加護野忠男氏(神戸大学特命教授)
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多喜田保志氏(神戸大学MBA修了生、神戸大学MBA Cafe会長)
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長田恵美子氏(神戸大学MBA在学生、神戸大学MBA Cafe理事)

変革型人材をめざす人は、なぜ神戸大学MBAで学ぶのか

(長田) 今回のシンポジウムは、神戸大学MBA30周年を記念して「変革型人材」をテーマに開催します。加護野先生にはメインスピーカーとしてご登壇いただきます。企業の変革、そしてそこで活躍する人材を、先生はどのように見ておられますか。

(加護野) 経営の変革というのは、本当に難しい課題です。社内ですごい反対が出てくるくらいでないと、本物の変革とは言えないわけです。クラレの創業者で、大原美術館などをつくった大原孫三郎という経営者がいます。彼は、10人の役員がいて、そのうち1人か2人しか賛成しないときが、物事を成し遂げるベストのタイミングだと言っています。半分が賛成したらもう手遅れというわけです。
「こんなことをやっても大丈夫か」と、不安に感じるくらいのことを、節目節目で成し遂げないと、会社というのは、発展はおろか、存続すら危うくなります。そこで必要となるのが変革型人材なのですが、皆の合意が得られないことをやり抜き、成果をあげるという難しい役目をになうことになります。

(多喜田) 変革型人材の育成に関わる教育機関として、神戸大学MBAはどのような役割を果たしてきた、あるいは果たそうとしているのでしょうか。

会社にどっぷりとつかっていると、できないこと

(加護野) 神戸大学MBAでは、プロジェクト方式、そしてその総仕上げとして、修士論文を書くことを必修化してきました。これはグローバルなMBAのスタンダードとは異なる独自性として、われわれが大切にしてきたカリキュラム上の特徴です。
会社における変革の難しさについては、すでに述べました。では、その実現のために何を行うべきでしょうか。まず必要なのは、会社の多数派が認識していない、しかし極めて重要な問題をきちんと形にして、そのソリューションを皆に説得力のあるように提案していくことです。あるいは、この提案のトレーニングを行うことです。
そのためのドキュメントを、神戸大学MBAでは、修士論文として書き上げてもらいます。神戸大学MBAが課している修士論文の要件は、研究者養成コースの修士論文とは異なります。会社にどっぷりとつかっていると、できない、あるいはやりにくい自社の変革に向けた建白書を、広く説得力をもたせて書き上げる。この知的作業を行う場を神戸大学MBAは提供してきたわけです。

(多喜田) たしかに、修士論文に向けた研究のためということでれば、データ収集などにおいて会社の協力も引き出しやすくなりますし、書き上げた修士論文の内容を役員に報告すれば、経営の変革に向けた問題点とその解決策を上奏することにもつながっていきます。

会社そのものが沈んでしまうという問題

(加護野) 会社は大切ですが、そこに埋もれていると、変革が生じないまま、会社そのものが沈んでしまうことになりかねない。この問題に気づいた人は、会社を辞める必要はないのですが、会社の外で学んでみるべきです。やはり神戸大学MBAに来てみると、他の会社から来ている凄いなと思う人に出会うでしょう?

(長田) 本当に凄いです。頭の中を見てみたいくらいの人が、いっぱいいます。

(多喜田) 違う視点が、すごく参考になる。こういう考え方があるのだと。この出会いは、たしかに脳を刺激します。

 

第2弾「変革の連続だった神戸大学MBAの歩み」に続く >>