2025年度ケースプロジェクト発表会 金賞チームインタビュー
金賞チーム 「Mateys」
メンバー:伊藤 文、川村 凛、木村 圭吾、西迫 弘樹、森 圭一、山田 真義
(※五十音順、敬称略)
2025年8月2日(土)にケースプロジェクト発表会が開催されました。激戦の末、見事金賞に輝いたチーム「Mateys」の皆さんにインタビューを行いました。
教員レポートはこちらをご覧ください。
Q1. 準備にはどれくらいかかりましたか?
(伊藤) 私たちのチームは最後の数週間は平日も稼働しましたが、基本的に土曜日の授業終了後に学校に残って10時過ぎまで取り組んでいました。その後、チームビルディングと称して毎週のように深夜まで飲んで楽しい時を過ごしました。最後の2~3週間は平日も時折稼働してインタビューをしたり、資料構成を打ち合わせしたりしていました。
(川村) 入学してすぐから、発表の前日までの約5か月間、土曜の授業後は毎回夜22時ころまでディスカッションを重ねました。
それぞれの考えを出し、それをその場でまとめ上手なメンバーがパワーポイントに図解して、さらにそこから疑問や意見を追加していき、チームの思考を進めていくことを毎週土曜にしていました。ディスカッション最初には、その前の週に分担しておいた箇所の結果を共有し、全員でその一つ一つを理解していくこともありました。誰かが発言した中から議論が進み新たな仮説が出てくるという現象をほぼ毎週重ね、独自性のある道筋を作っていくことができたと思います。
一方で、そんな形で進めていた為、実は発表1週間程前にも、新たな仮説が生まれ、最終発表に向けて考えていたルートの変更がありました。さすがに全員焦ってはいましたが、違和感あるものは嫌だということになり、急ピッチで変更スライドを作成していきました。
当初の予定からずれることは多くありますが、メンバーを信頼して協力できれば大丈夫だと思うので、まずは予定だけにこだわらずに、考えを全員で深堀していくことが大切だと感じました。
(木村) 私たちのチームは週末土曜日に集中して取り組む「週末特化型」のグループでした。週末は毎週、講義終了後から22時半頃までグループワークを行い、その後は全員で居酒屋に駆け込んで夜遅くまでコミュニケーションをとっていました。最終報告直前以外は平日は集まりませんでした。週末という限られた時間ではありますが、結果的にかなり濃密なコミュニケーションをグループ内でとることができました。
しかし、最終報告の2週間前になってもなかなかメンバー間でストーリーを固めることができていませんでした。特に報告直前の1週間は平日毎日、Webで深夜遅くまでミーティングが続きました。直前でバタバタしましたが、コミュニケーションがしっかりとれていたからこそ、ストーリーやロジックについてメンバー間で最後まで忌憚なく話し合えた結果だと思っています。
毎週飲みに行かずにその時間をミーティングに使えば?という同級生たちからの意見もありましたが、振り返っても、毎週の居酒屋でのコミュニケーションがあったからこそ、メンバーお互いの理解を深めるとともに、直前まで深い議論ができたと思いますし、結果に繋がったと信じています。
(西迫) 4月に入学して初回の打ち合わせで、私たちはまずチームとしてのビジョンを全員で共有しました。それは「ユニークで斬新でありながら、説得力と根拠のある内容にしよう。そして、そのプロセスに夢中になってゴールした先に、結果として金賞がついてくれば最高。」というものです。
私たちのチームの特徴は平日は個々のタスクに集中し、週末に議論を一気に深める「週末集中型」のスタイルを取ったことです。多くのチームが授業後に2,3時間ほどで帰宅する中、私たちは毎週のように夜10時半過ぎまで議論を重ねました。また、議論の後にはほぼ毎回チーム全員で食事に行き、親睦を深めていました。こうした場でのコミュニケーションが、円滑なチームビルディングと強い結束力に繋がったと確信しています。もちろん、楽な道のりではありませんでした。特に直前期は発表の2週間前になっても提案のストーリーが固まらず、深夜2時過ぎまで議論が及んだこともあります。発表資料も、当日の朝まで細部の修正を重ねました。ですが、最初に全員で目指すゴールを明確に共有できていたからこそ、最後までブレずにチーム一丸となって走り抜くことができたのだと思います。
(森) 議論は、毎週土曜日5限または6限の授業後、22時過ぎまで行っていました。22時頃まで議論した後は、みんなで飲みに行くことが恒例でした。私は岡山在住で終電が21時半のため、六甲駅近くのネットカフェに泊まり、翌朝早くに帰宅していました。終電の時間を気にすると議論に集中できないため、MBA入学前から、必要があれば泊まるつもりでいました。
平日にTeamsで議論したのは、中間発表と最終発表の前のみです。平日は各自が資料調査やデータ分析を行い、土曜日に情報共有と議論を行い、次週までの各自の作業に整合性を持たせるという流れでした。インタビューは、対象者のご都合にあわせて、平日や日曜日にTeamsを使用して実施しました。
(山田) 4月のプロジェクト研究開始以降、最終報告までの約4か月間、毎週1回の定例打合せを基本にチームの活動を進めました。毎週の打合せでは、各自が収集した情報の共有やそれに基づく仮説構築、資料作成等の作業を行いました。議論が白熱し、時には3時間以上議論をすることもありましたが、終了後の懇親会で1週間の疲れを癒やすことは、何よりも楽しみでした。各自の情報収集については、自動車業界の定性及び定量的リサーチを実施しました。私は、ライブラリーリサーチを主に担当し、図書館で日産自動車に関わる書籍を借り、過去からの歴史を紐解き、事実の確認を進めました。他のメンバーが自動車業界全体の動きを財務分析や事業分析(販売台数の推移やモデルチェンジの頻度等)によって深くリサーチしてくれていたので、それらの定量データとライブラリーリサーチでの定性データをうまく組み合わせてストーリーを練り上げることに注力しました。中間報告以降は、有識者へのインタビューを複数回実施し、仮説検証に多くの時間を費やしました。通常の授業と並行して各自のリサーチを進めることと、それらを統合してストーリー練り上げることは想像以上にハードなプロセスでした。
Q2. 入学から4ヶ月を振り返って、日々のMBAの授業はいかがですか?
(伊藤) クラスメイト皆さんがとても優秀な方ばかりでたくさんの刺激を受けています。これまでの授業で、統計やサーベイリサーチはいかにも「授業」という感じでなかなかに大変でしたが、今後の論文作成につながる大切な授業だったなと改めて感じています。それ以外にも貪欲に学びたいですが、とても時間が足りないのでもう少しじっくり学びたい気持ちもあります。
(川村) 楽しくてしょうがない!というのが一番の感想です。
まず、今回のケースプロジェクトの仲間をはじめ、普段出会うことのない、業種も経験も全く異なる方々から受ける学びが沢山あります。東日本出身の私は、関西の皆さんの陽気さにもたくさん助けられています。
また授業では、知りたくて仕方なかった経営学について正面から学ぶことができています。全部を脳みそに刻み込みたいのですが、そうはいかないので、振り返りも大切かなと思います(できていないことが多いのですが)。
というのも、課題の数と重さは想像以上です。平日夜はいかに早く仕事と生活を片付けて、課題に取り掛かれるかを考えて生活しています。今後授業の振り返りの時間も設けられるくらい要領が良くなればいいなと思いながら、手探りで日々戦っています。
(木村) MBAの講義は自分のキャリアに近い領域から、ほとんど関与したことが無い領域まで、満遍なくカバーされています。即ち、既知・無知・未知・不知、4つの知全てにアクセスできる場だと思います。
また、同級生のバックグラウンドは非常に多種多様で、MBAに対する貢献意欲も高いです。積極的にお互いが学び合う姿勢は、自らの学びに対する意欲も掻き立てられます。同級生のネットワークとモチベーションが、私自身の学びの質と学びに対する意欲に大きな影響を与えてくれていると感じています。
時間的な観点では、平日の夜1-2日と週末土曜日の1日、予習・復習・課題を含めると平日も仕事以外はほとんどをMBAに費やす状態です。入学当初のころはこの生活に必死でしたが、入学後3か月が経った時期から自分のペースを掴むことができました。自分のキャパシティにも余地が生まれ、MBAの講義への理解度、勤める企業での知識の実践可能性を考える時間など一気に向上したと感じています。今はMBA講義に関連する+αの勉強にも取り組めており、非常に充実しています。
(西迫) 「大変ですが、非常に充実している」というのが率直な感想です。毎週の課題や予習、プロジェクトが並行して進むため、時間の密度は非常に濃いですが、それ以上の学びと刺激に満ちています。
特に、普段の業務では接点のない多様なバックグラウンドを持つ同期とのディスカッションは、毎回新たな発見の連続です。自分にはない視点や思考の深さに、日々圧倒されています。何より素晴らしいのは、皆さんの貢献意欲が非常に高いことです。誰かが課題に直面すると、チームの垣根を越えてLINEグループで自然と情報交換が始まり、助け合う文化があります。この意識の高さが、学びの質を格段に高めてくれていると感じています。
(森) ハードであることは覚悟していましたが、実際には想像以上でした。特に最初の1か月は、課題の量に加え、毎週土曜日は早朝に岡山を出発し、夜遅くまで議論が続く日々で、体力的にも大変でした。しかし、数か月後には次第に順応できました。
最初のコア科目はSales & Marketingで、当初は周囲の議論のレベルに気後れしていましたが、現在では慣れました。私がMBAで学ぼうと思った理由は、日常業務で抱いていた漠然とした疑問や違和感を、明確に言語化して整理したいという思いからでした。MBAの授業を通じて、これまで言語化できなかった事象を整理できるようになってきていることを実感しています。
また、入学当初は、自分にも修士論文が書けるのか不安でしたが、その不安が少しずつ解消されていく中で、このカリキュラムは非常に緻密に構成されていると感じています。
(山田) 覚悟はしていましたが、想像以上にタスクが多く、業務や家庭との両立は非常にハードです。しかし、最新の経営学を魅力的な教授陣から学ぶことができる貴重な機会は、何よりもありがたく、非常に有意義な時間と感じています。授業内容は教授によって差異がありますが、全般的にケース討議が多く、実際のビジネスシーンへの落とし込みの観点で有益であると感じています。多様な業種や職種が集まる同級生の様々な意見は、自身だけでは到底気づかない幅広い視点を与えるものであり、非常に刺激的な時間です。MBAでの学びをどのように実践に落とし込めるかをイメージしながら授業を聞き、実務に落とし込める点からすぐに実践するというような流れが学習効果を最大化すると感じており、残りのMBAライフも満喫できるよう全力で取り組んでいきたいと思います。
Q3. プロジェクトの練り上げに向けて苦労された点は何ですか?優勝の感想と併せてお答え下さい。
(伊藤) 最終的に数日前にある程度各自のパートを持ち寄って資料確認した際にやっぱロジックおかしい!!ってなってほぼ最初からやり直し!!となり、その時には、まさか金をいただけるとは全く想像できなかったです(笑)結局資料が出来上がったのは発表の日の明け方で、朝一に少し修正加えて本当にギリギリでした。他チームの発表を受けた審査の先生方のコメントを受けて、途中から「もしかしたら我々のチームは良い線行っているのでは?」という予感もしていましたが、「本当に取れちゃった!」という感じでした。最初の頃にチームのみんなで話し合った「面白くてユニーク過ぎて記録より記憶に残るチームになりたい、そして夢中のままゴールして結果的に金賞も取れた」ということを実践できたと思っています。
(川村) 金賞を頂いた時に思ったことは、全然似ていないメンバーがお互いを理解してチームワーク活かすことができれば、すごい力を発揮するんだなということでした。
一部のメンバーの意見だけに偏るでもなく、無理に平等になるようにするでもなく、ストレスフリーに建設的なディスカッションができたのは、毎週土曜に積み重ねた信頼関係によるものだと思います(ちなみに、毎週土曜のディスカッション後は、深夜までやっているお気にいりの六甲の居酒屋さんで絶対に乾杯していました。ここでチームの結束力がぎゅっと強くなっていったと思います。あとご褒美があればディスカッションも頑張れます)。
源泉を探るにあたり、通説で言われていることのその奥や、通説を違う視点からみることで、全く異なることが見えてくる体験もしました。自分たちのシナリオを描き、もっと良い考えが思いつけばそのルートに新たにつなげていく、そんな活動ができたと思います。
準備では好奇心故に、発表当日の朝まで準備が続いたこと、またタイムリミットが迫る中で、まとめ上手なメンバーばかりにタスクを重く背負わせてしまったことは、今後の反省点となりました。タスク振り分けや、調査・資料作成の際のフォーマットの共有が早い段階でできれば、一部のメンバーだけに負荷をかけなくても良くなる可能性があるので、今後チームプロジェクトを進める際には、この学びを活かしたいと思います。
総じてメンバーや、ご意見を下さった先生方、インタビューに協力してくださった方々のおかげで、良いリサーチ・ディスカッションを行うことができ、一回り成長できたと感じます。
(木村) 2つあります。
1つ目は、グループで見出した源泉をどのような説明・ストーリーにするかという点に苦労しました。私たちはインタビュー内容を整理する中で、「開発」にその源泉を見出しました。ロジック自体はしっかりしていると感じつつも、どう伝えるか、どんなストーリーで最終報告につなげるかという点で大いに悩みました。
そんな中で支えになったのが、グループ発足時に決めた「ユニークで斬新でありながら、説得力と根拠のある内容を夢中で追求する。その結果、金賞なら最高」というコンセプトでした。この「夢中に追求する」という姿勢が最後まで妥協を許さず、「時間がないから仕方なく」「ここはロジックを飛ばして…」といった妥協を排除しました。その結果、クオリティ・ロジック・ストーリーのすべてを全員で徹底的に磨き上げることができたと感じています。
2つ目は、スタンスの変化です。インタビューを重ねる中で、日産自動車に関わる方々の熱い想いや、ときには厳しい声にも触れました。その経験を通じ、「他人事」ではなく「自分事」としてケースに取り組む必要があると強く感じました。特にインタビューを断られた際には、グループ内で真剣に議論し、この意識が芽生えました。そこから私たちの姿勢は「学びのため」から「日産自動車の関係者に説明しても納得感を得られる内容にする」へと変わっていきました。たとえ納得を得られなくても、的を射ていると感じてもらえるような内容にすべきだと意識したのです。
このスタンスは、時間の制約とロジック追求との間で葛藤を生み、最後まで苦労しました。しかし、最終的に金賞をいただけたのは、この意識の変化が大きく寄与したのではないかと思います。
以上の2点はいずれも、グループメンバーと一緒に取り組んだからこそ得られた発見と経験です。特にスタンスの変化は、今後の研究活動における「芯」になったと感じています。金賞という結果以上に、大きな気づきを与えてくれたグループワークに心から感謝しています。
(西迫) 最も苦労し、同時に最後までこだわり抜いたのは、提案全体に一本の「筋」を通すことでした。危機の源泉を探る際、議論が多岐にわたり総花的になりがちですが、私たちは「開発」というテーマにフォーカスし続けることを徹底しました。インタビューで得た情報に真摯に向き合った結果、ロジック自体は何度も変化しましたが、この軸足は最後まで一貫していました。
また、私たちが特に時間をかけたのは、各自で作業分担に入る前の「メンバー全員での目線合わせ」です。個別の作業に入る前に、全員で徹底的に議論し、認識のズレをなくすプロセスに相当な時間を割きました。このおかげで、提案全体の整合性を保つことができ、各メンバーの多様な視点を最大限に活かせたのだと感じています。
優勝という評価をいただけたことは、これまでの努力が報われた思いで、素直に大変嬉しく思います。ですが何よりも、この素晴らしいチームメンバーと出会い、本気で意見をぶつけ合いながら一つのものを創り上げたこの4ヶ月間の経験こそが、最大の財産です。ご指導いただいた先生方、そして共に走り抜けてくれたチームの仲間たちに、心から感謝しています。
(森) 問い(1)「危機的状態の診断と特定」は、プロジェクト開始から2週目ほどの早い段階で決まりました。一方で、問い(2)「危機を引き起こした源泉の特定」は、最終発表直前になってようやく確定しました。この問いの特定には毎回議論が変わるほど苦労しました。
さらに、インタビュー対象者の見解が真逆である場合もあり、その分析にも苦労しました。相反する見解に対しては、チームで多角的に議論を重ね、最終的には「時間的要素」を取り入れてインタビュー結果を分析することで、論理的に説明可能な結論に到達することができました。個人的には、「賞を逃しても悔いがない」と思えるほどの成果物に仕上がったと感じています。
また、土曜の夜に議論した後の飲み会で、仕事やプライベートの話を早い段階で共有できたことで、チームとして早く打ち解けることができたと思います。特にケースプロジェクトは入学直後から始まるテーマであり、チームとしての一体感をいかに早く醸成できるかが重要です。この一体感が、金賞受賞という結果につながったのではないかと感じています。
(山田) 答えのない世界で、メンバーの納得感を醸成しながら、計画的にプロジェクトを進めていくというプロセスづくりが一番大変でした。偶然出来上がったチームが、何度も議論やオフサイトコミュニケーションを積み重ねることで、一人一人が思ったことを素直に伝え、他者の意見を丁寧に聞き、お互いの意見を尊重し、そして、高め合うような関係性にまでチームが発展できたことは、優勝の喜びをさらに爆発させる、なによりも大きな財産であると感じています。
「Mateys」の皆様、ご協力いただきありがとうございました。