2024年度現代経営学演習担当者のご紹介
2024年度専門職大学院現代経営学演習担当者が決定しました。各担当教員から、現在関心のある研究、MBA生に期待すること、現代経営学演習の進め方について紹介いたします。
上林憲雄 教授
(1) 現在関心のある研究
組織と人間の関わり合いについて研究しています。領域的には、人的資本経営論、人的資源管理論、組織論などの領域です。人間、組織、社会に関してのさまざまな現象に関心を有しています。
いま最も関心を持っている事象は、「短期的な(数値)目標を達成しようとすればするほど、本質を忘れた数字合わせになってしまう本末転倒の現象」についてです。組織や社会のさまざまな局面でこうした現象は観察できます。これを回避し、短期の利益視点と長期の社会的視点をうまくバランスさせるために何をなすべきかを考え、発信しています。
2023年度からは経営学研究科内に「人的資本経営研究教育センター」を起ち上げて活動していますので、具体的な研究テーマについてはそちらをご参照ください( https://b.kobe-u.ac.jp/hcmrec/about.html )。
(2) MBA生に期待すること
1年半のMBA課程を通じ、会社とは違う発想法や視点を身につけられるようになっていただければと思っています。
(3) 現代経営学演習の進め方
まずは各自が関心を持っているテーマや問題意識を皆で共有し、議論をしながら「徐々に深めていく」ことから始めます。なぜそれが問題なのか、本当に重要な問題なのか、通常ならその問題へはどのようにアプローチされるのか、学術的にはどう捉えられてきたのか、通常とは違った視点に立つとそれはどのように捉えられるのか、等々の思考訓練で深めていきます。
なお、この演習では、上林ゼミ(大学院博士課程)を修了して大学教員を務めている先生方にも、機会がある限り参加してもらい、皆さんの発表に対し、さまざまな角度からコメントしてもらう予定です。
栗木契 教授
(1) 現在関心のある研究
幅広くマーケティングの問題に関心をもっています。マーケティングとは市場の創造と維持にかかわる企業活動です。もしあなたが個人起業家、あるいは企業の新規事業の担当者であれば、顧客、取引先、競争企業といった多岐にわたるプレイヤーとの相互作用のなかで、いかに新しい市場を切り開き、顧客との関係を維持していくか、という問題に、頭を悩ませ続けているはずです。マーケティングの課題は、新製品・サービス開発、ブランド構築、価格政策、収益モデル、販売網構築、営業プロセス管理、プロモーション戦略、顧客関係管理と多岐にわたります。近年では、市場の成熟化、競争圧力の増大、ITの発展、グローバル化の進行、情報の氾濫、経済活動のサービス化とデジタル化などによって、一段と複雑かつ高度な判断が求められるようになっています。私自身は現在は、これらの新しい潮流に注目しながら、アントレプレナー・マーケティングの領域を中心に研究を進めています。
(2) MBA生に期待すること
大学というのは、自由で主体的な学びの場所です。神戸大学MBAへの入学後は、優れた同級生、そして教員との出会いと交流の機会が広がり、多様性に富み、かつ充実した学びを得ることができると思います。そして、自らが主体的に動くことで、そこから得られる情報や体験は、さらに何倍にも膨らみます。皆さんの積極的な学びへの参加を期待します。
(3) 現代経営学演習の進め方
私の現代経営学演習では、学生個々人が、自身の所属企業のさらなる成長や収益性向上のために、マーケティングに何ができるかを見いだし、提言することに取り組みます。この提言のための研究を、ライブラリ・リサーチとフィールド・リサーチを重ねながら進めます。そこで必要となる論文や資料やデータを入手し、分析し、提言を構築していくための方法を学ぶ機会も提供します。
坂井貴行 教授
(1) 現在関心のある研究
アカデミック・アントレプレナーシップに関する研究をしています。アカデミック・アントレプレナーシップとは、大学や公的研究機関などから生まれる研究成果をもとに、新たな製品やサービスを生み出すことでイノベーションを創出しようとするものです。大学と企業の産学連携による新事業開発や、大学発スタートアップの創出も含まれます。
具体的には、大学発シーズの上市に関わる価値連鎖プロセスの研究、大学産学連携組織やTTO(Technology Transfer Office)の組織設計の研究、ファミリー企業・中小企業・大学発スタートアップの産学連携による事業創造の研究に関心があります。
(2) MBA生に期待すること
ご自身の研究課題に対して、アントレプレナーシップ(企業家精神)も持って果敢にチャレンジしてほしいと思います。また、神戸大学MBAを通して、大学や公的研究機関などの研究成果からイノベーションの創出に貢献できる人材(ゼロからイチを生み出す人材)になってもらいたいと思います。
(3) 現代経営学演習の進め方
自らの問題意識、研究関心といったモチベーションをもとに、なぜその研究に取り組みたいのか、なぜその課題に取り組む必要があるのか、という問いに向き合います。次に、その研究テーマに関する先行研究の文献をレビューして、研究テーマに関する知識を得ていきます。そこで、これまでにどのような視点から、どのような分析が行われているのか、また、どこまで明らかになり、どの点が明らかになっていないのかを検討します。さらに、データ収集や分析を通じて、解決すべき主題を明らかにしていきます。この一連のプロセスを、各人で実施しつつ、その進捗をゼミで発表し、ゼミ生全員で議論しながら、論文を仕上げていきます。
西谷公孝 教授
(1) 現在関心のある研究
企業のサステナビリティ経営を研究しています。儲かるから社会環境問題に取り組むのではなく、それに取り組んだ結果が企業にとっても望ましい形を模索しています。テーマは環境からジェンダー/ダイバーシティまで幅広く取り扱っており、主にデータを使った実証分析を行っています。
(1)サステナビリティ経営
(2)サステナビリティ報告・統合報告
(3)女性の活躍
(4)SDGs(持続可能な開発目標)
(5)創発型責任経営
(6)中小企業のサステナビリティ経営
(2) MBA生に期待すること
自社だけにとってわかって嬉しいことではなく、(自社も含めた)社会全体にとって嬉しいことを研究対象にしましょう。また、その際には「学理と実際の調和」の観点から通常業務とは違った視点に目を向け、かつMBA生同士で議論することによって、ものの見方を変える、もしくは広げることを心掛けて下さい。
(3) 現代経営学演習の進め方
各自で関心のある経営に関するテーマを設定し、その課題解決に向けた研究を行ってもらいます。なお、その際にはその研究が対象に対してどんなプラスαを貢献できるかを意識してください。演習では進捗状況をそれぞれ報告してもらい、みんなで議論し内容を精緻化していきます。指導は、論文の書き方だけでなく、意義のある提言や示唆が行える論文を書けるように進めていきます。
森直哉 教授
(1) 現在関心のある研究
コーポレートファイナンスが専門であり、これはやや古風な言い方をすると財務管理、経営財務です。この領域は学際的な性格が強く、広い意味でのファイナンス(証券投資、証券分析、バンキング等)だけでなく、会計学(財務会計、管理会計)や、会社法、金融商品取引法あたりとも隣接しています。また、使っている道具(ツール)は経済学とか、統計学とか、財務分析あたりです。
科目の性質がそうであるために、もともと関心のアンテナは広めではあるのですが、近年は特にファイナンス理論と財務分析の関係に興味を持っています。というのは、学部のゼミ教育の経験は長いのですが、ファイナンス理論の知識を活用しながら財務分析を使って企業の事例研究をおこなってきた経験上、財務分析のツールとして使い勝手の悪いところを改善できないかという問題意識を強く持つようになったからです。
ファイナンス理論の知見がビジネスの現場で十分に生かされていないという実感があるため、財務分析のツールをファイナンス向けに上手くアレンジできれば、その方面から貢献できるのではないかという考えです。
(2) MBA生に期待すること
テンプレート思考から脱却することと、ツールに使われるのではなく、ツールを使う仕事人になることです。たとえば、あまり理解を深めない概念図を見せてありきたりの議論に終始するとか、予定調和的に無難なオチに向かうだけのディスカッションであるとか、それらしい分析ツールを使って数字を見せるだけの図表であるとか、小さな文字がギッシリ詰まって、読めるはずもない速さで画面を切り替えるプレゼンとか、分析の結果は示すけれども結論を述べないなどは、いずれも典型的な残念です。ありきたりではない考えを生み出すための良い習慣、行動様式を整えることは非常に重要だと思います。
(3) 現代経営学演習の進め方
ファイナンスというよりも、財務分析(意識としては経営分析)に力点があると思ってください。おおよそ経営学がカバーする領域で、興味・関心のあるテーマを各自で持っていただいてよいと思います。つまり、狭くファイナンスに限定して考える必要はないということです。そのうえで、どのようなテーマであっても、論じたいことを裏づけるデータを入手して、財務分析のツールを用いた事例研究をおこなうのが基本線だと思います。実際、学部のゼミ教育では長年そのスタイルでやって来まして、だいぶ成功していると思います。しかし、これ以外の手法でもよいとは思うので、ご相談ください。
少人数の企画会議の雰囲気でやりたいと思っています。論文の作成それ自体は個人の作業ですが、テーマ決定や手法の検討等は、教員との1対1の関係ではなく、全員参加のディスカッションでおこないます。MBA生の場合、社会的な問題の解決というよりも、ご自身の職務上で実際に困っていることをベースにしながら、問題意識として「なぜ(why?)」や「どうやって(how?)」と思うことをテーマにしたほうがよいと思っています。早い段階で「こうではないか?」という仮説を持っておき、その考えを裏づける作業、あるいは、自分自身で叩き潰す作業をおこないます。典型的なやり方として、各種の関係者に対するインタビュー、アンケート調査等が考えられますが、それだけで済まさず、財務分析で裏づけて説得力を高めようとするところに、このゼミの特徴が出てくるだろうと思います。
1年次は、最初に現状の問題意識や関心をプレゼンしていただきます。その後、「ネタ絞り」と呼んでいますが、テーマ候補をいくつかプレゼンしていただき、全員で何が面白いかを議論します。また、教員からは詳細に財務分析のレクチャーをします。2年次は研究の進捗状況をプレゼンしていただき、全員で活発にディスカッションをおこないます。適宜、分析の手法や論文の構成についてコメントや提案をします。