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選別的情報開示(selective disclosure)
後藤 雅敏

英語で株式のことを「stock」というが、「equity」や「share」も同様に株式のことを指している。ただ、「equity」には「公平」という意味もあるし、「share」には「共有する」という意味もある。企業が獲得した利益は普通株主に保有株数に応じて「公平」に配当され、また、残余財産は保有株数に応じて分配されることで「共有」されている。このような利益や資産に対する「公平」さや「共有」の権利は当然であるが、現在ではさらに、企業が公表する情報も「公平」に「共有」されなければならない時代となっている。しかも、情報は保有株数割合に関係なく、株主間ではすべての情報が公平に共有されるべきなのである。企業内部にいる株主(たとえば、経営者)と外部の株主の間で情報格差が生ずることは避けられないが、それはインサイダー取引規制によって、外部株主の不利益が回避される制度になっている。

昨年の12月15日にSECのArthur Levitt氏は、経営者がアナリストや機関投資家、等の特別の影響力をもったグループに対して優先的に情報を公開する行為をgamesmanship(反則すれすれの行為)として非難し、「重要な情報を一部の利害関係者にのみ優先的に公表するという実務が、一般的な実務となってしまっているが、それは一般の投資家に害を及ぼし、基本原則たる公正性(fairness)を損なっている。このような実務はアナリストに有利に働く可能性があり、われわれの市場に対する投資家の信頼を失う。われわれの市場が成功したのはfree and open disclosureの原則によるもので、こうした囁き(whisper)はその原則にとって屈辱である。」と明言した。訴訟社会の米国では利益予測数値についても経営者は、アナリストからの質問に対して、「in the ballpark(誤差が5%以内であることを意味する符丁)」と答えるなどして慎重であったのは既に過去のものとなっていたのである。

従来、アナリストや機関投資家に優先的に情報を公表するのは、難解な情報を情報仲介者として一般投資家にも解り易く加工し伝達する機能を活かしたものだと説明されてきた。こうした点についても、情報処理能力が高いということでは詳細な情報を優先的に公表することの理由にならないとした。むしろ、情報を公表しないことで公平性が保たれるべきなのである。IR活動と称して一部の金融機関や大株主だけを招待し、公表されていない情報をスモールミーティングでこっそり教えるのは、市場の公平性を著しく害している。IR活動の目的が株主との関係を有効に保つことであるならば、優先的に情報を得られない個人投資家は自己の不利益を認識して市場から撤退してしまい、それはIR活動にはなっていない。

 
Copyright©, 2003後藤雅敏
 
この「ビジネス・キーワード」は2000年11月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。