中村 有沙 さん
LINEヤフー株式会社 勤務 2024年度修了生 鈴木竜太ゼミ
1. プロフィールをお聞かせ下さい。
中村有沙と申します。東京で育ち、2007年にヤフー株式会社に新卒で入社しました。営業や企画に6年従事した後、2012年から現在まで人事です。人事として、組織開発を4年、事業部門の担当人事(HRビジネスパートナー)に6年携わり、PayPayの立ち上げの採用やヤマト運輸株式会社への出向などを経験しました。現在は、神戸大学MBA在学中に合併したLINEヤフー株式会社にて、採用と人材開発を管掌しています。
2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?
インターネット業界という市場環境も組織も変化のスピードが速い企業で、人事として仕事をするうえで、新卒入社した会社での人事経験がキャリアの大半である自分が、これからの未来に起こる会社の変化を支えられるのだろうか、いい人事ができるのだろうか、という危機感がありました。また人事は、人と組織の領域の専門性も必要となります。日々の業務に忙殺されるだけでなく、自分なりにアカデミックな知識を理解したうえで人と組織に関する専門領域を持ちたいという想いがありました。
神戸大学MBAを選ぶ方は、MBAという選択肢をベースに大学院を検討される方も多いのではないかと思います。私の場合は人事領域を学びたかったため、経営学もしくは心理学のどちらの学問を軸に学ぶのか、も含めて複数の大学院を選択肢に検討していました。神戸大学MBAを最終的に選択したのは、卒業生の上司から話を聞いていたことや、鈴木竜太教授をはじめとする人事領域の教授陣から学ぶことができること、研究に重きをおき、ケースプロジェクトやテーマプロジェクトなどがあることなどからでした。初夏にあった、どのようにコア科目の授業をつくっているのか、という3名の教授の公開授業が非常に面白く、ぜひこの環境で学びたいと思ったことが願書を出す後押しとなりました。
3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?
達成できた部分とまだ未達成な部分があります。
まず、目的以上に達成することができたのは、戦略・マーケティング・会計・人と組織・技術経営などの授業や研究の過程を通じて、多角的に、かつ、日本を支える様々な業界のビジネスとも比較しながら、徹底的に自社を捉えなおすことができたことです。これまでは自分の経験値の中からの発言や振る舞いでしたが、経営や事業責任者と話をするときの問題のとらえ方や発言の仕方は変わってきたように思います。
一方で人事領域における専門性を磨き実践に生かしていく部分は未達成な部分があります。研究や授業を通しての多くの学びがありましたが、MBAの各授業や、はじめての研究、論文を書くということに必死で、研究をするということにおいてはまだまだ入口に立ったところのように感じています。
4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。
特にはじめの3か月はとても苦労しました。主に大学での土曜日の授業のほか、火曜と金曜夜のオンラインでの選択授業があります。授業の事前課題や並行するグループワークもありますので、平日の夜の時間は入学前の想定以上にMBAのことで精一杯でした。必死ではありましたが、やるしかない!状況ではありますので、徐々に自分のなりの1週間の過ごし方ができてきます。同期のみなさんもそうだったのではないかなと思います。事前に予定をブロックするようにするなど、曜日や時間で仕事とMBAを自ら切り替えるスイッチを明確にするようにしたことは良かったのかなと思います。加えて、体調が万全でないと1年半は乗り切れないので、1日1日のコンディションをよくするために、睡眠だけはしっかりとる!こととしていました。
また2023年の入学当初はコロナ禍での影響が終息に向かう頃でした。私はインターネット企業で働いていることもあり、仕事は出社とリモートワークがハイブリットな働き方でした。それまでは東京に暮らし仕事をしておりましたが、神戸大学MBA在学期間中は思い切って関西に引っ越しました。神戸大学MBAは、関東や名古屋、四国などの遠方から週末に通われている方もいらっしゃいます。通う選択肢もありますし、拠点をうつしてみるという方法もあります。私の場合は、基本関西をベースにし、出社での仕事の際は平日東京にいき、毎週末関西には必ずいるというスタイルにしました。人が変わるには「時間配分を変える」「住む場所を変える」「付き合う人を変える」ということを大前研一さんが著書でおっしゃっていたことが頭をよぎり、興味のあった神戸大学を選び人生で初めて関西に住むことに。当時は思い切ったことをしたなと思いましたが、結果この選択はとても良かったです。関西にいることがMBAに取り組むスイッチにもなっていたように思います。
5. 神戸大学MBAコースのカリキュラムはいかがでしたか?神戸大学MBAを受講してよかったと思うことはどのようなことでしょうか。
ケースプロジェクトやテーマプロジェクトは、修士論文を書いていくうえでの研究の基礎が身につくような流れになっていたのだ、と最後に気が付きました。これらのプロジェクトは単なるグループワークではありません。普段あたりまえになっていて気づかないくらい染みついているビジネスでの思考回路をふりほどきながら、時に往復しながら、問題意識や問いを明確にし、先行研究や事例企業や事象と向き合い、いかに問いのこたえや新たな発見をしていくのかに取り組みます。そして、一人で書き上げる修士論文以上に、複数人の課題意識を一つの研究テーマにしていくことはより難易度が高かったのだ、と振り返れば思います。1年半を通してアカデミックな考え方を通して、課題と向き合うことができるのは、神戸大学MBAのカリキュラムだからこそ経験できたことだと思います。
6. 在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
ケースプロジェクトやテーマプロジェクトです。「悔しい」という感情が久しぶりに出現しました。いずれも私は入賞チームになれなかったことも影響していますが、様々な分野で活躍する同期たちの中で、自分なりの貢献が十分にできなかったことや、他のチームの発表をみてもっとあのポイントを詰めることができていたら、など多々反省がありました。“たられば”は存在しないですが、日々の仕事の中での自分の課題が、MBAの中でも露呈し、そこと向き合わざるを得なかったですし、行動を変えていくきっかけにもなりました。
また授業の中では、「経営倫理」を学ぶことができたことも糧になっています。ESG、人的資本など、なかなか答えが数値のようにでない様々なイシューに対して、自分なりの理解や解釈を持つことができるようになりました。
7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
2点あります。1点目に、物事への集中の仕方と時間の切り替えが以前よりもできるようになったとことです。明らかにMBA期間中はキャパオーバーしますが、それを乗り越えると、卒業をして仕事中心に戻っていったときに、管理職として自分が今何にフォーカスするべきなのかに焦点をあてて時間配分を考えられるようになりました。マネジメントする立場の方にとっても得られる大きな武器のひとつだと思います。
もう1点は修士論文を通じて、「自ら考え動く」ということです。神戸大学MBAの授業やカリキュラムはしっかりと作られています。必要な授業をとり課題をやれば(成績はさておき)卒業への道は近づきます。しかし、受け身のままでは、自ら世の中の課題を捉えビジネスを通じて解決をしていく、ということにはつながらないです。鈴木竜太教授やTAの方、ゼミの仲間からの叱咤激励を通じて、研究テーマの設定も先行研究も研究の道筋も、自分の課題に向き合いたいのか、そしてどのように研究していくのかを自らの意志で進めていくことの重要性に、はっとさせられました。正直私は気づくことがとても遅かったです。企業で働いていれば大小さまざまな課題は降りかかってきてやることはいくらでもあります。その中でも自らの意志でいかに社会として解決するべき、フォーカスする課題を設定し推進していくのか、ということにもつながる変化でした。
8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。
すでにこの記事をご覧になっているのであれば、神戸大学MBAへの受験をお勧めします。仕事もプライベートも、おそらく想像以上に1年後、2年後は変化していて、その時はその時で忙しいです。ぜひ卒業生や公開授業などにコンタクトを取り、直接話を聴いてみるなど一歩を踏み出すことをおすすめします。
また、個人的な想いになりますが、今以上に、日本全国、そして様々な業種や職種の方にとって神戸大学MBAが学びの選択肢になるとよいなと思います。私は、関西にきて学んだことで、製造業や地場を支える企業の同期たち、そしてそれらの企業に寄り添ってきた神戸大学だからこその事例などを用いたケース等から、ものづくり大国日本をはじめて肌で感じることができました。(授業中の皆の質問や発言が、常に面白い、ということもびっくりしました。)これらは書籍や動画では決して学ぶことができなかったです。自分自身のタイミングや状況も恵まれていたと思いますが、どのような形であっても、環境をかえることや一歩踏み出そうとお考えの方がいらしたら心から応援いたします。きっと得られる経験や人とのつながりは、人生において宝になるだろうと思います。