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不正会計を考える

清水 泰洋

 過去に行われた会計処理に問題あるいは不正が判明し、先に公表された財務諸表が後日修正される事例が後を絶ちません。これが意図された不正である場合、不正会計として、時には刑事事件にも発展します。そして、このような財務諸表の訂正や不正の発覚は、結果的にそれを行った企業に高い代償の支払をもたらします。
 しかし、東芝、オリンパスのように、グローバルな活動を行う大企業であっても不正会計とは無縁でいられない時代であるのも事実です。特に、企業活動がグローバル化し、海外子会社を利用した経営が不可欠な時代において、本社からの統制が届きにくい子会社が不正会計を行うリスクは常に存在していると言っても良いでしょう。不正会計は非常に広範かつ複雑な問題で、簡単に語り尽くすことはできません。そこで、本稿では不正会計がなぜ行われるのか、という問題よりもむしろ、不正会計の結果に焦点を当て、いくつか書籍をご紹介します。

 ・宇澤亜弓『不正会計 早期発見の視点と実務対応』清文社 2012年 4000円+税
 本書の帯にある「不正会計は完全犯罪ではない!!」が、本書のキャッチフレーズにして、全体を貫くメッセージでしょう。本書は近年に生じた不正会計について、会計実務家の視点から詳細に検討しています。特筆すべきはケースの豊富さで、内容がテクニカル寄りであるため、会計に詳しくない人が読むにはやや難解な本でしょう。しかし、会計上の不正が行われると、その痕跡は財務諸表のどこかに現れ、時として人々の懐疑心を喚起することが理解できるでしょう。

 ・細野祐二『法廷会計学 VS 粉飾決算』日経BP社 2008年 2200円+税
 一人の公認会計士が、公表される財務諸表を基礎として、会社が行った疑わしい会計処理を追求したレポートをとりまとめた本です。現在では、取り上げられた会社の運命を知っていますが、結果がわかっていない段階でのリアルタイムの物語として読むことをオススメします。会計数値を証拠として推測・推論を積み重ねていく様は推理小説のような面白さを感じることができるでしょう。

 ・ジェイコブ・ソール(著)、村井章子(訳)『帳簿の世界史』文藝春秋 2015年 1950円+税
 企業が、あるいは政府が会計を誠実に行わなかった場合にどのような運命が待ち受けているかを、中世イタリアから21世紀のアメリカまで様々な歴史的事例を積み重ねて論じた本です。不正なあるいは不誠実な会計、あるいは誠実な会計の放棄が決して珍しいものではない一方で、その結末は破滅的であることが本書のメッセージでしょう。また、珍しくないアメリカの不正会計とそれへの対応のケーススタディとしては、洋書ですが各事例がコンパクトにまとめられているPaul M. Clikeman, Called to Account: Fourteen Financial Frauds that Shaped the American Accounting Profession, Routledge, 2009が良いでしょう。

Copyright © 2015, 清水 泰洋