2024年度ポスターセッション MBA生のコメント
ポスターセッションについて 田村 佳宏さん(所属ゼミ:忽那 憲治ゼミ)
Q1:MBA論文報告会(ポスターセッション)を終えての感想をお聞かせ下さい。
MBA最後の大イベントが終わったということもあり、この一年半を駆け抜けられたという充実感といよいよMBAの終わりが近づいているなという一抹の寂しさが入り混じった感情を抱きました。祭りの後に感じるあの感情です。MBAを長い祭りとするならば、それだけMBAという祭りに熱狂していたのだと思います(これは私だけでなく同期のメンバー全員が)。神戸大MBAにはその熱狂に相応しい価値が確かにありました。
MBA論文報告会というイベントそのものについては、MBA論文報告会がポスターセッションというスタイルになっていることが非常に面白いところだと思っています。なぜなら、これまで公聴会という形でしか論文報告会の経験がなかったからです。公聴会は一人ひとりにスポットライトが当たるという利点がありますが、発表に時間がかかる(例えば一人当たりの発表時間を20分とした場合、一時間当たりわずか3人しか発表できない)という欠点があります。そのため、限られた同期(例えば同じ研究室・ゼミの同期)の研究発表しか聞くことができなかったと記憶があります。ポスターセッションの場合、自分一人にスポットライトが当たるわけではありませんが、少ない時間でも多くの論文発表を聴くことができるので、MBA論文のように面白い研究テーマが多い場合に適したスタイルだと思います。先ほどMBAが長い祭りという話をしましたが、そもそもポスターセッションは研究発表という屋台が多く集まったお祭りのようなものなので、今後はMBA論文フェスティバルというようなイベント名にしても面白いかもしれません。
ポスターセッション後の先生方からの講評でもアドバイスを頂いた通り、ポスターセッションで自分の研究内容を余すことなく伝えたいという思いから聴衆を長時間拘束することは避けた方が良いです。色々な研究発表を聴くことができるというポスターセッションの利点をかき消すことになってしまいますので。
MBA修了を迎えて、私自身としては今後のキャリアを改めて見つめ直しています。この一年半で更に視座が高まったことが大きな要因ですが、どのようなキャリアになったとしても神大MBA修了者はやっぱり凄いと思われるように今後も精進していきたいと思っています。
Q2:論文の執筆やポスターの準備にあたって難しかったのはどういった点ですか。
論文の執筆について難しかった点は2点あります。一つは研究の幹となる理論を決定することです。先行研究で既に様々な理論が提唱されており、その中から自分の研究の幹となる理論を選ぶ(もしくはそれらと異なる理論を提唱する)ことは思っている以上に難しいです。これはジャムの法則(決定回避の法則)が働くからと考えています。その中で自分が研究で明らかにしたいことと最も親和性が高い理論を選ぶには、その理論の入力と出力が何であるかを考えること、そしてその入力と出力が自分の研究だと何に値するかを考えることが重要だと思います。私自身もこの考えに沿って研究の幹となる理論を選択しました。もう一つはインタビューデータを文字起こしする時間の確保です。インタビューをする際のインタビュー手法として半構造化インタビューを選ぶ方が多いと思いますが、半構造化インタビューでは回答内容に応じてより詳しくその心理を深堀していくインタビュー手法のため、インタビュー時間が長くなる傾向があります。インタビュー時間が長くなると文字起こしする量も比例して多くなります。インタビューデータの文字起こしについては自動文字起こしツールが数多くリリースされているのですぐに終わるものと思っていましたが、これは甘い考えでした。話し言葉は書き言葉とは大きく異なる(同じ単語を何度も繰り返したり、多くの言葉が省略されていたりする)ため、単純に文字起こしするだけでは日本語として意味が通じないことも多く、かなり整形してやる必要があります。インタビューデータを文字起こしする時間は余裕を持って確保しておくことをお薦めします。文字起こしを舐めてはいけません。
ポスターの準備について難しかった点も2点あります。一つは図表と文章の絶妙なバランスを取ることです。論文と比べて圧倒的に紙面スペースが狭い(A0サイズ)ことです。ポスターセッションではポスター以外の手持ち資料の配布や動画・音声再生などの補助ツールの使用が禁止されています。そのため、ポスターに記載された内容と口頭で研究の面白さや成果を伝えるしかありません。となると、百聞は一見に如かずの言葉通り、ポスターにできるだけ多くの図表を掲載したくなるのが人間心理というものです。しかし、そうすると重要なメッセージを載せるスペースがなくなるという問題が発生します。重要なメッセージなので、もちろん口頭でも説明するのですが、重要なメッセージだからこそポスターに記載したいという思いを無視することは簡単にはできず、そのバランス調整に苦労しました。もう一つは魅力的なポスターデザインの考案です。論文に比べ、ポスターはデザインの自由度が高いです。そのため、デザインセンスがポスターの質、ひいてはポスター発表の質を左右します。それはもう残酷なほどに。私はデザインセンスもなく、仕事が忙しくなっていたこともあり、パワーポイント資料をA3✕8枚印刷してA0サイズのポスターにしていました。その結果、やはり褒められた出来ではなく、ポスターセッションにおける大きな反省点になっています。ポスターデザインを舐めてはいけません。