中津 嘉隆さん

日亜化学工業株式会社勤務 2024年度入学生 坂井貴行ゼミ

1. はじめに―なぜMBAなのか?

「なぜMBAを目指すのか?」

私自身も最初は漠然とした興味から始まりました。けれど、仕事を通じて感じていた経営視点の不足、そして体系的に戦略を学びたいという想いが、徐々に「MBAに行こう」という思いに変わっていきました。

私は、入社してから複数の研究開発部署で新製品開発業務を行ってきました。製品開発を行いながら、最初は独学でビジネス書などを読む程度で、MBAに通うことはとてもハードルが高いように感じていました。コロナ禍をきっかけに、2021年頃に某私立大学のオンラインMBA講義を複数聴講し、学びの面白さと同時に、MBAで得られる体験の重要性にも気づきました。その後、2022年から2023年にかけて、神戸大学の三品和広教授に当社で講義いただく機会があり、直接的な刺激を受けたことも、神戸大学MBAを目指す大きなきっかけとなりました。三品先生の講義では、オンラインでは得られない社内同期メンバーとの議論も大きな刺激になりました。

神戸大学MBAもコロナ禍で一時期オンライン講義になっていましたが、対面講義に戻っていることを知りました。神戸大学MBAの働きながら通える制度設計のおかげで、平日は実務を行い土曜日は神戸大学に実際に通って授業を受けられることが魅力でした。オンラインにも良さはありますが、両方を経験してみて対面参加の方が授業外でも同期との横のつながりが形成され、新たな視点で物事を見るきっかけになっていると感じています。

私が神戸大学MBAを選んだ理由は、主に次の3点でした。

  • 働きながら通える制度設計
  • プロジェクトベースの実践的な学び
  • 経営の本質に迫るコア科目の充実

2. 受験準備―行動を始めた10月

本格的な準備を始めたのは10月に入ってからでした。10月7日(土)には神戸大学MBA体験フォーラムにZoomで参加しました。服部泰宏先生による「リーダーシップ論」の模擬講義や神戸大学MBA修了生の体験談は、受験後のイメージを明確にしてくれました。

体験談や合格への道を参考にして準備段階で重視したことは、研究計画書の作成です。私のそれまでの経験をもとに、研究テーマを設定しました。研究テーマとして、全社的な立場から見た場合に、開発部署として今後もどんどん新規事業に挑戦していくべきなのか、既存事業の事業ライフサイクルを伸ばしてくべきなのかという迷いがありました。これは、後の修士論文のテーマにもつながっています。この問いは、三品先生の講義を受け著書を読み、自社を研究した上で出てきた疑問でもありました。自分自身が疑問に思っていること、明らかにしたいと思っていることを研究対象にするのが良いと思っています。

過去問にも何度か取り組みました。小論文の出題は毎年異なりますので、どんな問題にも対応できる論理的思考と表現力を養うことが重要です。過去問は、神戸大学生協の郵送サービスを利用して過去3年分を手に入れることが出来ました。私は過去問について自分で何度か書いて推敲することで、論理構成と文章表現を改善していきました。MBA出身の先輩が近くにいらっしゃる方は、書き方について相談されるとよいと思います。

参考にした書籍

『国内MBA受験生が知りたい 合格者の「研究計画書」+「面接内容」』波田野年洋(パブフル、2022年)
『国内MBA受験のための研究計画書の書き方 新版』鄭龍権・河合塾KALS(晶文社、2020年)
『経営戦略を問いなおす』三品和広(ちくま新書、2006年)
『戦略不全の因果』三品和広(東洋経済新報社、2007年)

3. 受験本番―問われるのは自分自身

英語の試験は、その年に話題になった内容から出題されることが多く、私の受けた試験ではPBR1倍割れに関して出題されました。令和7年度から英語試験が廃止されたため、筆記試験と面接が主な選抜方法となっています。

筆記試験(小論文)では、問いに対して一貫性のある論理で、自分自身が考える根拠とともに示す力が問われると思っています。試験ではAIと経営に関連した出題がありました。AIの得意なことと苦手なことを整理して、問われている内容ではどうかという視点で整理しました。つぎに経営に必要なことも3つ程度に大まかに整理して、それらを突き合わせて文章化していくということを行いました。

面接では研究計画書をもとに質問されることが多く、自分の関心や課題意識がどれだけ明確に言語化されているかが重要です。なぜこの研究をやりたいのか?どうしてそれが重要なのか?といったことに答えられるようにしていました。自分にとってどう面白いかだけではなく、他の立場の人が見ても学ぶものがある研究になるのかという視点が大事になってきます。想定問答を用意しておくと安心です。

参考にした書籍

『国内MBA受験のための筆記試験の解き方』鄭龍権・河合塾KALS(晶文社、2022年)
『経営とは何か ハーバードビジネスレビューの100年』ハーバードビジネスレビュー編集部(ダイヤモンド社、2023年)
『プレMBAの知的武装』神戸大学専門職大学院(中央経済社、2021年)
『人生を変えるMBA』神戸大学MBA(有斐閣、2015年)

4. 入学してから―本当の学びの始まり

入学後、想像以上に多様なバックグラウンドを持つ同期と出会い、最大の学びは「人」から得られたと感じています。対面授業でのディスカッションや、プロジェクト科目やコア科目の中での切磋琢磨は、オンライン受講だけでは得られない貴重な経験でした。当初は戦略を学びたいと考えていましたが、組織論やファイナンスなど今まで実務で直接触れてこなかった学問領域について学べたことも私にとってよい学びになりました。授業で得た知識やMBA同期生の話が思わぬ形で実務の役に立つことも数多くありました。これは働きながら学ぶことの一番のメリットであると感じています。

働きながらの学びは確かに大変です。「体力モンスター」と言われるほど私や同期生も多忙な時期もありました。しかし、その困難を乗り越えることで得られる視座の変化、思考の枠組みの拡張は、何物にも代えがたいものでした。いままで当たり前に行っていたことが、隠れた前提や他にも選択肢があったのだということに徐々に気が付かされるようになりました。これらはプロジェクト研究やコア科目を通して培われたように感じています。

5. おわりに―挑戦する理由

MBA受験には「挑戦しない理由」はいくらでも見つけられます。でも、挑戦する理由を探すことが、すでに学びの一歩なのです。神戸大学MBAには、実践を重ねたビジネスパーソンが集い、互いに問いを投げ合う環境があります。「なぜその選択をしたのか」と問われたとき、言葉に詰まるようなら、それこそMBAに行くべき理由かもしれません。ぜひ、自分自身の問いに向き合ってみてください。

これから受験される方々の一助になればと思います。

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