高木崇 さん

外資系金融機関勤務 2011年度入学生 黄ゼミ

1.MBA受験のきっかけ

6年程前からマネージャーとして組織を束ねる業務に携わる機会が増えました。それまでとは異なった、組織をある程度上から見る立場に、最初はそのギャップに悩みました。組織全体の人的、物的等の内部資源と外部的な資源をどのように用いればパフォーマンスが上がるのか。たとえ優れた経営戦略を立てても、その内容が伝わらなければ組織全体のパフォーマンスは上がらない。これらの問題をどうやって解決すればいいかを日々考えていましたが、とても自分の頭だけでは解決できないと感じていました。そこで自分よりもっと実務経験のあり、能力のある方々と交流を深め、一緒に切磋琢磨することが必要と考え、社会人MBAの受験を決意しました。

2.なぜ神戸大MBAか?

学部は違いますが、十数年前神戸大学を卒業しており、神戸の街や神戸大学そのものに非常に愛着がありました。大学三回生の冬には阪神大震災を経験しており、私の人生で神戸の地には欠くことのできないアイデンティティのようなものがありました。また神戸大学は関西だけでなく日本全国に優れた経営者やビジネスマンを輩出しており、教授の方々も含めて理論だけでなく実学の精神が開学以来貫かれていらっしゃいます。今回、金融分野だけであれば関東の大学院に金融専門の学科がありましたが、より広く深く経営全般が学べる大学院を探した結果として自然に神戸大学を選択していました。

3.試験対策

(1)一次試験
  1. 英語
    業務で日常的に英語を使っているので、特に勉強らしいことはしませんでした。試験内容もそれほど難しいものではありませんし、辞書持込みもできます。私は小さいポケット辞書を持込みましたが、辞書に載っていない単語もありましたので、かさばりますがしっかりとした大きな辞書を持込みすることをお勧めします。内容では問題文全体を短時間で把握する読解力を身につけることが鍵になると思います。普段英語に触れていない方は、まず過去問で慣れることから始めてみてはいかがでしょうか。年ごとにビジネスのケーススタディや学術的なものも試験で出ていますので、ある程度英語に自信のある方はHarvard Business ReviewやGoogle Scholarで英語の文献に目を通すのもよいと思います。国内のMBAですが、実際の講義や修士論文で先行研究を調べる際には、国内の論文だけでなく海外の文献を見る機会もありますので、試験対策で英語をしっかり勉強することが入学後にも役に立ちます。
  2. 小論文
    過去の大学受験でも小論文試験対策をしていて、もともと小論文自体も好きであったため、こちらも試験対策らしい対策は全く行っておりませんでした。ただいつもにも増して本を暇さえあれば目を通していました。経営学、ミクロ・マクロ経済学、コーポレートファイナンス、組織行動、自身の関心のある金融論、認知心理学、中国古典、マネジメント、コーチングに加えて、東洋経済、ダイヤモンド、日経BP等雑誌など。受験を決めた10月から一次試験までの約3ヶ月間で恐らく200冊ぐらいは読んだと思います。読んだことそのものよりも、これだけ読んだのだからと妙な自信だけはつきました。加えて日頃の一つ一つの業務を経営学の分野と結びつけて考えておりました。試験内容も経営学の知識や理論を問うようなものではなく、日々の業務での経験から何を考えているかを問う内容でした。背伸びせず、自身の経験に基づき、問題意識やどのように解決していくかを常日頃から考えていればほぼ完璧に解答できると思います。
(2)二次試験
  1. 研究計画書
    入学後に同期と話をしていると、研究計画書が一番大事なものだと改めて感じました。ほとんどの方がそうだと思いますが、研究計画書を書いたこともなく、そもそも「研究計画書」って何?会社での「稟議書」や「企画書」みたいなもの?というところからの出発でした。願書とともに提出まで1か月程度しかありませんでしたが、研究計画書だけは時間を使い、真剣に取り組みました。まず研究計画書とは何かという本を1冊購入して何回も熟読しました。そこから自分は何故大学院に行くのか、何を研究したいのか等々根本的なところを何も考えておらず、単に「MBAってかっこいいな」と甘い気持ちでいたことに気づかされました。その本をベースにして来る日も来る日も研究計画書を書いては見直し、11月は仕事以外のほとんどの時間を研究計画書作成に費やしました。ここでも重要なことは背伸びをしないことです。研究計画書を見る先生方は何年、何十年と論文や研究計画書を見続けています。甘い意識で書いた問題意識の浅い研究計画書は間違いなく見破られます。そしてそれは後述する面接試験で露呈します。とにかく自分の経験に基づかないもしくは関連しないことを徹底的に排除した上で、臨場感があり、現時点での妥協のない研究計画書を作ることが大切です。
  2. 面接 10分
    受験で一番後悔しました。終わった瞬間落ちたかなと思いました。試験前から一次試験後も過去の合格体験記をほとんど読んでいませんでした。そのため試験時間が10分であることも、そのインタビュー内容についても詳細を把握しないままでの受験でした。私のものはともかく過去の合格体験記は隅から隅までお読みすることをお勧め致します。それだけで最終合格に必要な対策の半分ぐらいにはなると思います。研究計画書の要旨を2、3分で言ってくださいと言われてまごつき、先生方に「そんな研究本当にできるの」と突っ込まれ「いえ、まあ何とかツテを頼って」と何の説得力もない回答を繰り返していました。一次試験後も油断せずに、自分は何故神戸大学のMBAに行くのかを頭に入れたうえで合格体験記と自分の書いた研究計画書を何回も読み返して口頭で要約する練習をしたり、会社にMBAの経験のある方がいたら面接の練習もすることをお勧めします。入学後も学生やOBの前でプレゼンテーションをする機会が多いので、こうした練習をやっておくと入学後に役立ちます。

4.受験を迷っている方へ

様々な理由で受験を迷われている方も多いと思います。そこでもし本当に有用かどうかを試したいということであればまず科目等履修生になることをお勧めします。全ての科目を履修することはできませんが、一部科目についてはMBA生と同様に講義を受け、グループワークもMBA生、科目等履修生関係なく取り組むことができます。そこでの取得単位は後年、MBA生として入学したときに引き継ぐことができます。そうすれば神戸大学MBAの一端を事前に知ることができる上にMBAとして入学後、わずかながらの物理的、精神的な余裕を持つことができます。またできる限り神戸大学MBAの経験者の話を聞いてみてはいかがでしょうか。仕事でもそうですが、一番よく知っている人はそのことを経験している人です。

5.最後に

入学してからは大量の課題書籍、文献の講読、レポート作成の嵐が待ち受けており、体調を崩される方もいます。受験というとどうしても勉強、座学ばかりになってしまいますが、実際には肉体的、精神的な体力もなければ中身の濃いディスカッションやレポート、論文作成はできません。加えてかなりの部分について仲間と協力して難題を乗り越えていくことも必要になり、一人でやることができれば楽なのにと思い、時には口論にもなり、険悪なムードになることがあります。それらすべてをひっくるめてMBAだと思います。そこで共通の経験をした仲間は一生の財産になります。
神戸大学MBAを目指されている皆さま、入学して後悔することはありません。受験せずに一生後悔することがないよう思い立ったら立ち上がってください。

※参考文献
  • 妹尾堅一郎 (1999)『研究計画書の考え方 大学院を目指す人のために』(ダイヤモンド社)
  • 日本経済新聞社編、金井壽宏、延岡健太郎他著 (2010)『これからの経営学』(日経ビジネス人文庫)
  • H・ミンツバーグ著、池村千秋訳 (2006)『MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方』(日系BP社)

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