2014年度加護野論文賞 第一次選考結果

加護野忠男論文賞とは、神戸大学MBAの社会人専門職大学院生が作成した論文のうち、優秀作品を表彰する賞です。神戸大学MBAコースの創立メンバーの中心人物の一人として、「プロジェクト方式」(Project Research Method)、「働きながら学ぶ」(By the Job Learning)と「研究に基礎をおく教育」(Research-based Education)を特色とする「神戸方式」の日本型MBA教育を構築し、推進されてきた加護野忠男教授(神戸大学名誉教授・甲南大学教授)の多大なる貢献に敬意を表し、そのお名前を冠した賞です。

MBA教育について先行した欧米諸国のプログラムが、20代半ばのMBA生をターゲットとし、経営学の知識やスキル向上をめざした教育内容を持つのに対して、神戸大学MBAコースに入学されているのは、平均年齢30歳代後半という管理職または管理職候補の社会人MBA生です。産業界や企業の中核的人材が持つべき事業観、人間観、洞察力、行動力や企業家精神を自発的に学習できるために、編み出されたのは「プロジェクト方式」による教育方法です。神戸大学MBAコースでは、受講生自らが身近な問題を論理的に深く考えて自ら理論を構築し、自らの思考で問題の解決策を導き、その妥当性をデータと論理で説得する能力を養成することを教育目標のひとつとして掲げています。この目標を達成するために、MBA生には体系的な専門知識を習得するための講義とプロジェクト研究を履修すると同時に、修士論文の執筆を課しています。神戸大学MBAコースにおいて、修士論文の作成は仕事を通じて抱いた問題意識を深く考え、自ら課題解決をはかっていくというプロセスを経験させる訓練となっています。

加護野忠男論文賞は、神戸大学MBAの教育プログラムの中で重要な位置づけを占める修士論文に対して、MBA生が意欲的に論文の執筆に取り組むよう動機づけると同時に、どのような論文が高い評価を得るのか、実例をもって明示するという役割を担っています。

選考プロセスは、3段階に分かれています。まず、「現代経営学演習」というゼミで指導してきた5名の指導教授の推薦でひとつのゼミからそれぞれ2本が選ばれ、70本近い提出論文から、10本の論文が審査対象へと絞りこまれることになります。第2次選考では、選ばれた10本の論文について、学内選考委員により上位3本が選出されます。この選考委員会は、次年度のゼミ担当教授5名とMBA教務委員とで構成されます。最終選考では、2次選考委員会で推薦された3本の論文に対して、学外の研究者、経済界や出版会から選出された学外審査委員と加護野教授が審査の上、上位3本の論文の順位づけを決定します。受賞の対象となる論文は、さまざまな専門性を有する研究者と外部審査委員によって、論文の問題意識の鋭さ、論理的な緻密さ、手続き的な信頼性、そして、産業界や社会に対する貢献やインパクトなどの面から評価し、審査され、選考されることになります。

2014年度第一次選考通過論文

 各ゼミ担当教授は以下の優れた論文を推薦しました(敬称略・順不同)。

小川 進  
稲川 直樹 ソフトウェア・ビジネスにおける戦術に関する研究
友沢 拓史 地球規模のサプライチェーンについての研究
原田 勉  
麻生 博也 日本のバイオベンチャー企業は、創薬・新規治療開発の担い手となりうるか:成功に必要な条件と経営者プロファイルに関する研究
釜平 双美 専門職組織におけるロイヤリティと個人の業績
平野 光俊  
上羽 健介 営業職のリーダーシップ持論の世代間継承に関する一考察-不動産企業A社における事例分析を通じて-
橋本 裕 製薬企業のオープンイノベーションのマネジメントに関する一考察-共同研究プロジェクトに影響する要因について-
砂川 伸幸  
佐々木 良瑞 生命保険会社の企業向け貸付の研究-実態分析と今後の戦略-
中田 祐司 IR活動におけるNo.2戦略-業界2番手による長期保有株主獲得を目指す効率的なIR戦略と実践-
三矢 裕  
柴田 曜 新規事業におけるリアル・オプションの活用方法の提案投資の事後評価と戦略策定における簡易的利用について あるIT企業の導入事例に基づいて
福徳 孝太 新興国ボリュームゾーン市場戦略に関する研究-日本企業が抱えるジレンマに着目して-

 

第一次入賞論文に関する論評は控えますが、全体的な特徴として、社会人MBA生こそ持っている問題意識、そして、企業の現場にいなければアクセスできないような貴重なデータに基づいた分厚いケース記述、統計的手法によるさまざまな分析、そして、既存の先行研究に縛られない社会人MBA生の独自の視点による議論が多く見られることがあげられます。

これらの入賞論文は、神戸大学MBAコースの「プロジェクト方式」による一年半の過酷ともいえる集中的なトレーニングを経て、社会人MBA生の各自が日頃の仕事の中で直面している問題を突き詰めて思考し、論証して完成できた代表的な研究成果です。

文責:2014年度MBA教務委員 黄 磷

>>2014年度第二次選考結果はこちらからご覧ください。