eureka EXPRESS【2022年度09月01日号】

MBA教育の実際

◇2023年度専門職大学院現代経営学演習担当者のご紹介

eureka EXPRESS【2022年度07月01日号】でご紹介しました2023年度専門職大学院現代経営学演習担当教員が一部変更となりました。各担当教員より、現在関心のある研究、MBA生に期待すること、現代経営学演習の進め方をご紹介します。

忽那憲治 教授

(1) 現在関心のある研究
アントレプレナーシップとアントレプレナー・ファイナンスが私の主な研究対象領域です。アントレプレナーシップは企業家活動(企業家精神)と訳されることが多いですが、さまざまな側面を持っています。第1は、斬新な技術やビジネスモデルの構築によって急成長を目指すスタートアップです。第2は、オープンイノベーション他を通じて新規事業創造に取り組む既存の(大)企業です。コーポレート・アントレプレナーシップと呼ばれます。第3は、ファミリービジネスの経営者やアトツギが家業の持続的成長や事業承継のために行う活動です。ファミリー・アントレプレナーシップと呼ばれます。第4は、SDGsや社会的課題の解決を目指す社会企業家としての活動です。ソーシャル・アントレプレナーシップと呼ばれます。第5は、大学他の研究成果を元に社会実装を目指す活動です。アカデミック・アントレプレナーシップと呼ばれます。忽那ゼミでは、こうしたあらゆるアントレプレナーシップの領域を取り扱います。また、アントレプレナーシップの実践には、企業の各成長ステージの不確実性に対応できるファイナンスの設計(資金調達、投資、配分)が不可欠となります。そうした研究領域は、上場企業の既存事業のファイナンスを基本的な対象とするコーポレート・ファイナンスとは異なり、アントレプレナー・ファイナンスと呼ばれます。

(2) MBA生に期待すること
理論と実践を相互に行き来しながら、自身の掲げる研究課題に果敢にチャレンジし、アントレプレナーシップ(企業家精神)を持って何事にも取り組み、社会的・経済的な価値の創出、日本経済の活性化や地方創生のためのイノベーションの創出に貢献する人材になってもらいたいと思います。

(3) 現代経営学演習の進め方
なぜ自分はその研究課題に取り組みたいのか、という問いに向き合うことをまず重視します。その課題に自身が取り組まないことは許されないと思えるぐらいの研究課題なのかを問いかけます。次に、そのテーマは学術研究としてどのような視点からどのような分析が行われ、何が明らかになり、何が明らかになっていないかを考えてもらいます。さらに実践面や現状分析としては、データの収集や分析を通じて、解決すべき重要な課題がどこにあるのかを明らかにしてもらいます。こうした一連のプロセスは、各人による分析が基本ですが、ゼミ生全体で共有し議論しながら高いレベルの成果を目指していきます。

鈴木竜太 教授

(1) 現在関心のある研究
基本的には組織の中の人間行動や集団行動の研究をしています。具体的には下記のようなことを人間行動やリーダーシップ、キャリアといった観点から研究しています。

  • 組織における失敗の研究
  • リーダーシップの研究
  • 経営における幸福の研究
  • 職場のマネジメントに関する研究
  • 漫画から見る日本人の働き方の研究 など

(2) MBA生に期待すること
受け身、自分の必要なものだけ得る、という姿勢ではなく、能動的にそして知識やアイデアを皆でシェアするという姿勢で学んでほしいと思います。MBAは答えを教えてくれる場所ではありません。答えを見つけるあるいは考えるために必要な力をつけるところです。 自分や仲間の問題意識に粘り強く取り組むことを期待します。

(3) 現代経営学演習の進め方
論文は各個人が書いていくものではありますが、皆でアイデアをシェアし、議論をしながらそれぞれの論文が価値ある論文になるように、ゼミではゼミの仲間の論文にも関心をもって、個人戦ではなくチーム戦として臨みたいと思っています。おおよそ下記のようなスケジュールで考えています。

M1)主に問題意識から研究計画を立てることに時間を費やします。人材マネジメントに関わる諸研究や方法論を学びながら、問題意識の裏側にある本質的な問題は何かをゼミで考えていき、各メンバーが問うべき問いを見つけられるように議論をしていきます。

M2)研究計画を基に調査を行い、論文を執筆していきます。ここでは論文の完成もそうですが、より高い目線でよりインパクトのある結論へと向かうように議論をしていきます。

松嶋登 教授

(1) 現在関心のある研究
経営学の最新理論に関心を持って研究しております。特にアクターネットワーク理論、制度派組織論、最近では物質性概念や価値評価研究に関心を持っています。日本のビジネス書としてはあまり紹介されてこなかった、聞きなれない理論や研究かもしれません。しかし、じつはどれも海外のビジネススクールでは教えられている最新理論でもあり、こうした理論に触れることもMBAの醍醐味のひとつだと思います。また、最新理論ばかりではなく、古典から連なる経営学の体系をまとめなおすことにも取り組んでいます。関心がある方は、一般大学院の講義「経営管理特論」を受講してください。
ゼミ生が取り組むテーマは果てしなく広く、また挑戦的です。例えば、業務のデジタイゼーションや個別組織でのデジタライゼーションが、企業全体としてのデジタルトランスフォーメーションを阻害するパラドクスを指摘する研究。潜在的に多くの人々が抱える発達障害を企業の活力として活かすマネジメントを探求する研究。企業を超えて地域社会を担う子どもたちを御旗として新自由主義的な経済社会に対抗する共同組織を構築しようとする研究。流行りのインクルージョン理念の押し付けが、時に人々のインクルージョン認識を損ねている現実に向き合いながら、多様な価値観や働き方を包摂したマネジメントの難しさに対峙しようとする研究。少子化に立ち向かう塾業界の生き残りを、単に企業の売上や子どもたちの進学・合格率などの既存の価値評価尺度で考えるのではなく、グローバル化が進む中での日本人教育としてどのような教育制度が求められているのかという壮大な問いと格闘する研究。テーマは様々ですが、共通して未来の日本を作り出そうとするパッションに溢れています。

(2) MBA生に期待すること
企業人として活躍し、グローバルな競争を生き抜くための知力を高めようとすることは、MBAを志す際の立派な動機だと思います。ですが、MBAがその実利に期する教育だけを提供するのでは十分ではないとも思います。世界の経営学の動向を見渡してみれば、グローバリズムによる経済化とともに貧困化がもたらされ、経済活動の土台を破壊する自然環境問題が起き、こうした問題を引き起こした西欧中心的な社会制度を見直す新たな方法論の開拓が求められています。いずれもこれまで日本の経営学が、真剣に取り組んでこなかった視点です。現代社会において強力な力を持つ企業経営に携わることになる皆さんには、普段とは異なった広い視点から物事を考えていただければと思います。

(3) 現代経営学演習の進め方
皆さんが経営の現場で抱えている問題を研究テーマとして、普段の思考を超えた視点から分析していきます。そのためにまず必要となる手段が、先行研究にあたることです。つまり、自分の問題関心にぴったりあった先行研究を探すのではなく、様々な視点を提供してくれる先行研究を(ときに批判的に)探しながら自分の問いを深めていきます。MBAの皆さんには、一般の学術研究でなされるような包括的なレビューは求めませんが、普段の思考を超えた視点を提供してくれるコア論文を探し出してもらいたいと思います。経験的データの分析対象や方法も、決まったものがあるわけではありません。皆さんの研究テーマに沿って、それぞれが最もふさわしい分析方法を選択していきます。分析方法論に関心がある方は、一般大学院の講義「定性的方法論研究」を受講してください。

南知惠子 教授

(1) 現在関心のある研究
この10年間は、BtoBマーケティングとサービス分野を中心に研究をすすめてきました。現在関心のある研究テーマは、1)DX環境下での製造業のサービス化戦略、2)気候変動に対する小売企業の組織行動についてです。BtoBマーケティング分野は、企業顧客をターゲットとする業界に特有の市場戦略に焦点を当てるものですが、とくに企業が自社技術をどのように市場に適用するのか、また市場創造を行うのかという点に関心を持っています。BtoBマーケティング研究の一つのテーマとして、製造業がサービスを統合する際の戦略や、企業間関係の変化に関心を持ってきましたが、最近ではDXの文脈で事例や実証研究を行ってきています。
小売企業に関する研究は国内外の共同研究者とともに長年研究を重ねてきています。チェーン展開している企業の場合、本部と店舗との組織を持ち、市場に対する変動をどう組織的に対応していくかという普遍的な課題があり、意思決定や組織的な調整問題として取り組んでいます。気候変動に対する対応は喫緊の課題と考えています。

(2) MBA生に期待すること
せっかく大学院というところで学ぶ機会を得たからには、勤務先や業界における発想や行動規範にとらわれず、ビジネスや仕事における関心事について一旦俯瞰し、学術研究の理論的な枠組みを用いて、発想の転換や思考の広がりを持てるようになって頂きたいと希望しています。また他業界や他社の方々と様々なプロジェクトに取り組むことにより、多様な人との協働作業を楽しんで頂きたいと思います。

(3) 現代経営学演習の進め方
各自の問題意識をいかに経営学やマーケティングの理論的課題として設定できるかについて受講生に取り組んでもらいます。論文や資料の探し方および定量的・定性的な研究アプローチ法について指導します。各自でインタビューやアンケート手法等でデータ収集を行うことになりますが、分析手法も指導します。最終ラウンドでは論文の書き方について指導をします。基本的にはゼミで集まり発表形式で進め、論文執筆時には個別指導も行います。

三矢裕 教授

(1) 現在関心のある研究

  • 両利き経営のためのマネジメントコントロール
  • パンデミックや震災などクライシス時のマネジメントコントロール
  • アメーバ経営
  • 企業再生
  • 業績測定における財務・非財務情報の役割
  • インタンジブルズマネジメント
  • 伝統産業
  • アクションリサーチ

(2) MBA生に期待すること
せっかくなので、世の中を少しでも良くできるような大義ある研究をしましょう。納得できる「作品」を残すつもりで全力で走りきって下さい。しんどいことを楽しく。

(3) 現代経営学演習の進め方
各自の関心でテーマを選んでもらいます(必ずしも管理会計をテーマにする必要はありません)。自らの仕事の中で重要な課題や、多くの企業でまだ解が得られていないような問題など、現実のビジネスにインパクトのあるテーマを選んでください。定性的・定量的を問わず、テーマにフィットしたアプローチで実証的な研究を行なってもらいます。「建白書」の形式ではなく、あくまで「論文」形式ですが、含意パートでは自社への提言、社会問題の解決への示唆など、実務的なインプリケーションについて必ず記述してもらいます。