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マイ・フェバリット・関係消費・情創生活
奥西 利勝

今回、消費低迷をブレークスルーするマーケティング戦略のキーワードとしてプレゼンテーションするのは、「マイ・フェバリット(私のお気に入り)」「関係消費」「情創生活」の3つである。

小泉純一郎の選曲によるエルビス・プレスリーのCDが、死後24周年を迎えてチャリティ・アルバムとして制作された。「音楽はクラッシックからロックまで手当たり次第何でも聴くけど、エルビスは昔から大好き」という小泉の選曲はさすがで、ロックン・ローラーとしての代表曲は除外し、今までのイメージとは異なったエルビスの魅力に溢れたアルバムに仕上げられている。

このアルバムのタイトルは、「マイ・フェバリット・エルビス・ソングス」である。

現在の消費低迷には根深いものがある。雇用や所得や年金やテロや金融危機などの不安スパイラルの濃霧の中で、ひたすら身を縮めている。固く締められたサイフを開かせるには、企業は顧客の一人一人に対して「マイ・フェバリット(私のお気に入り)」となる商品やサービスを提供する以外に手段がない。「マイ・フェバリット」だけには、顧客はサイフをゆるめてくれる。カスタマイズド・マーケティングとかワン・ツー・ワン・マーケティングとかは、この「マイ・フェバリット」の作戦にほかならない。消費低迷突破の第1のキーワードは「マイ・フェバリット」である。

先の小泉純一郎の選曲によるCDアルバムの企画が、エルビス・プレスリー・ファン・クラブによって推進されたという事情に注目したい。ファン・クラブは、ひとつの「関係」である。

モノ的な満足より内面的な満足が重視されるようになり、より深いレベルでの「関係」づくりが求められている。これまでの地縁・血縁・学縁・職縁とちがった、生き甲斐・趣味・スポーツ・ライフワーク等を中心とした新しい人間的な「関係」が志向される。ファン・クラブもそのひとつである。個の物質的量的充足から個をめぐる「関係」の質的充足へという流れが鮮明になっている。

新しい消費形態として、また、これからの有望な消費形態として「関係消費」を、第2のキーワードとしたい。「関係消費」とは、各人がイキイキと、はりのある生活をおくるための「関係」を創造する消費である。自分と家族の関係、自分と外部の集団との関係、自分と家族をとりまく環境との関係等のバランスをとり、それぞれの関係を最適値に導くことが重要となる。家族や仲間との人間関係の円滑化を図る「関係消費」は拡大している。身近な人や外部との関係づくりや関係演出を最適にする商品やサービスの選択・利用によって、自分自身の人生の価値を高める傾向が強まっている。

「関係」は、コミュニケーションであり、情報の上手なやりとりである。最後に第3
のキーワード「情創生活」を紹介したい。各種の生活費の分析や予測をみると、情報生活費の伸びが高いことが共通している。IT革命の進展によって家庭内にも本格的マルチメディア時代が到来し、情報生活費が家計支出のなかで大きなウエイトを占めるようになる。21世紀の生活は情報抜きには成立しない。情報利用の高度化・多様化によって、これまでのモノ―衣食住―を中心とした生活から、情報を核とした生活へと、生活の再編が起こる。情報が生活を創る、すなわち「情創生活」の時代を迎える。

「情創生活」というキーワードは、@情報を活用し創造的な生活をおくること、A情報を自在に駆使することによって「情操」をより豊かにすること、Bよりアッパーな(「上層」の)暮らしを実現すること、という3つの意味を持っている。

ところで、今回プレゼンテーションした3つのキーワードは、最近新しく作られたものではない。電通マーケティング局に私がいた時、仲間が開発し提唱したものである。しかし、この「マイ・フェバリット」「関係消費」「情創生活」は、今も役に立つ。というよりは、今こそ必要なキーワード、今こそパワーを発揮するキーワードである、と強調したい。

 
Copyright©, 2003奥西利勝
 
この「ビジネス・キーワード」は2002年1月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。