eureka EXPRESS【2023年度07月03日号】

MBA教育の実際

◇2024年度専門職大学院現代経営学演習担当者のご紹介

2024年度専門職大学院現代経営学演習担当者が決定しました。各担当教員より、現在関心のある研究、MBA生に期待すること、現代経営学演習の進め方について紹介いたします。 

上林憲雄 教授

(1) 現在関心のある研究
組織と人間の関わり合いについて研究しています。領域的には、人的資本経営論、人的資源管理論、組織論などの領域です。人間、組織、社会に関してのさまざまな現象に関心を有しています。
いま最も関心を持っている事象は、「短期的な(数値)目標を達成しようとすればするほど、本質を忘れた数字合わせになってしまう本末転倒の現象」についてです。組織や社会のさまざまな局面でこうした現象は観察できます。これを回避し、短期の利益視点と長期の社会的視点をうまくバランスさせるために何をなすべきかを考え、発信しています。
2023年度からは経営学研究科内に「人的資本経営研究教育センター」を起ち上げて活動していますので、具体的な研究テーマについてはそちらをご参照ください( https://b.kobe-u.ac.jp/hcmrec/about.html )。

(2) MBA生に期待すること
1年半のMBA課程を通じ、会社とは違う発想法や視点を身につけられるようになっていただければと思っています。

(3) 現代経営学演習の進め方
まずは各自が関心を持っているテーマや問題意識を皆で共有し、議論をしながら「徐々に深めていく」ことから始めます。なぜそれが問題なのか、本当に重要な問題なのか、通常ならその問題へはどのようにアプローチされるのか、学術的にはどう捉えられてきたのか、通常とは違った視点に立つとそれはどのように捉えられるのか、等々の思考訓練で深めていきます。
なお、この演習では、上林ゼミ(大学院博士課程)を修了して大学教員を務めている先生方にも、機会がある限り参加してもらい、皆さんの発表に対し、さまざまな角度からコメントしてもらう予定です。

栗木契 教授

(1) 現在関心のある研究
幅広くマーケティングの問題に関心をもっています。マーケティングとは市場の創造と維持にかかわる企業活動です。もしあなたが個人起業家、あるいは企業の新規事業の担当者であれば、顧客、取引先、競争企業といった多岐にわたるプレイヤーとの相互作用のなかで、いかに新しい市場を切り開き、顧客との関係を維持していくか、という問題に、頭を悩ませ続けているはずです。マーケティングの課題は、新製品・サービス開発、ブランド構築、価格政策、収益モデル、販売網構築、営業プロセス管理、プロモーション戦略、顧客関係管理と多岐にわたります。近年では、市場の成熟化、競争圧力の増大、ITの発展、グローバル化の進行、情報の氾濫、経済活動のサービス化とデジタル化などによって、一段と複雑かつ高度な判断が求められるようになっています。私自身は現在は、これらの新しい潮流に注目しながら、アントレプレナー・マーケティングの領域を中心に研究を進めています。

(2) MBA生に期待すること
大学というのは、自由で主体的な学びの場所です。神戸大学MBAへの入学後は、優れた同級生、そして教員との出会いと交流の機会が広がり、多様性に富み、かつ充実した学びを得ることができると思います。そして、自らが主体的に動くことで、そこから得られる情報や体験は、さらに何倍にも膨らみます。皆さんの積極的な学びへの参加を期待します。

(3) 現代経営学演習の進め方
私の現代経営学演習では、学生個々人が、自身の所属企業のさらなる成長や収益性向上のために、マーケティングに何ができるかを見いだし、提言することに取り組みます。この提言のための研究を、ライブラリ・リサーチとフィールド・リサーチを重ねながら進めます。そこで必要となる論文や資料やデータを入手し、分析し、提言を構築していくための方法を学ぶ機会も提供します。

坂井貴行 教授

(1) 現在関心のある研究
アカデミック・アントレプレナーシップに関する研究をしています。アカデミック・アントレプレナーシップとは、大学や公的研究機関などから生まれる研究成果をもとに、新たな製品やサービスを生み出すことでイノベーションを創出しようとするものです。大学と企業の産学連携による新事業開発や、大学発スタートアップの創出も含まれます。
具体的には、大学発シーズの上市に関わる価値連鎖プロセスの研究、大学産学連携組織やTTO(Technology Transfer Office)の組織設計の研究、ファミリー企業・中小企業・大学発スタートアップの産学連携による事業創造の研究に関心があります。

(2) MBA生に期待すること
ご自身の研究課題に対して、アントレプレナーシップ(企業家精神)も持って果敢にチャレンジしてほしいと思います。また、神戸大学MBAを通して、大学や公的研究機関などの研究成果からイノベーションの創出に貢献できる人材(ゼロからイチを生み出す人材)になってもらいたいと思います。

(3) 現代経営学演習の進め方
自らの問題意識、研究関心といったモチベーションをもとに、なぜその研究に取り組みたいのか、なぜその課題に取り組む必要があるのか、という問いに向き合います。次に、その研究テーマに関する先行研究の文献をレビューして、研究テーマに関する知識を得ていきます。そこで、これまでにどのような視点から、どのような分析が行われているのか、また、どこまで明らかになり、どの点が明らかになっていないのかを検討します。さらに、データ収集や分析を通じて、解決すべき主題を明らかにしていきます。この一連のプロセスを、各人で実施しつつ、その進捗をゼミで発表し、ゼミ生全員で議論しながら、論文を仕上げていきます。

西谷公孝 教授

(1) 現在関心のある研究
企業のサステナビリティ経営を研究しています。儲かるから社会環境問題に取り組むのではなく、それに取り組んだ結果が企業にとっても望ましい形を模索しています。テーマは環境からジェンダー/ダイバーシティまで幅広く取り扱っており、主にデータを使った実証分析を行っています。

  (1)サステナビリティ経営
  (2)サステナビリティ報告・統合報告
  (3)女性の活躍
  (4)SDGs(持続可能な開発目標)
  (5)創発型責任経営
  (6)中小企業のサステナビリティ経営

(2) MBA生に期待すること
自社だけにとってわかって嬉しいことではなく、(自社も含めた)社会全体にとって嬉しいことを研究対象にしましょう。また、その際には「学理と実際の調和」の観点から通常業務とは違った視点に目を向け、かつMBA生同士で議論することによって、ものの見方を変える、もしくは広げることを心掛けて下さい。

(3) 現代経営学演習の進め方
各自で関心のある経営に関するテーマを設定し、その課題解決に向けた研究を行ってもらいます。なお、その際にはその研究が対象に対してどんなプラスαを貢献できるかを意識してください。演習では進捗状況をそれぞれ報告してもらい、みんなで議論し内容を精緻化していきます。指導は、論文の書き方だけでなく、意義のある提言や示唆が行える論文を書けるように進めていきます。

松尾貴巳 教授

(1) 現在関心のある研究

組織業績を管理する「仕組み」が、組織やその中の個人の意識やパフォーマンスにどのように影響を与えるかについて、とくに、財務的業績測定の困難な組織をいかに合理的にコントロールできるかという点に焦点を当て、次のような課題に取り組んでいます。

  • 医療組織、研究機関などの高度専門職組織の業績管理
  • 公共サービスなど、財務的な業績測定が困難な組織の業績管理
  • 企業、行政、NPOなどが連携して社会課題の解決に向けて取り組むネットワーク組織の業績管理

(2) MBA生に期待すること
MBAの授業で修得した様々な知識を活用し、人や組織を効果的に動かすための経営管理をデザインできる能力を修得してほしいと思います。

(3) 現代経営学演習の進め方
1年次後期は、研究課題の明確化と論文を書くための基礎を養います。理論、研究アプローチの学習を並行して行い、学術論文を批判的に検討できるようにします。この作業は一人で行うのではなく、皆で力を合わせて各自の研究計画をより良いものにしていきます。
2年次は研究計画にしたがって、調査・研究、論文執筆をします。途中で何度か報告を行い、論文を仕上げていきます。

前の記事

eureka No.81【2023年度04月25日号】

次の記事

eureka No.82【2023年度07月25日号】