2020年度ケースプロジェクト発表会

2020年8月1日(土)

2020年の神戸大学MBAケースプロジェクト研究の発表会を、8月1日に開催しました。本年はコロナ禍により大学のキャンパスの閉鎖が続いています。ケーププロジェクト研究でも、かつて経験したことのない新しいスタイルにチャレンジすることになりました。キックオフとなるオリエンテーションから、最後の発表会までのすべてを、オンラインで展開していくという、新しいプログラムへの挑戦です。

null

神戸大学MBAの30年を超える歩みを振り返ると、1989年の開学直後の10年間は、寺子屋のような小さくも熱気あふれる学びの場でした。学生と教員が一体となって、独自の教育方式を編み出していく時期でした。そしてこの時期にプロジェクト方式の原型がゼミをベースに生まれています。

この10年を経て規模の拡大を果たした神戸大学MBAは、毎年70人前後の入学者を迎えるスクールへと発展を遂げていきます。そして続く10年において、プロジェクト方式にはさらに磨きがかかります。ケースプロジェクト研究が生まれ、さらにはテーマプロジェクト研究を加えた体系的教育方法へとプロジェクト方式は発展していきます。

神戸大学MBAでは開学以来、カリキュラムの改革が、およそ5年ごとに時々の課題に応じて行われてきました。伝統と革新の流れが絶えることはありません。2020年、私たちは期せずして、新しい日常を踏まえて、近未来の先取りにつながるチャレンジを行うことになりました。null

本年度の神戸大学MBAケースプロジェクト研究のテーマは「シェアリング・ビジネスの可能性と、次なる覇者を読み解く」です。MBA生たちは12グループに別れ、シェアリング・ビジネスがもつ今後の可能性について、独自に産業を選択し、事例を踏まえての発表を、オンラインを中心とした調査活動を踏まえて行うことを求められました。

加えてコロナ禍により本年度は、授業計画の全面見直しを開講直前だった3月下旬に要請され、そこから担当教員は新たな授業計画を作成することになりました。緊急事態宣言下の4月中は、練り上げた複数の授業計画の実施案を念頭に、事態の推移の見極めに努めました。そのために例年より1ヶ月ほど期間を短縮してのプロジェクト実施となりました。

とはいえ難局に直面すると、潜在していた力を爆発させるのが神戸大学MBA生です。8月1日の発表会でも、各種のハンディを感じさせない高水準の発表が続きました。終日聴講をいただいていた特命教授の加護野忠男先生からは、「特に入賞したトップ3チームの発表は、学外への『売りもの』にできそうな極めて高度な水準」との評価をいただきました。

nullこのトップ3チームへの審査員の評価は、総合得点で1点差を争うという大接戦でした。そのなかで金賞の栄冠を得たのが、チーム「西宮プラス」です。西宮プラスは、カーシェアリングを取り上げました。国内ですでに事業化されている自家用車のシェアリング、社用車のシェアリング、そしてレンタカーのように自社所有の車を貸し出すシェアリングのそれぞれのトップ企業3社のビジネスモデルを比較し、さらにそこから広がる車両管理システム、スマートシティ、エネルギーマネジメントなどの関連産業や社会への影響を読み解こうとする発表でした。

そして僅差で銀賞となったのが「大阪秋山組」です。B to Bの物流では、配架率向上のためにITを活用したトラックのシェアリングが広がっています。今後に向けた展望が環境ビジネスなどとのつながりも踏まえて示されました。

銅賞は「チップとディール」です。空間のシェアリングに注目し、空き時間の駐車場をシェアする事業と、そこに列なる損保ビジネスの可能性が示されました。

上位の発表の共通点は総合性だったといえます。課題に織り込まれた複数の項目に対してバランスよく高い水準で掘り下げた見通しを示したグループが、上位を占めることになりました。

入賞チームと審査員

null

(文責:栗木契)