グローバル経営学応用研究(GB2025)報告
- 日程
- 2025年3月16日(月)~3月21日(土)
- 行先
- マルセイユ、KEDGEビジネススクール(フランス)
グローバル経営学応用研究は、海外ビジネススクールと神戸大学が協働して提供しているMBA生向けプログラムです。2025年度はKEDGEビジネススクールと実施しました。このプログラムは、企業経営や文化の相違を体感しつつ、現代に適したグローバルエグゼクティブキャリアの形成を目指しています。今回は、3月に行われた、神戸大学MBA生が渡仏するフランス研修プログラムの様子を紹介します。
経営学研究科 准教授 戸梶 奈都子
目次
引率教員から一言
神戸大学MBAプログラムにとって重要なグローバル研修の一つである本プログラムは、KEDGEビジネススクールのご協力を得て、充実した内容で実施されました。本年度は、KEDGEビジネススクールのEMBA生との英語での協働の比重が高まったこともあり、最終的に7名での実施となり、その分、参加者一人ひとりとKEDGEのEMBA生との密なコミュニケーションが生まれ、神戸大学MBA履修生がKEDGEのEMBA生と積極的に議論を交わす充実した学びの場となりました。リーダー陣のもとで強い結束力を発揮しながら大きな事故もなく無事に終了しました。企業訪問、講義、文化体験など多彩なプログラムをご準備くださったKEDGEビジネススクールの皆様、そして施設・企業訪問にご協力いただいた関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。
研修前半は、Prof. Matthieu LaurasによるDesigning sustainable supply chainsセミナーをKEDGEビジネススクールEMBA生とともに受講し、約30名が5グループに分かれてサプライチェーン設計に取り組み、その成果を発表しました。研修後半は、Prof. Christophe GaronneのもとLuminyキャンパスでのアントレプレナーシップ講義に加え、マルセイユの伝統産業や地域に根ざしたスタートアップをアントレプレナーシップの視点で実際に訪問・体感するフィールドワークを行いました。実務でマネジメント層として活躍するKEDGE EMBA生と、同様に実務経験を積んだ神戸MBA履修生との協働は互いにとって学びの多い機会となり、両セッションを通じて活発な提案と議論が交わされました。
GB2025に参加された神戸大学MBAの皆さん、事前準備や現地での集中講義とプレゼンテーション、グループワークでの活動など、お疲れさまでした。今回の研修が皆さんにとって実りあるものとなっていれば幸いです。このあと、仏国研修の概略と、参加された神戸大学MBA履修生の感想のまとめをご紹介します。
研修概要
- 3月16日(月)
- (午後)南フランス地域経済開発機関主催ワークショップ(オプション)
- (夕刻)マルセイユ市内のホテルに集合
- (夜)キックオフミーティング
- 3月17日(火)
- (午前)Prof. LaurasによるDesigning sustainable supply chainsセミナー開始。アイスブレイク、ビアーゲーム、講義
- (午後)講義、グループワーク
- (夜)AI, Robotics and Geopoliticsコンフェレンス(オプション)
- 3月18日(水)
- (午前)Prof. LaurasによるDesigning sustainable supply chainsセミナー。サプライチェーン設計
- (午後)サプライチェーン設計発表
- (夜)ゲストスピーカー Mr. Moester (Traxen) による講義
- 3月19日(木)
- (午前)Luminyキャンパスに移動後、Prof. Garonneによるアントレプレナーシップ講義
- (午後)Luminyキャンパスツアー、カランク国立公園散策後、マルセイユ市内のホテルへ帰着
- 3月20日(金)
- (午前)Prof. Garonneによるマルセイユ市内フィールドワーク及びローカル企業訪問
- (午後)Prof. Von StadenによるPost-MBA Journeyセッション
- (夜)KEDGE EMBA生とのネットワーキング及び修了証書授与セレモニー
- 3月21日(土)
- (朝)現地解散
ここからは、神戸大学MBA履修生による感想記(原文のまま掲載)
事後レポート マルセイユ研修
リーダーからのコメント
GB2025リーダー 白越 正洋
2026年3月16日から20日にかけて、私たちはフランス・マルセイユにて実施された海外研修プログラム(以下、本研修)に参加しました。本プログラムは、KEDGE Business School(以下、KEDGE)との提携により実施されたものであり、サプライチェーンおよびアントレプレナーシップを中核テーマとして構成されています。
本研修の価値は、単に講義を受講することにとどまらず、「なぜマルセイユという都市で学ぶのか」という点にあると感じました。マルセイユは古くから地中海交易の拠点として発展し、現在も欧州・アフリカ・中東を結ぶ物流のハブとして機能しています。そのため、この都市でサプライチェーンを学ぶことは、教科書上の理論ではなく、実際に機能している物流や取引の現場そのものを対象にすることを意味していました。
実際に現地を訪れることで、サプライチェーンは単なる効率的な流れの設計ではなく、地理的条件や歴史、文化、人の動きと密接に結びついた生きたシステムであることを実感しました。こうした体験を通じて、本研修は知識を増やす場というよりも、自分自身の前提や物事の捉え方を見直す機会であったといえます。
渡仏に向けた準備という観点では、年度末という業務繁忙期と重なったこともあり、事前準備は必ずしも十分とは言えませんでした。しかし、この状況自体が、不確実性の中で意思決定を行うという本研修のテーマと重なっていたともいえます。事前準備や事前学習においては、限られた準備の中でもメンバーそれぞれが主体的に関与し、必要に応じて役割を補完し合うことで、状況適応型のチーム運営が自然と形成されていった点が印象的でした。
現地では、講義やディスカッションに加え、非公式な交流の中でも多くの学びがありました。多様なバックグラウンドを持つ参加者との対話を通じて、自身の思考の前提が相対化され、特にサステナビリティや社会的価値を前提とした意思決定の在り方には大きな刺激を受けました。また、毎日のようにKEDGEの学生が夕食に付き合ってくれたこともあり、形式的な議論を超えた関係性を築くことができた点は、本研修の価値をさらに高めるものでした。
為替の影響に加え、国際情勢の不安定さ(米イラン関係の緊張)により、一部メンバーは航空チケットの取り直しを余儀なくされるなど、費用面・運営面での負担は決して小さくありませんでした。しかし、これらも含めて不確実性が前提となる環境を体感する機会であったといえます。本研修を通じて得られた価値は、それらの負担を大きく上回るものでした。特に、自身の思考の前提が揺さぶられた経験は、今後の意思決定において重要な意味を持つと考えています。
また、本研修において特徴的であったのは、個々の学びが相互に補完・増幅される構造です。多様なバックグラウンドを持つ参加者が、それぞれ異なる問題意識を持ち寄り、対話を通じて認識を更新していくことで、単独では到達し得ない理解に至ります。このような学習プロセスは、個人の知識獲得を超えた価値を生み出していました。
本研修は、海外経験という枠を超え、「自らの前提を問い直す機会」であったと位置づけられます。理論と現実を往復しながら理解を深めるという意味において、本プログラムは極めて示唆に富むものでした。
本海外研修プログラムは、今後も行き先や内容を変えながら継続されていくものと考えられます。今後参加を検討する学生にとって、本レポートが具体的なイメージを持つ一助となれば幸いです。
ここから、本研修プログラムの各パートについて詳しく紹介していきます。
講義紹介
Supply Chain Design & Management
斉藤(関山) 由香
授業初日から2日目にかけて、実務経験豊富なLauras教授によるSCM(サプライチェーン・マネジメント)の講義を受講しました。この講義は、KEDGEメンバーとの混成チームによる授業形式で、理論と実践が融合した密度の高い学びとなりました。

導入「ビアーゲーム」
KEDGEの学生と混成の3グループに分かれ、小売・卸・流通・工場の各役割を分担し、ビールの需給調整を行うゲームを実施しました。需要情報の遅延や部分最適な意思決定が連鎖することで、サプライチェーン全体に混乱が拡大していく様子を、身をもって体感しました。この現象は「ブルウィップ効果(ムチ効果)」と呼ばれ、TOM(Technology and Operations Management)でも学んだ内容でしたが、情報共有と協調の欠如がいかに全体最適を損なうかを、理論ではなく実感として理解できた点が非常に印象的でした。
講義内容
Lauras教授の講義は想像以上に高度な内容で、これまで学んだ知識だけでは対応しきれない場面もありました。しかし、自動車や部品メーカーで需給調整の経験が豊富なメンバーが、休憩時間に日本語で他のメンバーへ補足説明をするなど、日本チームで理解を補い合いながら進めることができました。
実務経験があるからこそ理論が腑に落ちる場面がある一方で、自分がまだ経験していない領域を英語で理解しようとする難しさも痛感しました。「知っていることで理解できる」と「知らないことを多言語で学ぶ」、その両方を同時に体験した濃密な時間でした。
2日目午後のワークショップ

KEDGEの学生と混成の5グループに分かれ、各チームが選んだ身近な商材をテーマに講義での学びを活かして、サプライチェーンを設計しました。他のチームがジュースやボールペンなどを題材に選ぶ中、私たちのチームは「キットカット」を選びました。チームメンバーにネスレ勤務のメンバーがおり、手土産として持参してくれたキットカットをみんなで食べたことがきっかけです。フランス人メンバーにも馴染みのある商材であったことも、チーム全員が共通のイメージを持ちやすく、議論が弾んだ要因のひとつでした。
それぞれのキャリアやビジネススキルを活かした役割分担のもと、アウトプットをまとめました。多様なバックグラウンドを持つメンバーとの協働を通じて、サプライチェーン設計における視点の多様性の価値を改めて実感しました。
VUCAと呼ばれる不確実な時代において、SCMはもはや物流や調達の枠を超え、企業の競争力そのものを左右する経営課題です。今回の学びを、調達業務やサプライチェーンの持続可能性を考えるうえでの実践的な指針として、今後の仕事に活かしていきたいと思います。
Supply Chain Design & Management Presentation
土井 佳代子
ケースワーク発表
前日の3月17日は、アイルランドで広く親しまれているセント・パトリックス・デーにあたりました。現地のMBA生に案内いただきアイリッシュパブを訪れ、街全体がお祭りムードに包まれる中で、その文化的な背景や地域コミュニティの一体感を体感しました。こうした非公式な交流を通じて、現地メンバーのホスピタリティに触れるとともに、文化が人と人との関係構築に果たす役割についても理解を深める機会となりました。
そうした交流の余韻が残る中で迎えた2日目は、簡単なセッションの後、5つのチームに分かれて前日から準備を進めてきたサプライチェーン戦略の発表が行われました。
ケースワークでは、まず各チームが対象とする製品を設定し、製品構成や需要特性、サプライヤーおよび顧客像を整理しました。その上で、調達・生産・在庫管理を含む内部サプライチェーンを設計し、さらに販売・マーケティング戦略と連動した流通ネットワークについても検討しました。加えて、拠点の配置や輸送手段、需要計画、受注から納品までの一連のプロセスを総合的に設計し、チームによっては、Make or Buy戦略やサプライヤーの選定、協業による柔軟性向上策、さらには情報フローやIT・アナリティクスの要件まで踏み込んだ議論が行われました。最終的には、これらを経営層向けの提案としてまとめ、発表を行いました。
発表では、仮想製品を題材としたチームもあれば、実在する製品を取り上げたチームもあり、ワインやボールペン、眼鏡ケース、チョコレート、ジュースなど、扱う製品は実に多様でした。10分間の発表後には、他チームのメンバーやLauras教授から鋭い質問が投げかけられました。販売チャネルの妥当性や在庫水準、季節性を考慮した製造計画など、実務経験に基づく実践的な視点でのやり取りが行われ、大変学びの多い時間となりました。
このケースワークを通じ、特に二つの大きな学びがありました。一つは、市場や販売チャネルの違いによってサプライチェーンの構造が大きく変わるという点です。もう一つは、自社のサプライチェーンについて、改めて深く理解する必要性を感じたことです。日頃何気なく関わっている業務でも、改めて問われると即答できない点も多く、知識を整理し、理解を深める良い機会となりました。
インキュベーション施設見学・アントレプレナーシップ講義・キャンパスツアー
松本 恭明
本講義では、KEDGEにおけるアントレプレナーシップ教育およびインキュベーション施設の実態について、Garonne教授の講義・キャンパスツアーを通じて深く学びました。
当日は、初日や2日目のWorld Trade Center内のキャンパスではなく、ホテルからマルセイユのメトロ(地下鉄)・バスを乗り継いで、マルセイユ(Luminy)キャンパスへ移動しました。マルセイユ中心部から自然豊かなマルセイユ(Luminy)キャンパスへの移動は印象的であり、本キャンパスがカランク国立公園内にあり、約5,000名を収容する規模を有している点も特徴的でした。自然環境と教育・研究機関が融合した広大なキャンパスで、日本ではあまり見ることができない価値創造の場であると感じました。
インキュベーション施設見学
インキュベーション施設の見学を通じて、起業支援の具体的な仕組みを体感することができました。施設内には、付箋を活用したアイデア創出ボードや起業家同士が自由に意見交換できるオープンスペースが設けられており、創造性と偶発的な出会いを促進する環境が整備されていました。
また、スタートアップ企業のマーケティングやプロモーションを支援する仕組みも整備されており、単なる場所の提供にとどまらない包括的な支援体制が構築されていました。インキュベーション施設では、学生やMBA生が実際のビジネス創出プロセスに関与する機会が提供されており、学びと実践の場の融合に大きな意義があると感じました。
アントレプレナーシップ講義
Garonne教授の講義では、起業という不確実性の高い環境において手持ちの資源を活用する「エフェクチュエーション(非予測的戦略)」の重要性を学びました。これは、キャンパス内に掲げられた「DON’T DOUBT, DO(迷わず行動せよ)」というメッセージとも深く合致する、起業家に不可欠な思考の転換となります。
コンピューターゲームを題材としたケースにより、ターゲット顧客の選定や競合・市場環境分析の具体的な手法について、教授とのディスカッションを通じて学ぶことができました。また、ターゲット顧客への販売についても、具体的な数値を基にした対面・オンラインやサブスクリプションの提案など、Garonne教授とのディスカッションを通じて、本プロダクトの戦略を構築するプロセスは、実務的かつ示唆に富むものであると感じました。
不確実性の高い環境においては、事前の精緻な計画に依存するのではなく、手持ちの資源や人的ネットワークを活用しながら柔軟に意思決定を行うサラスバシーのエフェクチュエーションの考え方が重要であると、Garonne教授が強調されていたのが印象的でした。このアプローチは、従来の計画主導型戦略(コーゼーション)の考え方とは対照的であり、起業家に求められる重要な思考といえます。スケールアップにおいても、精緻な計画に依存するのではなく、スモールスタートで試行を重ねながら機会を創出していくことが重要であると学びました。これは、エフェクチュエーションにおける「まず行動し、結果から学習する」という意思決定原理とも整合しています。
キャンパスツアー
キャンパス内には、起業家精神や成長を促すメッセージが随所に見られたのが印象的でした。例えば、「DON’T DOUBT, DO」という言葉は、迷わず行動することの重要性を示しており、エフェクチュエーションの実践的な考え方と一致しています。また、「GROW TOGETHER FOREVER AND EVER」という言葉は、協働を通じた価値創造・成長の重要性を示しており、インキュベーションの実践的な考え方と一致しています。さらに、卒業生の紹介パネルでは、在学中の学びやインターンシップを通じて、実社会で活躍する人材が育成されていることが示されており、教育と実務の融合により、起業家の輩出・育成のエコシステムが構築されていると感じました。
キャンパスに隣接した場所に、広大な芝生のグラウンドや強豪テニススクールがあり、スポーツと学びを両立させる環境も整備されていました。強豪テニススクールには、地元の食材を活かした料理やデザートが豊富にあるレストランが併設されており、午後のカランク国立公園散策に備えて、ビュッフェ形式での昼食で、Garonne教授と参加メンバー同士で、会話を楽しみながら食事をすることができました。ビュッフェには、地中海のムール貝やたくさんの種類のデザート・チーズなどがあり、メンバー全員が目を輝かせていました。
以上の通り、自然豊かな環境の中にあるKEDGEのマルセイユ(Luminy)キャンパスは、人的ネットワーク・知識・実践の融合によるイノベーション創出の中核であると感じました。特に、不確実性の高い現代においては、エフェクチュエーション的思考を前提としたマインドセット・柔軟な意思決定に加えて、環境整備が重要であり、日本においても大学・地域・企業を結びつけるエコシステムの構築が、イノベーション創出の鍵になると感じました。
グローバル経営学応用研究「地元企業への訪問」
LW2025サブリーダー 関 亮介
Garonne教授の御指導のもと、マルセイユ市内においてフィールドワークを実施しました。本活動では、地域ビジネスの実態について現地観察を通じて把握し、その構造的特徴について理解を深めました。
地域資源を活用した伝統的ビジネスの展開
まず印象的であったのは、マルセイユの地元企業は、自国の文化や歴史を巧みにブランディングに取り込んでいる点でした。単なる商品提供にとどまらず、歴史や地域性そのものを価値として提示している点に特徴があります。
- 石鹸産業(サボン・ド・マルセイユ): 1688年にルイ14世が制定した厳しい製造基準(純粋なオリーブ油の使用、夏季の製造禁止など)が、現在のブランド力の基礎となっています。伝統的な製法や植物油72%以上という基準は、現在も業界の誇りとして維持されており、正統性」そのものが競争優位となっていました。
- パティス(RICARD): 1932年にポール・リカールによって考案されたアニス酒「リカール」は、単なる飲料ビジネスを超え、地中海のソーシャル文化(アペリティフ)を象徴する存在となっています。創業者リカールは、F1サーキットの建設や自然保護区の創設など、地域開発にも大きく貢献した英雄として知られており、企業活動と地域文化が一体化している点が特徴的でした。
- 伝統的漁業:延縄を用いた伝統的な漁法により、鮮度を極限まで高めた魚を旧港で直販していました。スーパーよりも高価でありながら、地元住民からの根強い支持を得ており、「鮮度」や「信頼」といった無形価値によって高い付加価値が創出されていました(名物はブイヤベース)。
ケーススタディ:Maison des Nines によるコミュニティ活性化
現代の地域ビジネスの一例として、2021年にノアイユ地区にオープンした「Maison des Nines」を実際に現地訪問しました。Co-Founderの女性はKEDGEの卒業生でもあります。マルセイユ市内では、市当局がスラム街を一掃しようと試みていますが、こういった形でビジネスをうまく活用して持続可能な社会の実現を目指しているのは、KEDGEの卒業生ならでは、と感じました。
- 背景と功績:2018年に建物崩落事故があった地区の空き家を、女性起業家たちがリノベーションしました。スラム地域での雇用創出と新たな価値創造が認められ、2020年にはフランスの権威ある起業家賞「Talents des Cités」を受賞しています。
- 多機能性:カフェ、香水店、ケータリングを組み合わせたオシャレな空間を提供し、古い建物の枠組みを活かしつつ現代の感性を取り入れることで、地域の「負の歴史」を「新しい活力」へと変えていました。
現地のフィールドワークを通じて、単に歴史を守るだけでなく、Maison des Ninesのように地域の「負の歴史」さえも新しい価値へと昇華させる起業家精神に強い感銘を受けました。地域資源をブランドの核に据えつつ、柔軟に形を変えていく彼らの姿勢は、過去を制約としてではなく資源として再解釈することの重要性を示しており、真の持続可能な地域経営のあり方に対する具体的な示唆を与えていると感じました。
トピック
現地学生との交流
芳谷 尚子
フランス南部のマルセイユ・キャンパスで実施された今回のプログラムには、フランス国内の各都市はもとより、スウェーデンやロシアなど国外からも多様な背景を持つ学生が参加していました。現地学生の間でも活発に交流が行われる、非常にダイナミックな環境の中に、私たち神戸大学MBAチームは参加することとなりました。
プログラムの初日は、私たち神戸大学MBA生と現地学生との間に、どこか遠慮や距離感がありました。お互いに期待と不安が入り混じり、表情に少し緊張感が漂っていたことが印象に残っています。しかし、滞在中の5日間のうち3日間、現地学生の有志が主催してくれた食事会を通して、その心理的な壁は少しずつ取り払われていきました。
私たち日本人だけでは到底たどり着けないような地元の地中海料理レストランで、お互いのキャリアやMBAを志した動機、プログラムの相違点、およびそれぞれのアイデンティティについて、皆が思い思いに語り合いました。こうした真摯な対話の積み重ねが実を結び、最終日のフェアウェルパーティでは、神戸大学MBA生の一人ひとりが現地学生と親密に対話し、会場全体が温かな笑顔に包まれていました。

この交流を通じて、相手を知ることは同時に自分自身を知ることであるという事実を、グローバルな文脈で再認識することができました。異文化の価値観に触れることで、日本人としての誇りを改めて自覚するとともに、相互理解を深めることが相手への深い敬意の形成につながることを実感しました。また、現地学生の皆さんの配慮やオープンな姿勢は、国際的なビジネス環境において求められる対人能力の高さを体現するものでした。マネジメントに求められる円滑な人間関係構築の重要性を、このようなテキストでは得られない実践的なかたちで、現地学生との短期間の交流から得られたことは、私にとって大変価値のある経験となりました。KEDGEで出会ったすべての方々に、心から感謝申し上げます。Merci!
カランク国立公園散策
藤井 安子
3日目の午後は、Garonne 教授の案内で、マルセイユを代表する景勝地・カランク国立公園を散策しました。どこまでも続く青い空のもと、眼下には、まばゆいターコイズブルーの地中海と地殻変動が生み出した石灰岩の白い断崖が織りなす、息をのむような絶景が広がっていました。都市近郊に位置しているにも関わらず、これほど雄大で美しい自然が広がっていることに驚かされるとともに、マルセイユという都市の奥行きある魅力を体感する機会となりました。
当日は天候にも恵まれ、絶好のフィールドワーク日和となりました。実際に歩いてみると、写真や言葉だけでは捉えきれない開放感や自然のダイナミズムを実感しました。乾いた空気、あたたかい陽射し、起伏に富んだ地形、そして展望地点から見渡すダイナミックな景観は、教室での講義や議論とは異なる次元での理解をもたらし、現地に身を置くことによって学べる内容ばかりでした。
また、今回印象的だったのは、美しい景色そのものだけでなく、その景色を仲間と共有できたことです。雄大な自然を前にすると、日常の教室空間では得難い心理的な開放感が生まれます。息を弾ませながら歩く道のりでは、Garonne 教授やメンバー同士の間に自然と笑顔がこぼれ、リラックスした雰囲気の中で会話が弾みました。険しくも心地よい道を共に歩き、立ち止まって景色を眺め、写真を撮り合うひとときは、研修の思い出をより豊かなものにしてくれました。こうした自然の中で過ごす時間は、参加者同士の距離を縮め、つながりを深める貴重な機会にもなったように思います。
カランク国立公園での散策は、単なる観光ではなく、マルセイユという土地を立体的に理解するためのフィールドワークとしての意義を有していました。歴史や産業、教育といった側面に加え、この土地が持つ自然の力強さと美しさに触れられたことは、今回のマルセイユ研修全体の理解を深化させる契機となり、私たちにとって本プログラムをより印象深く、特別なものにしてくれました。
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