神戸大学MBA

アクセスマップ お問い合わせ
  • 文字サイズ
  • 標準
  • 標準


◇ 2006年度入学生オリエンテーションのご報告
 

3月25日土曜の午後、快晴。大阪湾をぐるりと見渡せる神戸大学六甲台キャンパスの瀧川記念学術交流会館において、MBAプログラムの入学ガイダンスを行いました。正司健一研究科長が、85名の素晴らしいクリデンシャルを持つ社会人の新入生に歓迎の意を表し、オリエンテーションがキックオフされました。神戸大学経営学の104年の長い歴史の中の最近17年間では、MBAプログラムは最重要項目であり、今年の学生定員の増加にみられるように、様々な方のご尽力により順調に発展しているように思われます。

神戸大のMBAプログラムのコンセプトは、社会人のためのプロジェクト方式による「研究に基づく教育」であります。この意義を理解していただくことが、オリエンテーションの一つの主要な目的であります。そのためには、まず、MBAプログラムとExecutive MBA プログラムの違いを認識しなければなりません。

米国の標準的なMBAプログラムは、大卒後平均5年程度の社会人を2年間、大学にフルタイムで引き取り、教育をし、社会に還流するものである。米国では、エリートビジネスパーソンのキャリアパスの一部として、企業も社会もその重要性を認知し、巨大な教育資源が投下され、規模の経済を生かした形で効率的に運用されている。Harvard Business SchoolとかWharton Schoolは、それぞれ、年間700名以上のビジネスエリートを世に送り出している。一方、神戸大のMBAプログラムは、Executive MBAプログラムとよばれるものである。これは、大卒後平均12年程度の企業、また、それぞれの専門職で既に活躍している社会人に、フルタイムで働きながら、パートタイムでMBA教育を受講してもらうというものである。米国の多くのビジネススクールでは、標準的なMBAに加えて、毎年50-100名程度を受け入れている。小生は、University of Texas at AustinとWharton School のExecutive MBAプログラムでも教えたが、その学生達のプロフィールは神戸大のMBAプログラムのものと非常に似たものとなっている。問題意識、インテリジェンス、リスポンス等も、私が教えていて、非常に近いと感じる。テキサス大では、オースティンのIBM, Dell等のハイテク企業で、また、ヒューストンの重化学企業等で重要な役割を担っている方々がこのプログラムに参加する。神戸大でもしかりである。Executive MBAプログラムのチャレンジは、フルタイムの仕事とフルタイムの内容を持つMBAプログラムをどちらも妥協せずに両立させることにある。これは、神戸大でも、テキサス大でも、Wharton Schoolでもまったく同じで、学生さんには、まさに離れ業が要求されるのであり、このオリエンテーションがその一助になれば、幸いである。

学ぶというプロセスでは、頭を空にして、少なくとも一旦、得体の知れない概念を受け入れる必要がある。フルタイムMBAでは、仕事から完全に離脱するので、その作業は比較的容易である。働きながら学ぶMBAは、頭を半分くらい空にして授業に望むという微妙な作業をこなす必要がある。講義で、空の方の半分に新しい概念を受け入れ、プロジェクト方式では、直面する経営問題で詰まっている方の半分と新しい概念の方の半分をコネクトすることになる。そうすることにより、働きながら学ぶことをハンデキャップとせず、最大限いかすようにする。これを実現するため、神戸大のプロジェクト方式では、4月1日から、講義のかたわら、プロジェクト実習を始め、8月には、プロジェクト研究、そして、翌年の前期には、専門職学位論文の作成へとつなぐカリキュラムになっている。

本年度のプロジェクト実習(ミニプロ)は「戦略不全」の研究で有名な三品教授が担当します。三品教授はハーバードビジネススクールで6年間教えられた、ディスカッション授業のマスターであります。米国のビジネススクールでは、教官のTeaching skillをcontent, delivery, style, techniques, enthusiasm等の基準で評価しますが、このオリエンテーションでもその卓越さの一端を垣間見たように思います。今年の17組の5名からなるグループには、「Revitalization-歴史と伝統が足枷となっている事業の再生」という課題が与えられました。各グループは、この4ヶ月の間に、実際の企業事例を見出し、分析するという課題に取り組むことになります。ミニプロの詳細については、パワーポイント資料をPDFファイルでご覧ください。

8月には、ミニプロがプロジェクト研究へと引き継がれます。本年度は、5名の教員グループで担当します。財務会計・国際会計の専門で、知的資源の研究にも造詣が深い古賀教授、マーケティング・中国流通の大家の教授、人的資源管理研究の専門家の上林教授、バリバリのマーケティング研究者の栗木助教授、それから、サプライチェーン・マネジメントの研究者である小生というスタッフでのぞみます。各人、自分の研究分野については、いささかのこだわりがありますが、研究指導に関しては、守備範囲は広いと自負しています。プロジェクト研究は、ゼミナールを構成し、個人研究として発展していき、最終的には専門職学位論文の作成につながります。このオリエンテーションでは、各人の研究・教育に対するスタンスが述べられました。

オリエンテーションの中核となる修学ガイダンスは、本年度のMBA教務委員である小生が頼りないので、昨年度のMBA教務委員である高嶋教授に行っていただきました。当日使いましたパワーポイント資料をPDFファイルでご覧ください。また、本年度から、Web入力となる履修手続きについてのガイダンスは、末廣教授にお願いしました。

神戸大のMBAプログラムでは、講義とプロジェクトのみでなく、様々な教育・研究の機会が提供されています。現代経営学研究所の理事である、平野教授より、研究所主催のワークショップ、シンポジウム、会誌の『ビジネス・インサイト』についての紹介がありました。先端の企業プラクティスが、神戸大学の教員を中心として、これらの活動を通して、広くビジネスコミュニティーに発信されています。さらに、英国のExecutive MBA programの雄であるクランフィールド大学との共同プログラムのイギリス・日本産業事情特殊研究の履修ガイドが,海外交流事業担当の波田講師よりなされました。両校の学生が約1週間、相互訪問し合うというものです。この交流の詳細については、昨年度参加した在学生の諸井英徳氏より具体的な説明がありました。昨年度は、ホンダUK、ジレット, BP等の英国企業を訪問し、そのボードルームで役員によるプレゼンテーションを聞き、クランフィールド大では、相手側の学生とともに向こうの有名教授の授業に参加し、自身も周到に準備したプレゼンテーションを行ったこと、また、主客を交代して、同じ様なことを日本で行ったこと、インフォーマルな交流を楽しんだこと等の経験談が語られました。

MBAの学生さんのパワーポイントプレゼンテーションは、やけにリアルで説得力があります。諸井氏に加えて、オリエンテーションでは恒例となってきた、卒業生による新入生のガイダンスで、この会を締めくくりました。やや硬派のプレゼンをするということで、直近の卒業生の下西弘二氏のお話を伺いました。会社では、神戸大のMBAプログラムで学んだことを見込まれ、開発・事業戦略の立案の仕事を担当するようになったとのことです。在学中にこなした膨大な数と量のレポートを実際に提示し、これらをいかにグループでこなしていったか。タイムマネジメントをどのようにするのか。ここのMBAプログラムでは、いい加減なグループワークの言い訳に仕事は使えないこととか。読め、書け、絞りだせ!とか。グループワークについての檄がとびました。かなりな迫力で、きついということが、ひしひしと伝わってきました。きっと計算通りだったと思うのですが、二人目の山本守道氏は、やや軟派のプレゼンを用意されていました。おもしろ編という、感性に訴えるものでした。このプログラムは自分のちっぽけさと他人のすごさを認めることから始まるというオープニングで、プログラムの最初から最後までを時系列的に並べられた実際の写真を通して、学生の硬い表情がいつどのように和らぎ、人間的な成長をとげ、固い仲間意識が形成されたかというストーリー・ラインだったと思います。チームワークで大変なことに立ち向かい、非常に実りある成果を勝ち取られたということが伝わってきました。米国人は個人主義的だとか思われているようですが、実は、チームワークを重視します。このようなプログラムで、助け合って、達成し、成長していくことの喜びは共通なようです。

4時間半の盛りだくさんのオリエンテーションでした。このホームページでも、いろいろな形で、このプログラムについて情報発信しているのですが、実際に在学生、卒業生のお話を聞くと、新入生の皆様の間に、これから先への期待と不安が一気に膨れ上がっていったような気がします。この後、さらに、ウェルカム・パーティを開催したのですが、「早く帰って、4月1日の三品先生の授業の準備をしよう。」という雰囲気が漂っていました。テキサス大学でも、オリエンテーションを真剣に受け止めており、boot camp ということで、学期の始まる前、ゴルフ場のカントリークラブの研修所を借りきり、一週間新入生を缶詰にしてとり行っていました。神戸大のものよりは、少し、リッチな雰囲気でしたが、実りはあるが、かなりきついということを最初からきっちりわかっていただくという趣旨には変わりはありませんでした。

Executive MBAプログラムは、学生と教員・スタッフがco-produceするものであります。授業、プロジェクト、諸活動を通じて、この85名の社会人学生、教員・スタッフが協働で無事に成し遂げることを願ってやみません。

 

 
【式次第】   2006MBA_program.pdf(80KB)
【資料】   修学ガイダンス 2006MBA_guidance.pdf(116KB)
 
 
(文責 松尾博文)