論文の教室

 水田 誠一郎

以下の書籍をおすすめ図書として紹介したいと思います。

戸田山和久「最新版 論文の教室 レポートから卒論まで」NHK出版、2022年

論文や研究計画書を書く必要にせまられると、その執筆をする中でこの本を読んだことが役に立っているなあと感じます。この本から大きく分けて2つのことを学んだと思っていて、論文や研究計画書に限らず何らかの主張のある文章を書く際には、その2つを意識して書いていると感じます。

この本から学んだことの1つは、論文(およびレポート)には主張とその論証があるということです。そして論証とは、(少し大胆な定義ですが)主張の説得力を少しでもアップするような文章のことだということです。論文の場合は、小さな主張が集まって、その論文全体の大きな主張が形成されると思います。その小さな主張一つ一つに、何らかの説得力をもたせることを意識しているように思います。

例えば、「Aという方法をBという対象に適用することの有効性」を主張したいとします。ただし、これはあくまで予測です。このようなときに、「別の対象B’に対して方法Aが適用されその有効性が確認されている」ということを説明することで、元の主張に対する論拠を与えようとします。これはアナロジーと呼ばれる方法です。単に「AをBに適用することが有効だと予測される」と主張するより「XX and YY (20ZZ) はB’に対してAを適用したのに対し、我々の研究は、それをBに適用することを試みる」などと書いたほうが説得的に見えます。

著者の戸田山和久さんは、科学哲学の概念を使って、アナロジーに限らずどんな方法によって主張の説得力を少しでもアップできるのかについてもこの本の中で説明されています。こうしたことを理解すると、論文を読む際にも、著者がどのような論理を組み立てようとしているのかを俯瞰的に捉えられるようになります。

この本から学んだことの2つ目は、パラグラフ・ライティングです。1つのパラグラフでは、1つの内容について書き、複数のパラグラフをうまくつなげることで、文章全体を構築します。1つのパラグラフの冒頭は、そこで主張したいことや、そのパラグラフの内容を予期させるような「トピック・センテンス」を置きます。すると続く「サブセンテンス」では、主張に対する根拠を並べれば良かったり、内容の具体例を書くことになります。「このパラグラフは何について書くところだろう」などと意識して書くことになります。

個人的な経験かもしれないですが、「このパラグラフは何について書くところだろう」と意識することで、1つのパラグラフの中で話が散漫になるのを防げます。 また、「このパラグラフではこれを書いたから、別のパラグラフではこちらを説明しよう」というように、それぞれのパラグラフの役割を考えられるため、文章全体の構成も組み立てやすくなるように感じます。

たくさんの論文を書いているわけでもないのに、文章術のようなことを書いてしまい、想定される批評におそれおののいています。ただ、この本自体は、私がここで学んだこととして述べたこと以外にも、多くの示唆に富む内容が含まれていると思います。また、著者はユーモアに富んだ書き方をしており内容面以外でも楽しめると思います、ぜひ手にとっていただければと思います。

Copyright © 2026, 水田 誠一郎

前の記事

経営学の危機