2025年度現代経営学演習担当者のご紹介
2025年度専門職大学院現代経営学演習担当者が決定しました。各担当教員から、現在関心のある研究、MBA生に期待すること、現代経営学演習の進め方について紹介いたします。
梶原武久 教授
(1) 現在関心のある研究
私の専門領域は、管理会計、コスト・マネジメント、管理システムです。経営に役立つ管理会計情報をいかに創造的に作り出し、そうした情報の活用が、組織や個人の意思決定や行動、ひいては企業全体のパフォーマンスや競争力にどのようなインパクトを及ぼすのかという点に、基本的な関心があります。最近では、グローバルサプライチェーンの持続可能性やファミリービジネスに関する研究も行っています。
- グローバルサプライチェーンの持続可能性
- 長期的に競争力を有する企業のコスト構造づくり
- 探索活動や創造性を促すマネジメント・コントロール
- 会計不正の発生メカニズム
- モジュラー型製品開発と組織間関係
- 清酒産業の伝統と革新
- ファミリービジネス
(2) MBA生に期待すること
事業環境が混迷を極める中、先例のない中で、重大な意思決定を迅速に下すことが求められています。神戸大学MBAの出身者には、こうした意思決定でイニシアチブを発揮できる経営幹部になってほしいと思っています。先例のない中で意思決定を下すためには、誰かの意見を聞くよりも、経営の基本原理・原則(そんなに変化するものではありません)を理解し、多様な視点から複眼的に考えることが求められます。MBA生には、在学期間中、「自分の頭で考え抜く」ことに、徹底的に取り組んでほしいと思います。
(3) 現代経営学演習の進め方
修士論文では、日本企業のあるべき姿とされていること、業界や自社で常識とされていること、経営学の通説とされていることなど、「常識」にチャレンジしてほしいと思っています。また、修士論文では、自身の仕事の課題にとどまらず、積極的に領空侵犯をして、より大きな課題に取り組んでほしいと思います。自分が全権を有する社長であれば、何が会社の課題であるのか、それをどのように解決できるのかということを、この機会に是非考えてほしいと思います。
論文指導の前半は、テーマ選定を行う傍ら、論文の書き方や研究の進め方について学びます。論文指導の後半は、個々のテーマに沿った論文指導を行います。毎回、担当者が研究の進捗状況を報告し、全員で討論を行います。ゼミ生同士が素朴な疑問をぶつけ合うことができるような関係になればと期待しております。
鈴木竜太 教授
(1) 現在関心のある研究
学問分野で言えば、組織行動論、キャリア論、経営管理論、経営組織論が専門になります。大きくは、経営学の人のマネジメントに関わる分野ということになります。様々な経営現象に関心を持っていますが、近年は職場や組織におけるリーダーシップの発揮やリーダーの育成、組織事故に代表される組織の失敗、人材の育成やキャリア発達、さらには幸福(ウェルビーイング)、職場のマネジメントなどに関心を持っています。
(2) MBA生に期待すること
良きコミュニティには良き学びが宿ると考えています。受け身、自分の必要なものだけ得る、という姿勢ではなく、能動的にそして知識やアイデアを皆でシェアするという姿勢で学んでほしいと思います。また、MBAは答えを教えてくれる場所ではありません。答えを見つけるあるいは考えるために必要な力をつけるところだと考えています。自分や仲間の問題意識に粘り強く取り組み、調べ抜き、考え抜くことを期待します。
(3) 現代経営学演習の進め方
論文は各個人が書いていくものではありますが、皆でアイデアをシェアし、議論をしながらそれぞれの論文が価値ある論文になるように、ゼミではゼミの仲間の論文にも関心をもって、個人戦ではなくチーム戦として臨みたいと思っています。おおよそ下記のようなスケジュールで考えています。
M1)主に問題意識から研究計画を立てることに時間を費やします。人材マネジメントに関わる諸研究や方法論を学びながら、問題意識の裏側にある本質的な問題は何かをゼミで考えていき、各メンバーが問うべき問いを見つけられるように議論をしていきます。
M2)研究計画を基に調査を行い、論文を執筆していきます。ここでは論文の完成もそうですが、より高い目線でよりインパクトのある結論へと向かうように議論をしていきます。
原田勉 教授
(1) 現在関心のある研究
研究としては、戦略、組織、イノベーションが守備範囲です。現在は認知心理学・脳神経科学的アプローチによって創造性を明らかにすることに関心をもっており、fMRIを使ったデータ解析に取り組んでいます。また、中国思想、特に老子や陽明学を経営学的に解釈することにも関心をもっています。
(2) MBA生に期待すること
新しい知の発見、創造を行うことが本プログラムの目的です。そのためには、一人の力では不十分で、ゼミ生同士の切磋琢磨が必要です。自分の研究だけでなく、他のゼミ生の研究にも関心をもって可能なかぎりアドバイスし合うことが大事だと思っています。そのためには信頼関係が大事です。場合によっては各ゼミ生の「ここだけの話」を交えることになりますし、それがゼミの醍醐味です。しかし、「ここだけの話」ができるのは、その守秘義務を果たしてもらえるという信頼関係があればこそです。こうした協調的信頼関係を築いていけることを期待しています。
(3) 現代経営学演習の進め方
毎回発表を原則とします。リサーチクエスチョン、研究の方法、仮説、分析、インプリケーションなどについて簡単に報告してもらい、それをもとにゼミ生全員で議論していくかたちをとります。
宮尾学 教授
(1) 現在関心のある研究
イノベーションの実現に向けてプロジェクトに取り組んでいる人々は、様々な壁に直面します。そもそも市場がない、技術がどのような価値を生むか明らかでない、組織内に反対者がいる、予算が足りない・・・。このような壁をどのようにして乗り越えれば良いのか?というのが私が取り組んでいる問いです。最近は、どのようにすれば失敗の可能性のある挑戦に人々を駆り立てることができるのか、どうすれば失敗から学習できるのか、といった問いにも取り組んでいます。大企業における製品開発や新規事業開発に加えて、中小企業のイノベーションや、スタートアップの活動にも関心があります。
(2) MBA生に期待すること
経営学とは「よいことを上手にする方法を探求する学問だ」と言われています。神戸大学MBAの学生には、「上手にする方法」についての知識を身につけるだけでなく、自分は社会にどのような価値を提案したいのかという「よいこと」についても考えていただきたいと思っています。多様な人材が集まるのが神戸大学MBAの良いところです。今の組織とは異なる価値観の人々と切磋琢磨し、自ら主体的に動くことでMBAでの経験を大きな学びの機会としていただきたいです。
(3) 現代経営学演習の進め方
皆さんの組織が今抱えている問題をゼミの教室に積極的に持ち込んでいただきたいです。私の組織は特殊だから、とか、できるだけ自分の組織のことは話したくない(もちろん守秘義務はありますが)というのはダメです。そのうえで、ゼミ生同士でガンガン議論していただくことを奨励します。「誰かの話を聞くときは、必ず1つ質問を考える」がゼミのモットーです。
1年次の後期は、それぞれの問題・関心を共有し、それを「調査によって答えが出せる問い」へと翻訳することを目指します。先行研究を読んでそれと自分の問題・関心との関係を整理する、といったいわゆる先行研究レビューの作業が中心となります。私からは、いろいろな研究の手法や上手で面白い研究の例を紹介したいと思っています。
2年次の前期には、実際に調査を行い問いに答えを出すことを目指します。研究の進捗状況をプレゼンし、どうすればより良い研究になるか、ゼミ生同士で議論します。私からは、理論枠組みや分析の方法、論文の構成などについてアドバイスをします。
森村文一 教授
(1) 現在関心のある研究
マーケティングの問題の中でも、企業のデータ収集・分析・事業への活用に関する能力と事業改善・創造プロセスについて研究をしています。また、従業員のデータ分析の自分事化についても研究をしています。
近年では、分析の中身を知らなくても、クリック&ドラッグなど直感的な操作のみでデータを分析・可視化することができますし、安価でこのようなサービスを利用することができます。また、データ分析に関する研修を導入している企業も増えました。それにも関わらず、多くの企業で “データを事業改善・事業創造に活かすことができていない” という声を聞きます。データを事業に活かすために、個人(従業員)-チームや部門-企業全体と異なる単位で担うべき役割や、データ収集時とデータ活用時で乗り越えるべき問題などを研究しています。
(2) MBA生に期待すること
神戸大学MBAの現代経営学演習(ゼミ)の魅力は、皆さんが抱える実務的課題を理論的に捉え、より本質的で社会的意義のある問いに落とし込んでいくことにあります。
問いを解決することは簡単ではなく、多くのインプットが必要である上に、そのインプットが必ずしも研究を進めるとは限りません。普段のお仕事とは異なる発想が必要になることもあります。そして、多くの場合で、みなさんの知識・経験だけでなく、演習に参加する全員の(さらに、他のゼミのMBA生や、調査協力者なども)異なる知識・経験が必要になります。忍耐強く、積極的に、楽しみながらゼミに参加することを期待します。
(3) 現代経営学演習の進め方
皆さんが取り組みたい研究テーマについて発表してもらい、ディスカッションを通して以下の点を段階的に達成していきます。そして、企業の中長期的な成長に関する意思決定をサポートできるような、例えば “シンプルだが意味のある問いと実務的提案” を提供する修士論文の作成を目指します。
- 解きたい実務的課題と理論を結びつけて考える
マーケティング、サービス・マーケティング、組織管理などの代表的理論を幅広く学習しながら、皆さんの課題がどの研究エリアのどの概念・理論を用いて深掘りできるかを探ります。その後、関連する先行研究を読み、修士論文で解くべき問いを探し求めます。 - 問いの精緻化
皆さんの課題は “理論的にはどう説明ができるのか” ということを考えます。次に、(理論的に考えるとこうなのだけれども) “なぜ○○○なのか?” や “どのように○○○なのか?” などのような “解かなければならない問題=問い” を立てます。 - 方法論の決定、データ分析・解釈、修士論文の作成
皆さんの問いに合わせて、定性的/定量的分析手法を選択し、調査設計を行います。必要があれば講義形式で方法論について学び、データ分析の実習も行います。そして、データを分析し、得られた結果から、企業成長のために何を提案できるかを考えます。論文の書き方も、この段階で学びます。