eureka EXPRESS【2020年度07月02日号】

MBA教育の実際

◇2021年度専門職大学院現代経営学演習担当者のご紹介

2021年度専門職大学院現代経営学演習担当者が決定しました。各担当教員より、現在関心のある研究、MBA生に期待すること、現代経営学演習の進め方について紹介致します。 

小川進 教授

(1) 現在関心のある研究
独創的な研究をする経営学者の活動について調査しています。

(2) MBA生に期待すること
雇われている身としてではなく、もし自分が経営者であったとしたら、今、会社や事業が直面している問題はどのようなものだと認識し、どのような選択肢を考え、決断するかといったことを常に考えていただきたいです。今の会社に見限られないようになんとか知識を更新したいというよりも今の会社が出ていってもらっては困る、わが社の救世主になってもらいたい、経営者になってもらいたいと思う人材になるためにここで勉強するんだと思っている方とともに学びたいです。

(3) 現代経営学演習の進め方
毎回が議論、議論、議論です。どのような経営の現実に直面しているかから始まり、それを修士論文として取り組む課題として切り取り、変数間の関係として特定化し、実証していく。その試行錯誤を繰り返していきます。

梶原武久 教授

(1) 現在関心のある研究

私の専門領域は、管理会計やコスト・マネジメントです。管理会計情報の活用が、個人のレベルでは、意思決定や行動に対して、また組織のレベルでは、戦略、イノベーション、組織学習、組織能力、業績などに対して及ぼす影響に関心を持っています。私の目下の研究関心は、次のようなものです。

  • 長期的に競争力を有する企業のコスト構造づくり
  • フィードバック情報が学習に及ぼす影響
  • 試行による学習や創造性を促すマネジメント・コントロール
  • 会計不正の発生メカニズム
  • モジュラー型製品開発と組織間関係

(2) MBA生に期待すること

事業環境が混迷を極める中、先例のない中で、重大な意思決定を迅速に下すことが求められています。MBA生には、是非こうした意思決定の担い手になって欲しいと思っています。先例のない中で意思決定を下すためには、誰かの意見を聞くよりも、経営の基本原理・原則をベースに、多様な視点から複眼的に考えることが求められます。MBA生には、在学期間中、「自分の頭で考え抜く」ことを徹底して欲しいと思っています。

(3) 現代経営学演習の進め方
MBA論文では、日本企業のあるべき姿とされていること、業界や自社で常識とされていること、経営学の通説とされていることなど、「常識」にチャレンジして欲しいと思っています。また、MBA論文では、大いに、領空侵犯をして欲しいと思います。自身の仕事の範囲で問題を定義し、解決を図ろうとするのではなく、「社長になったつもり」で、問題を設定し、解決策を模索して欲しいと思います。
論文指導の前半は、テーマ選定を行う傍ら、論文の書き方や研究の進め方について学びます。論文指導の後半は、個々のテーマに沿った論文指導を行います。毎回、担当者が研究の進捗状況を報告し、全員で討論を行います。ゼミ生同士が素朴な疑問をぶつけ合うことができるような関係になればと期待しております。

藤原賢哉 教授

(1) 現在関心のある研究

  • ITが金融・社会経済システム全般(社会制度・インフラ)に及ぼす影響
  • 金融機能のビジネスモデルおよびアンバンドリング化に関する議論
  • ITによる既存産業組織の規制への影響とあり方
  • キャッシュレス、MAAS、スマート社会・DX、EKYCの利活用
  • わが国金融機関のIT投資およびBCPのあり方について
  • 日本人のリテラシー(金融・IT)の評価や影響

(2) MBA生に期待すること

  • 自分が持っている問題意識について、他者にわかりやすく説明できること
  • 抱えている問題に対して、深くかつ幅広い視点から理解しようとすること
  • 柔軟性とフットワークの良さ
  • ゼミ構成者に対する誠実な対応・姿勢・明るい雰囲気

(3) 現代経営学演習の進め方
自分が取り組みたい研究テーマについて、先行研究の整理、分析の方法、予想される結果等について各自発表してもらいます。この作業を進めていく中で、自分が取り上げたいテーマの本質は何か、目標・特徴は何か、また、それを成し遂げるためには、どんな論点や分析アプローチ・方法(定性・定量)が適切かということについて、教員や他の協力メンバーが理解を共有しながら演習を進めていきます。論文等のドラフトは、締め切り間際ではなく、スケジュール感をもって早い段階から着手するようにしてください。

松嶋登 教授

(1) 現在関心のある研究
経営学の最新理論に関心を持って研究しております。特にアクターネットワーク理論、制度派組織論、最近では物質性概念や価値評価研究に関心を持っています。おそらく、日本のビジネス書ではあまり紹介されてこなかった(しかし海外のビジネススクールでは教えられている)経営理論が多いと思いますが、こうした「最深」理論に触れることも、MBAの醍醐味のひとつだと思います。最新理論ばかりではなく、古典から連なる経営学の体系をまとめなおした決定版となるテキストの執筆も進めています。関心がある方は、一般大学院の講義「経営管理特論」を受講してください。
現在は、ポストコロナのワークスタイルやライフスタイルに関心があります。この記事を私は、在外研究で滞在しているニュージーランドで書いています。ウェルビーイングを理念として、強力なリーダーシップのもとに新型コロナウイルスの根絶に成功したニュージーランドから、日本の対応を観察しております。実はコロナ以前からも世界では、SDGs、ウェルビーイング・バジェット、ドーナッツ・モデル、生活に根ざしたマイクロビジネスの可能性など、資本主義的なグローバリズム(グローバル資本主義ともいいますが)の限界を超えるための議論が既に始まっていました。こうした議論に大企業も無縁ではなく、むしろ中心的な役割を担っていくべきです。そのためには、日本人のワークスタイルやライフスタイル(もちろん、教育制度を含んで)を抜本的に考え直さなければならないと痛感しております。

(2) MBA生に期待すること
企業人として活躍し、グローバルな競争を生き抜くための知力を高めようとすることは、MBAを志す際の立派な動機だと思います。ですが、MBAがその実利に期する教育だけを提供するのでは十分ではないとも思います。世界の経営学の動向を見渡してみれば、グローバリズムによる経済化とともに貧困化がもたらされ、経済活動の土台を破壊する自然環境問題が起き、こうした問題を引き起こした西欧中心的な社会制度を見直す新たな方法論の開拓が求められています。いずれもこれまで日本の経営学が、真剣に取り組んでこなかった視点です。現代社会において強力な力を持つ企業経営に携わることになる皆さんには、普段とは異なった広い視点から物事を考えていただければと思います。

(3) 現代経営学演習の進め方
皆さんが経営の現場で抱えている問題を研究テーマとして、普段の思考を超えた視点から分析していきます。そのためにまず必要となる手段が、先行研究にあたることです。つまり、自分の問題関心にぴったりあった先行研究を探すのではなく、様々な視点を提供してくれる先行研究を(ときに批判的に)探しながら自分の問いを深めていきます。MBAの皆さんには、一般の学術研究でなされるような包括的なレビューは求めませんが、普段の思考を超えた視点を提供してくれる一本のコア論文を探し出してもらいたいと思います。経験的データの分析対象や方法も、決まったものがあるわけではありません。皆さんの研究テーマに沿って、それぞれが最もふさわしい分析方法を選択していきます。分析方法論に関心がある方は、一般大学院の講義「定性的方法論研究」を受講してください。

三品和広 教授

(1) 現在関心のある研究

『経営戦略の実戦』シリーズ第1巻と第3巻を出したので、いまは第2巻の執筆に専念していますが、それが終わったあとは経営戦略の標準教科書を書き換えにいくつもりです。
経営戦略以外では、経営者論、オペレーションズマネジメント、日米経営史、リベラルアーツなどに関心を抱いています。

(2) MBA生に期待すること
自社で経営戦略を左右する階層に食い込むこと、いまは財布を開いても買えないモノやサービスを買えるようにすること、雇用を創出すること、たくさん税金を納めること。

(3) 現代経営学演習の進め方
私のゼミでは、原則として修士論文を自社経営陣に読んでもらう建議書と位置付けて、この読み手に高く評価されることを唯一無二のゴールとします。所属企業の発展、ひいては皆さんのキャリアの前進に貢献しないものは、書くに値しないと割り切ります。
M1のあいだは経営戦略の実戦(立案と遂行)に関する共通理解を構築しにいきます。 M2に入ったら個別指導に切り替えて、自社経営陣に対する建議書の要点を固め、説得材料を集め、予想される反論に対して強力な反論を用意し、熱の伝わる文章にまとめていくプロセスを、側面からアシストしていきます。

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