2011年度加護野論文賞 最終審査結果

第四回加護野忠男論文賞選考結果について

受賞論文
講評

2011年度の加護野忠男論文賞の最終審査会、授賞式、および発表会が3月の24日に開かれました。シャープの辻晴雄相談役、東洋経済新報社の大貫英範シニアエディター、流通科学大学の石井淳蔵学長の3名に加えて、加護野忠男先生が審査結果を持ち寄ったところ、今年度は全員一致で次のように結果が決まりました。

  • 金賞:木村亘志「日本の医薬品業界における販売段階のアライアンスに関する考察」
  • 銀賞:荒木秀介「企業倫理浸透の規定因とその機能に関する一考察」
  • 銅賞:鴻巣忠司「新卒採用者と中途採用者の組織社会化の比較に関する一考察 -個人の革新行動に与える影響を中心として-」

審査会では、今年度は押し並べてレベルが高いという声が飛び交いました。3点とも独自にデータを入手して、それを統計的に解析した実証ベースの研究がベースにあり、論文としての完成度が高かったということだと思います。先行研究との関連付けにおいても、不足はなく、甲乙付けがたいところでした。それでも順位を分けるに至ったポイントは、次の3項目に要約してよいかと思います。

  1. テーマの選
    時勢を反映するテーマになっているか。職場で解決を要するテーマを選んでいるか。答えが自明ではないテーマと言えるか。この視点に立ったとき、金賞受賞作の評価は群を抜いていました。シャープの辻相談役は、企業倫理の問題をトップではなく、ミドル以下の階層で問う銀賞受賞作も高く評価されていました。
  2. データの迫力
    信頼に値する論拠があるか。この視点に立つと、やはり金賞受賞作が多面的にデータを揃えており、一段と光りました。特に流通科学大学の石井学長は、この点を重視されたようです。シャープの辻相談役は、信頼性に不安が残るアンケートデータを、インタビューで補完した銀賞受賞作も買っておられました。さらに言葉を足しておくと、データが一面的で分析手法が単調な論文は、完成度が高いように見えても、どこか説得力に欠けるところがあり、二次選考の段階で選に漏れてしまいました。
  3. トーンの清濁
    論旨が明快か。読む気になるか。この視点に立つと、相対的に評価は低くなり、なかでも東洋経済新報社の大貫シニアエディターは、銀賞受賞作のクライマックスに至るまでの叙述に改善の余地があると指摘されておりました。シャープの辻相談役は、銀賞受賞作と銅賞受賞作はもっと提言に踏み込んでほしかったと注文をつけておられました。

末筆ながら加護野先生のコメントを付記して総合講評にしたいと思います。全体として完成度は上がったが、主張の内容自体にサプライズがあるという意味で面白い論文がもっと出て来るよう期待したい。

文責:三品和広

審査委員

甲南大学特別教授 加護野忠男氏
流通科学大学長 石井淳藏氏
株式会社東洋経済新報社 出版局シニアエディター 大貫英範氏
シャープ株式会社 相談役 辻晴雄氏
神戸大学大学院経営学研究科スタッフ

 

 


受賞おめでとうございます!

2011年度第一次選考結果はこちらから、第二次選考結果はこちらからご覧ください。