石垣正憲 さん
ソニー株式会社勤務 2007年度入学生 金井ゼミ
「行き当たりバッチリ」が生んだ合格
私は、金井壽宏先生のゼミで15人の社会人MBAの仲間と一緒に、厳しい中でも楽しく学んでいます。東京から神戸までほぼ毎週通い(それも自費で)、金井先生のゼミで勉強することになるとは、1年前には想像もつきませんでした。仕事に対する思いと、いくつかのシンクロニシティと呼ばれる必然性を内在した偶然(私は、これを「行き当たりバッチリ」と呼んでいます。)によって、今ここにいます。偶然による人や機会との出会いが「行き当たり」であり、それは実は意識的・無意識的な活動や努力の積み重ねからちょうど良いタイミングで出現することを「バッチリ」と考えています。
神戸で学ぶ目的
神戸大学のMBAプログラムを受けようとする動機は、いろいろあると思います。会社内でのポジションや収入のアップ、または転職のため、ステータスとして、資格としてなどがあるでしょう。また、会社や仕事で問題を感じ、それをブレークスルーしようとしてこられている方も少なくないと思います。
私の場合は、自分のやりたい仕事をやるための手段として神戸大学のMBAを選びました。何故、東京にあるMBAではなくて神戸だったのか、自分でも良く分からないところもあります。ただ、新しい環境の中で何かに挑戦してみることで、次のステップが見つかるような気がしていました。
仕事への問題意識
幸運にも会社では、自分のやりたい仕事をそれなりに(会社の一定の制約の中で)選んですることができていました。しかしながら、その中でもずっと持ち続けていた2つのテーマがあったのです。ひとつは、「新しいアイディアやコンセプトを世の中に提供するビジネスをしたい」で、もうひとつは、「会社や組織で一緒に働く人々がハッピーになるようなサポートがしたい」でした。
考えるのは簡単ですが、2つとも実際に会社の中で実現するのは結構大変なテーマです。これらを具現化するため、出来るだけ成功する確率の高い打ち手を見つけ出すための思考の整理と、多くの人を説得して動かす他人への働きかけが、出来るようになりたいと思っていました。
金井先生との出会い
思いはあるが実行はできず、日々の仕事に追われながら会社で働いていたのですが、たまたま2006年の1月に金井先生の講演を東京で聞く機会にめぐり合いました。
金井先生は、モチベーションやリーダーシップについてなど、興味深い分野でいろいろと本を出版されているので、どんな話をされるか期待して講演会に参加することにしました。それまでも、そして今も、私はビジネス書などの著者の講演会に参加して、本に書かれていることを話し言葉で確かめることを随分やっています。著者によっては、本と講演で印象がずいぶん違ったりすることがあります。
実際に金井先生の話を聞いてみると、知識とアイディアが豊富で、おもちゃ箱をひっくり返したみたいな楽しさがあり、良い意味で期待と違いました。講演のプレゼンテーションのスライドには、仕事と経営に関する人や学説の情報がびっしりと詰め込まれ、それが単なる情報としてではなく、実践するためのテーマとして問いかけられました。
話を聞いていて一つ残念だったのは、中身が濃すぎて講演会の短い時間では消化することが出来なかったことです。神戸大学のMBAでは、金井先生の話がいっぱい聞けるのだろうなと考えながら、その時は東京から神戸へ通うことは思ってもみませんでした。
出願と研究計画の作成
ところがしばらくして、11月に東京丸の内の講演会で、また金井先生の話を聞く機会がありました。やっぱり面白いな、もっと話を聞きたいなと思い、講演を聞いた夜にグーグルで神戸大学MBAのWebページを検索してみました。
神戸大学の経営学研究科ホームページには、講義の様子や所属する先生の研究テーマの紹介があり、経営学の様々な研究が行われていることを知りました。私の学びたかった組織と個人についての魅力的な研究が行われているだけではなく、製造業をテーマとした研究が行われていて、自分の仕事に活かせる学びがありそうだと思いました。MBAの出願期間を確認すると、締め切りに何とか間に合いそうだったので、大急ぎで願書を取り寄せるとともに、研究計画の作成に取り掛かりました。
短い期間にもかかわらず計画書がそれなりに書けたのは、常日頃から自分の身近なところで仕事への問題意識を持っていたおかげだと思っています。
1次試験の英語と小論文
そして1次試験ですが、英語については、過去の出題問題を神戸大学生協から取り寄せ、何度も読みました。以前から翻訳本について簡単なものであれば原書で読めるようになりたいと思い、子供向けの本などの平易な英文を多読するトレーニングをしていました。それが、ベースになる英語力になったと思っています。
小論文については、自分の考えを「べき論」や「ねば論」ではなく、自分なりの根拠により説得力を持って説明できることを目指しました。
どう勉強しようか迷っていると、ロースクールで勉強している知人からアドバイスを受けました。ロースクールの入学試験で出題される小論文では、論理を積み上げ、主張を展開することが重要であり、受験参考書の解答例を学習すればMBAプログラムの受験で参考になるのではと教えてもらい、なるほどと思いました。
2次試験の面接
2次試験の面接は、自分の研究テーマに関して、一定の時間で的確に面接官に説明できることを考えました。自分の問題意識と、その問題について考えた研究のアプローチについて、事前に要点をまとめてのぞみました。ある程度、ロジカルに受け答えを出来ることが必要だと思いますが、大事なことは自分の思いを伝えることのような気がします。
おわりに
気がつくと、遠距離通学する大変さも、費用面の事も考えずに、勢いで神戸で勉強することになりました。思っていた以上にMBAでの勉強はハードで、あまりのレポートの多さに、最近は(入学して7ヶ月ですが)少しくたびれています。
しかしながら、いくつかのシンクロニシティと努力を経て「行き当たりバッチリ」で、神戸大学で学ぶ機会が得られたことに、とても感謝しています。これから修士論文を書くことになりますが、また新たな学びと気づきがあると期待しています。
私的おススメの本
MBAを受けるために読む本としては、次の3つの観点を持って選びました。
- MBAで学ぶにあたっては、仕事に対する問題意識を持つことが大事である。
- 仕事への問題意識は、一般論としてではなく、自分なりに深く考えたものである。
- 問題意識については、我流のアプローチではなく最低限のロジックの組立てがあり、客観性がある。
良い本はたくさんありますが、私が神戸大学MBAプログラムを受けようと思うまでに読んできたなかでのおススメは、次のとおりです。
仕事に対する問題意識を持つきっかけとして
- キャメルヤマモト『稼ぐ人、安い人、余る人』幻冬舎,2001年。
この本を読んで、今までの仕事のやり方で本当に良いか疑問を持ちました。 - 松山真之助『仕事と人生に効く100冊の本』秀和システム,2005年。
良書にめぐり合うことが、学びのテーマを決めるためにとても重要だと思います。
何故学ぶか、自分に問いかけるために
- 田坂広志『仕事の報酬とは何か』PHP研究所,2003年。
働くこと、仕事をすることを、哲学的に深く掘り下げています。
学びの基礎となる、思考力をつけるために
- 津田久資『ロジカル問題解決』PHP研究所,2003年。
ロジカルであるとはどんなことか、学びました。 - 高田貴久『ロジカルプレゼンテーション』栄治出版,2004年。
ロジカルに考えたことを人に伝えるには、どうすれば良いか知ることができます。
自分なりの視点を見出す、発想力をつけるために
- 松林博文『クリエイティブ・シンキング』ダイヤモンド社,2003年。
新しいアイディアを思いついたり、整理するためのツールやフレームワークが、たくさん紹介されています。
英文の背景にある、基本的な思考方式を理解するために
- 本間正人『英語で鍛えるロジカルシンキング』日経BP出版センター,2002年。
手軽なボリュームで、日本語と英語の発想の違いが、例題により分かります。
その他、経営学でどんなことを学ぶか知っておくために
- 『ハーバードビジネスレビュー』や『一橋ビジネスレビュー』の興味を持たれた特集。
このホームページの中の「研究スタッフ著書のご案内」から、自分の興味がある分野の先生の本を何冊か。