきたいと思います。