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研究スタッフが選ぶ、オススメ図書

MOT(技術経営)の教科書

原拓志

今回、私のオススメ図書は自分の専門であるMOTの教科書です。MOT (Management of Technology)に関する図書は日本語でも最近は多く出版されていますが、「グローバル化」が喧伝されるなか、たとえば大学を出た読者であれば、少なくとも英語を8年以上は勉強してきたはずなので、ここで、モトをとらなければ損ですので、英語の本を紹介しようと思います。

実は、この執筆にあたって、編集サイドからは、図書の選択基準の上位2点は、(1)一般書店で比較的容易に入手できる、(2)あまり高価でない、ということで釘を刺されていました。私がこれから紹介する本は、まるで基準を満たしてないではないかと思われるかもしれませんが、(1)いまどきは洋書でもアマゾンなどで居ながらにして買える、(2)高価であるかないかは有用性と併せて考えるべきで、私の尺度によれば、大変良い本なので決して高価ではない(ただしペーパーバック版)、と「理論武装」したうえで、あえて下記3冊を選びました。

1. Tidd, J. and J. Bessant (2013), Managing Innovation, 5th edition, Chichester: Wiley.

これはスタンダードですが一貫性があって、著者がイギリスの研究者だからか、すこし理屈っぽい(ポジティブに言い換えると相当に思考された)ところが、私にとってはイチオシの教科書です。これの第2版については『イノベーションの経営学』(NTT出版, 2004年)として邦訳書がありますが、第2版が出版されたのは2001年なので、私は、せっかくなら、この第5版をお勧めします。事例も新しいですし、認識モデルのパラダイムや事業システムあるいは戦略ストーリーに関わるポジションというものが枠組みに加えられていて、議論としても大いに進化しています。

2. Burgelman, R. A., C. M. Christensen and S. C. Wheelwright (2009), Strategic Management of Technology and Innovation, 5th edition, New York: McGraw-Hill.

『イノベーションのジレンマ』(翔泳社, 2001年)で有名なクリステンセン教授と、同様に大家であるバーゲルマン教授、ウィールライト教授の共編著ということでMOTの王道ともいえる教科書です。ただし、教材として使われることが前提で、論文と事例を集めたものなので、短いガイドは各パートにありますが、独学で読み進めるのは少し難しいかもしれません。とはいえ、MOTの必読論文の原典に触れることができますし、ケースからはビジネススクールの雰囲気が伝わります。なお、本書の第4版(2004年)には、邦訳書『技術とイノベーションの戦略的マネジメント』(翔泳社, 2007年)があり、比較的新しいので、それも良い選択肢です。

3. MacKenzie, D. and J. Wajcman (1999), The Social Shaping of Technology, 2nd edition, Buckingham: Open University Press.

最後は、狭い意味でのMOTの教科書ではなく、むしろ、技術社会学の教科書です。しかも、「技術の社会的形成」という特定の視点から編集された抜粋文献集です。各パートにガイドが付いていますから、どういう視点から各文献が抜粋されたかは読めば分かります。そもそも、なぜ本書をお勧めするのか。上に紹介した2冊はビジネスの視点でMOTを論じています。ビジネスは刻々変化していきますが、技術と社会との相互形成プロセスは、ずっと歴史を重ねてきています。今のMOTがやっていることは、その一部に過ぎません。今後のMOTを考えるためには、技術と社会との相互形成についての大局観が必要です。それを得るための優れた一助となると思いリストに加えました。

Copyright © 2013, 原拓志