2024年度ポスターセッション 教員のコメント

三矢 裕 教授

神戸大学のMBAの特徴の一つは、修士論文を書くことです。ケースプロジェクト研究、テーマプロジェクト研究はチーム戦ですが、これだけは個人戦です。

1年の後期からの一年間のゼミの中で、仕事と並行しながら、二万字を超える論文を書き上げることになります。もちろん簡単なことではありませんが、社会を少しでも良くしたい、応援してくれている会社の仲間に研究成果を恩返ししたい、周りで頑張る同級生に負けたくない、勉強漬けで家庭サービスが十分にできていないからこそ立派な論文を書いてプレゼントしたい。修士論文には、様々な想いが込められています。嬉しいことに、今年は提出者全員が論文の合格を勝ち取りました。

そして、研究成果はやはりたくさんの人に知ってもらいたい、自分の論文を起点に誰かともっと議論をしたい、仲間がどんな研究をしたかを知りたいし学びたいと思うのは当然です。そういう気持ちに応えるべく、神戸大学では10年前より、ポスターセッション形式の発表会を行っています。彼らにとって、MBA生活の最後を飾る、最大のイベントとなります。私の知る限りでは、このような形式の発表会をやっているMBAは世界中で神戸大学だけだと思います。

当日は、準備したA0判のポスターの前に立ち、オーディエンスに対して熱のこもったプレゼンが行われます。スタイリッシュなポスターもあれば、クイズ形式でやり取りしながら盛り上げた人もいます。椅子が用意されていないので立ちっぱなしは大変ですが、そこかしこでディスカッションが行われたり、自社に持ち帰られるアイデアをメモしたりしていました。

このポスターセッションのユニークな点として、学生たちは家族を招待することも可能です。というより、むしろ推奨されます。今年は、子供の手を引いたままで、研究の説明をするお母さんもいました。50代の学生さんは何と、高齢のご両親と大学生のお嬢さんを呼んで親子三代でイベントを楽しんでいました。おそらくこれまで、学生たちのご家族は、彼らが一所懸命やっているのは間近で見てはいても、どんな内容の研究かまでは知らなかったと思います。この場で堂々とプレゼンする姿を見て、とても誇らしく思ったのではないでしょうか。

このポスターセッションでは、同窓会組織であるMBA Caféさんのご協力で、投票も行われ、上位入賞者が表彰されます。(家族にも投票券が配られるので、家族を招待した方は得票数では少し有利になる?)。今年は、一位が田島功規さんの「価値創造ストーリーを活用した経営戦略の浸透により、自走する組織へ」、二位が豊原 彩加さんの「女性が管理職登用に消極的な理由〜ロールモデルが増えてきた先進的な女性活躍推進企業の事例〜」、三位が西山英毅 さんの「事業ポートフォリオ再編に向けたM&A戦略の成功要因」となりました。表彰式のスピーチで、入賞者たちは喜びを爆発させていました。中には悔しい結果に終わった人もいたかもしれませんが、それでも学生たちがお互いの健闘を称えあい、苦しくも充実したMBA生活を振り返っていました。素晴らしい時間となりました。

なお、昨年に続き今年も、ポスターセッションの開催時間中、託児室を準備しました。会場のそばでお子様を預けることができ、利用いただいた方も安心してポスターセッションを楽しみ、学ぶことができました。