イーロン・マスク 未来を創る男

『イーロン・マスク 未来を創る男』
著者:アシュリー・バンス(斎藤英一郎訳)講談社

尾崎弘之

スティーブ・ジョブズ亡き後のシリコン・バレーで最も影響力が大きい起業家は、著書で描かれているイーロン・マスクだという評価が根強い。彼は、電子決済のPayPal創業で成功し、現在は、電気自動車のテスラ・モーターズ、宇宙衛星のスペースX、太陽光発電のソーラーシティなどの経営を手掛ける、代表的なシリアル・アントレプレナーである。

シリコン・バレーは、インターネット、SNS、アプリ、ゲームなどのベンチャー企業花盛りだが、以前のアップルやグーグルのように、ライフスタイルを根本的に変えるインパクトが少なくなっているのが現状である。その点、マスクが手掛ける「火星移住」「車社会の変革」などは夢と驚きを与えてくれる。 マスクはマスコミのインタビューをあまり好まないとされるが、テクノロジー分野のジャーナリストとして著名な著者が、丹念な取材を重ねて本書を執筆している。「起業家の伝記物」によく見られる冗長さがなく、人物像とビジネスの描写がうまくバランスされて、非常に読み応えがある。

Copyright © 2016, 尾崎 弘之

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