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延期と投機
高嶋 克義

「延期と投機」と言われても、何のことか分からない方が多いと思います。この用語は、最近になって主にマーケティング研究者が使うようになった用語です。「延期」とは実需対応や生産・流通の同期化のような意味で、「投機」は予測や計画による仮需対応を意味します。「延期と投機」という考え方自体は、1960年代からありましたが、近年の多頻度小口配送、JIT、SPAなどの流通や生産の革新が、延期化現象として説明されるようになって、よく使われるようになりました。なぜ実需対応や同期化を延期と呼ぶのかと言えば、顧客の需要や注文が発生する時点の近くまで、配送や生産を遅らせるからです。そうすることで顧客の望むものを欲しいだけ生産・流通させて、在庫を圧縮し、効率化を図ったり、リスクを小さくするのが、延期化の基本発想となっています。それに対して顧客の需要や注文に先んじて計画的に生産・流通させる(その意味で投機)ことで、大量で計画的な生産・流通によるコスト・ダウンを狙うのが、投機化の考え方です。

このように対比させると分かるように、かつては投機化が追求されてきました。メーカーは広告やチャネルを通じて消費者の需要を刺激することで、先行的な大量生産・流通に見合う需要を創り出すことで、うまくまわっていたと言えます。ところが今やそのようなことは通じず、在庫リスクが大きくなってしまったために、さまざまな延期化の革新が登場してきたのです。

さらに最近では、延期化の中の投機化現象が注目を集めています。それは実需対応の延期化だけでは、どうしても生産量や流通量が縮小均衡に陥るために、どこかで少し強気な予測による投機化が必要となってきたからです。セブン−イレブンが、さまざまな機会において品切れによる販売機会の損失への注意を喚起して、やや強気の発注を推奨したり、ユニクロが延期的なSPAを行いながら、フリースやTシャツなどで投機的なマーケティング行動を仕掛けることは、その典型と言えます。

 
Copyright©, 2003高嶋克義
 
この「ビジネス・キーワード」は2000年12月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。