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研究スタッフが選ぶ、オススメ図書

事業創生戦略講座 教授 加登 豊
 

神戸大学経営学研究科の教員は、大学・大学院での研究・教育はもとより、研究・教育を通じて獲得した知見を活用し、広く社会に貢献する諸活動に取り組んでいます。そのうちのひとつに、企業幹部を対象とした社内教育プログラムの作成指導を行ったり、講師として産学交流を行う諸活動もあります。この種の活動を通じて、研究も進展しますし、最新理論の実践適用もはかることができるのです。

ここで紹介する書籍は、私がある企業からの依頼で作成した10日間(オリエンテーション1日、3回の2泊3日の宿泊研修で合計10日間)の「経営戦略コース」で使用しているものです。全研修を通じて読んでいただく書籍の数は、約半年間で15冊ほど。本学のMBAコース(1年半での修了がモデルコース)では、きっと50冊をはるかに超える本を読んでもらいますから、ひと月に2冊はそれほどの負担になるとは思いませんが、受講生の方々は、多忙な仕事の合間に読むのですから、大変です。「そういえば、雑誌や小説・随筆など以外の仕事関連の本を読むのは、何年ぶりだろう」といわれる受講生も少なくありません。欧米の経営幹部は、おどろくほどたくさんの本を読むことをご存知ですか。負けていられませんね。
この研修の中で、「会計と経営戦略」と題する半日間のセッションで用いている書籍を簡単な解説をつけて紹介します。なお、「会計と経営戦略」のセッションでは、通常は大多数の方にあまりなじみがない管理会計が、いかに経営戦略と深いつながりを持つかを知っていただくこと、そして、管理会計領域における経営戦略に関連した考え方や技法を学び、その実践能力を涵養することを目的としています。

本来なら、この「経営戦略」研修の内容をご紹介すべきところですが、ある程度の情報は、私のホームページ(http://kato-lab.jp/) からも情報入手が可能ですので、ご興味のある方は、ぜひアクセスしてください。

そうそう、最後に一言。この一冊を読めば、それですべてがわかるなどという本はめったにありません。また、本屋さんに並んでいる本の大多数は、ごみ(ジャンク)であることも知っておいたほうがよいでしょう(当たりは100冊に1冊あるかどうか程度だと思ってください)。ここに紹介した図書の内容についてさらに深く知り、学んだ知識をただしく運用するには、関連図書や論文などからの大量の情報が必要なのです。この欄では、より深く学び、実践に知識を活かすための「入り口」をお示ししたにすぎません。インターネットで検索した情報だけで意思決定をするなどというおろかなことは決してしてはなりません。先人の偉大な知恵を経営に活かすことはとても重要なことなのです。

 
 

三矢裕・谷武幸・加護野忠男著『アメーバ経営が会社を変える―やる気を引き出す小集団部門別採算制度 』ダイヤモンド社、1999年。

(寸評) 京セラで考えだされたアメーバ経営。最大でも10名程度の小さな組織に利益責任を与え、自主的な活動を通じて、全社業績に貢献するマネジメントシステムの全容がわかります。とりわけ、時間当たり採算制度と呼ばれる計算の仕組みの果たす役割は重要です。企業実践に関する書籍は、あっと言う間に廃版になってしまいます。この本の入手も困難になりつつあります。「おもしろそうな経営実務書を見つけたら、すぐに購入する。」これは、よい本を手元においておくための秘訣のひとつです。なければ、国会図書館等蔵書が豊富な図書館や大学の図書館などから借り出せばいいでしょう。


 

金井壽宏(監訳)・大川修二(翻訳)・J.ボイエット、J,ボイエット著『経営革命大全―世界をリードする79人のビジネス思想』 日経ビジネス人文庫、2002年。

(寸評) 経営学の研究系譜が秀逸な翻訳で読める入門書。管理会計に関しても、バランス・スコアカードに関する詳細な説明があります。品質は高いが業績は上がらないと悩んでいる方、環境配慮をしながら、開発のスピードを上げ、低コストを実現したいという場合などには、バランス・スコアカードの知識は大いに参考になります。また、市場占有率を高めると自然に業績は良くなるという「誤解」をしないためにも、バランス・スコアカードの知識は不可欠といえるでしょう。分厚いですが、最近文庫版で入手できるようになりました。経営関係の文庫や新書には、結構、数多くの良書があります。「本の値段はなぜこんなに高い」と不満がある方は、文庫や新書の良書を探されてはいかがでしょうか。


 

桜井通晴(翻訳)R.S.キャプラン、R.クーパー著『コスト戦略と業績管理の統合システム』ダイヤモンド社、1998年。

(寸評) 自社の原価構造を見てください。間接費の占めるウエイトが大きな企業は、原価計算から得られる情報は、とても歪んだものとなっています。このような問題を解決するために考案されたのが、活動基準原価計算(Activity-based Costing)です。また、ABC情報を活用するABMと呼ばれるマネジメント手法も経営戦略に大いに関連します。会計と経営戦略は無関連?いえ、決してそうではありません。「測定できないものは管理できない」。日本企業からも注目されている経営品質改善活動であるシックスシグマでも、このことは再三強調されているのです。ABC/ABMに関しては、たくさんの書籍が出版されています。また、本だけでなく、ビジネス誌や学術線専門雑誌にも、優れた論文が多い。ビジネスマンが学術論文を読まれることは少ないと思いますが、多くの本が、すでに書かれた論文をベースとして作成されるということを知っていれば、最新知識は、実は本からではなく、雑誌論文から得られるということがおわかりになるでしょう。


 

E.ゴールドラット著、三本木亮(翻訳)『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』ダイヤモンド社、2001年。

(寸評)システマティックにプロセスの問題を解決する手法として一躍有名になった「制約条件の理論」の基本的考え方を小説仕立てで紹介した本。同じ著者による『ザ・ゴール2―思考プロセス』ダイヤモンド社、2002年、そして、『チェンジ・ザ・ルール!』ダイヤモンド社、2002年もあわせて読むと良いでしょう。これら一連の「制約条件の理論」に関する書籍には問題が2つあります。まず、翻訳は最悪です。第二は、小説仕立てですが、小説としての出来はあまりよくありません。私として、ぜひ原典で読んでほしいと思います。会計の視点からは、「スループット」の考え方が面白い。「スループットってなに」と思われた方。まず、本を読んでください。

以下に示したのは、評者がこれまでに出版した本です。管理会計や原価計算の基礎テキストもありますので、用語等でわからないものがあれば、ぜひご参照ください。

寸評者の著書一覧
(寸評者の執筆論文一覧は、ホームページをご覧下さい)
 
  • 『経営パワー大全』(翻訳)、日本経済新聞社、2003年
     (金井壽宏との共同監訳)。
  • 『ケースブック コストマネジメント』新世社、2001年(李建との共著)。
  • 『管理会計入門』日経文庫、1999年。
  • 『原価計算の知識』日経文庫、1996年(山本浩二との共著)。
  • 『原価企画―戦略的コストマネジメント』日本経済新聞社、1993年。
  • 『管理会計研究の系譜』税務経理協会、1989年。
  • 『コストビヘイビアの分析技法』大阪府立大学経済研究叢書、1978年。
  • 『数理計画法の経営活用I II』新東洋出版社、1977年(門田安弘との共訳)。
 
(Copyright(c),2003 加登 豊)