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研究スタッフが選ぶ、オススメ図書

ビッグデータ

古澄英男

昨年3月29日、米国政府はいわゆる“ビッグデータ”の戦略的利活用を目的とした「ビッグデータ研究・発展イニシアティブ(Big Data Research and Development Initiative)」を発表しました。このイニシアティブでは(1) 膨大なデータの収集、管理、分析、共有に必要な最先端中核技術の発展を促すこと、(2)その技術を科学や工学分野における発見、国家安全保障の強化、教育に役立てること、(3)ビッグデータ技術分野での人材を育成することが柱となっています。また、同イニシアティブには国立科学財団、国立衛生研究所、国防総省など6機関が参加し、総額2億ドル以上の資金が投じられるようです。我が国でもビッグデータに対する関心が産官学において急速に高まっています。そこで今回の「オススメ図書」では、

 城田真琴『ビッグデータの衝撃─巨大なデータが戦略を決める』東洋経済新報社、2012年6月

を紹介したいと思います。

本書では、ビッグデータとは何か?から始まり、ビッグデータの技術的背景、なぜ今ビッグデータなのか、ビッグデータの現状、マイナス点、ビッグデータの今後などについてわかりやすく解説しています。ビッグデータの技術的背景など文系の人間には若干難しい箇所もありますが、そんな時には読み飛ばして第3章と第4章だけでも読んでください。これらの章では、「ビッグデータを武器にする企業」としてイーベイ、ジンガ、セントリカ、カタリナマーケティング(海外企業)、コマツ、リクルート、グリー、マクドナルド(国内企業)を取り上げ、具体的な事例を数多く紹介しています。これらの事例からでも、ビッグデータに関する現在の動きや今後の方向性を十分感じることができると思います。

個人的に興味を持ったのは第8章「ビッグデータ時代への備え」です。ビッグデータを扱うスキルをもつ人材を“データサイエンティスト”と呼びますが、このデータサイエンティストにはコンピュータサイエンスなど様々なスキルや資質が要求されます。本書では例として、フェイスブックとツイッターのデータサイエンティストに対する求人票の内容が示されており、見てもらえればわかるのですが、こうした企業が要求する条件を満たすような人材は日本にいるの?と思ってしまいます。また、ビッグデータの活用において、最後に課題となるのは、データ分析の結果えられた洞察を的確な意思決定や迅速な行動に結びつけられる組織体制・企業風土だという著者の指摘にも耳を傾ける必要があると思います。

最後に、本書と併せて同じ著者による

 城田真琴『クラウドの衝撃─IT史上最大の創造的破壊が始まった』東洋経済新報社、2009年2月

を併せて読むと、ビッグデータの理解がいっそう深まると思います。また、この本の副題から

 山形浩生(訳)『その数字が戦略を決める』文藝春秋、2007年11月

を思い出しました。この本にも(初期の)ビッグデータの利用に関する事例が多く紹介されていますので、ご参考までに。

Copyright © 2013, 古澄英男