2017年度ケースプロジェクト発表会
2017年7月29日(土)
2017年のケースプロジェクト発表会が、7月29日(土)に開催されました。本年度からケースプロジェクト研究は私、栗木と、宮尾准教授が共同で担当しています。
あの企業は、次はどこに向かうか。年次報告書に示されている計画が、正しい解とはかぎりません。そのなかで未来志向のストーリーを考え、闘わせることで、近未来の市場やビジネスの課題や可能性が見えてきます。
本年度の神戸大学MBAのケースプロジェクト。そのスタートにあたってMBA生たちに示された課題は、「セブン&アイ・グループの国内における次の一手」でした。
セブン&アイは国内小売企業の勝ち組です。しかし,次なる国内の成長事業という点ではどうでしょうか。進化を続けてきた「セブン-イレブン」。巧みなリポジショニングで、プレミアムPBをものにするとともに、中高齢者層の取り込みにも成功してきたこのコンビニ事業に次なる成長機会はあるのでしょうか。空白県も埋まり、新規出店余地もなくなりつつあります。
新たな収益の柱に育っている「セブン銀行」。しかしこの銀行は、現金引出し機能が軸の業態です。電子マネー決済が進むと存立根拠を失う危うさをはらんでいます。
鳴り物入りではじまった「オムニチャネル」の実りもはっきりしません。一方で、グループ内の従来型の百貨店、そしてGMS(総合スーパー)などのレガシーコストの重みが増しています。
この6兆円企業グループの舵取りを、CEOの目線で考える。12のグループに分かれた神戸大学MBA生たちの挑戦がはじまりました。グループの柱となる次の事業をどこに見いだし、いかに育てるか。組織としての求心力を保ちつつ、いかに経営改革を進めるか。ひとつの正解がどこかに用意されているわけではない大きな問題との格闘は、経営思考の能力を鍛えるよい機会となります。
4ヶ月のプロジェクトを経て迎えた発表会。くしくも金賞と銀賞は、セブン&アイが農業分野に多角化することを提案した2チームでした。
現在の日本では、農業は収益性の高い産業ではありません。しかし農業は、そもそもの市場規模は大きく、現在のところは大きな不効率が存在し、技術革新の活用を大きく見込める領域です。さらに日本企業の社会的責任という観点から見ても、重要な領域です。発表会では、この巨大なポテンシャルを、セブン&アイという一大流通グループのリソースを活かして引き出していく事業モデルの2つの提案が、多くの得点を集めました。そのなかで、より総合的で市場規模の大きなビジネス提案を、細部の詰めを怠らずに行ったチーム「ななめ60度」が、僅差でチーム「Q班」を振り切りました。
銅賞はチーム「牛窓」でした。在宅要介護者への食品・医薬品の配送事業を、今後の普及が見込まれる電子タグなどを活用しながら展開していくプランです。しかし、市場規模の読みに甘さがあったことが、上位2チームに得点がおよばなかった要因と私は見ています。
すでにあるビジネスの分析ではなく、まだ存在しないビジネスの提案を、経営の諸分野の専門家たちにぶつけて説得し、納得させ、惹きつけることはたいへん難しい挑戦です。今回のケースプロジェクトの審査では、上位チームであっても、最高得点を出す審査員と最低得点を出す審査員に割れるケースが続出するなど、波乱に富んだ展開となりました。可もなく不可もない提案からは、ビジネスの未来の突破口は拓かれない。身の引き締まる思いをした一日でした。
(文責:栗木契)
◆金賞チーム
※金賞チームのインタビューはこちらからご覧ください。
◇銀賞チーム
◇銅賞チーム