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組織文化はマネジメント可能か?
坂下昭宣

組織文化のマネジメント可能性については、2つの対立した主張が並存している。この問題は未だに決着がついていないにも関わらず、一部の性急な経営学は問題をプラグマチックに片付けようとした。以下に2つの対立する主張を紹介して、この問題を考える糸口を提示したい。

社会学の機能主義に依拠した機能主義的組織文化論は、1980年代初頭に「強い文化」論として誕生した。強い文化とは、均質的、一元的な文化である。「強い文化」論は、均質的、一元的な文化が組織の高業績をもたらし、それは競争優位の源泉になると主張した。また、「強い文化」論は企業文化が競争優位の手段としてマネジメント可能だと主張した。こうして、企業文化を経営管理の一手法と見なす「組織文化マネジメント論」が生まれるに至った。ピーターズ&ウォーターマンやディール&ケネディがその急先鋒であった。彼等の著作は実務界に多大なインパクトを与え、文化開発プログラムや文化変革プログラムを実践する会社が続出した。これらの組織文化マネジメント論は「企業文化マネジメント」と呼ばれる。

企業文化マネジメントは、組織文化は一定の機能を果たすが、それは文化が特定の市場や技術に「適合」している場合に限られると言う。そして、もしもこうした適合が達成されていなければ、組織は文化を変革するのだと言う。したがって、このアプローチは機能主義が生み出したコンティンジェンシー理論のアプローチだと言える。こうしたアプローチは、やや非難の意味を込めて「文化エンジニアリング」とも呼ばれる。

これに対して、現象学的社会学やエスノメソドロジーやシンボリック相互作用論といった解釈主義社会学に依拠した文化論が解釈主義的組織文化論である。解釈主義的組織文化論は一般に、組織文化のマネジメント可能性については否定的である。その主張は、「・・・文化はマネジできない。それは創発的に生まれるものである。リーダーは文化を創らない。文化の成員が文化を創るのである。・・・」というものである。要するにこの主張は、組織文化のマネジメント不可能性の根拠を、「文化の創発性」に求めるものである。

しかしその中で、「シンボリック・マネジメント」と呼ばれる方法は解釈主義に根ざしながらも、組織文化のマネジメント可能性については肯定的な意見を持っている。シンボリック・マネジメントは均質的、一元的な組織文化の存在を必ずしも前提としない。マネジメントの対象となるのは、組織成員の意味解釈過程や意味構成過程である。シンボリック・マネジメントはそれを、さまざまなシンボルの操作を通じて行う。言語やシンボリズムや儀礼・儀式といったシンボルを操作して成員の意味解釈過程や意味構成過程に影響を与え、価値観や信念やパラダイムといった意味の体系が成員に共有されるようにする、これがシンボリック・マネジメントである。しかしこの方法にしても、解釈主義者一般が主張した上述の「文化の創発性」の難問を完全に解決しているわけではない。

以上によってわかるように、組織文化のマネジメント可能性の問題は未だに決着のついていない問題である。それは一部の経営学のように性急に効能を求めるのではなく、今後も理論的研究やリサーチの地道な積み重ねを通じて解決していかなければならない問題なのである。

 
Copyright©, 2003坂下昭宣
 
この「ビジネス・キーワード」は2001年11月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。