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リードユーザー、オピニオン・リーダー、大口ユーザー
原田勉

企業活動のなかで最も重要なものは、顧客の需要を喚起しそれを充足していくことである。こうした顧客の需要に対応していくためには、顧客を一般的に捉えるのではなく、需要形成に大きな影響を与える人達を細かく把握していくことが求められる。具体的には、自社にとってのリードユーザー、オピニオン・リーダー、大口ユーザーを明確に認識し、かれらの購買にかかわる行動に適切に対処していくことが鍵となる。

リードユーザーとは先端的な提案型ユーザーのことであり、産業財の分野では、製品イノベーションのかなりの部分がリードユーザーとの相互作用によって生じることがしばしば告されている。産業財の場合、ユーザーは企業であり、サプライヤー以上に技術力をもっていることがある。かれらは購入した産業財を独自に改良して使用したり、厳しい要求をサプライヤーへと突きつけてくる。こうしたことが新たなイノベーションの源泉となるのである。

消費財の分野でもこのリードユーザーの役割は増大しつつある。もちろん消費財の場合、個々のユーザーは一般消費者であるためその情報をつかむことは難しい。しかし、消費者から寄せられる苦情から新製品開発へと結びついた例は数多く存在する。たとえば、文房具の通販メーカー、アスクルの袋詰めのインスタントコーヒーや足元暖房機などは顧客の苦情データのフィードバックを受けて開発されたものである。このように消費財分野といえどもリードユーザーから情報を獲得していくことが新製品・サービス開発にとって重要になりつつあるといえるだろう。オピニオン・リーダーとは既存の製品・サービスの「普及」において大きな影響力をもつ者のことであり、かれらは必ずしもその製品・サービスのユーザーとは限らない。たとえば、著名な自動車評論家の論評は一般ユーザーの新車購買動向に大きな影響を及ぼすものと思われるが、かれらは自分が論評する自動車すべてを購入しているわけではないだろう。こうしたオピニオン・リーダーが出現するのは、財・サービスに対する不確実性が存在し、その機能・品質に対して消費者独自で評価しにくいからである。このようなオピニオン・リーダーを意図的に創出し、製品販売を促進させようとする試みの1つが口コミ・マーケティングと呼ばれるものである。たとえば、鐘紡はコンビニで販売する化粧品「It・be」でこの手法を活用している。具体的には、「プチセブン」などターゲットとする10代女性向け雑誌に編集タイアップ広告を積極的に投入し、読者参加型企画を打ち出した。これによって企画に参加した読者の口コミによる販売促進を狙ったのである。あるいは、渋谷のファッション・ビル「渋谷109」で人気の婦人服専門店、エゴイストは、若い女性のファッションのお手本となるカリスマ店員を何人も生み出しブームを巻き起こしてきた。これは口コミ・マーケティングとは必ずしも呼べないが、自社内にオピニオン・リーダーを育成し、それを通じた販促を狙ったものである。このようにオピニオン・リーダーをいかにして活用していくのかが販促の上では重要な課題になるのである。

最後に、大口ユーザーとはその字のごとく自社の売上の多くを占めるユーザーのことである。一般に「7対3のルール」「8対2のルール」と呼ばれる経験則がある。これは顧客のうち3割ないしは2割の大口ユーザーが自社売上の7割または8割を占めている現象を指している。この経験則から引き出せる含意は、この2割、3割の大口ユーザーに対してはさらにきめ細かな顧客対応が求められるということである。多数の、しかし売上比率は低い小口ユーザーとは差別化されたサービスがなければ少数の大口ユーザーを引き止めることが難しくなりつつあるのかもしれない。

以上の説明からわかるように、リードユーザー、オピニオン・リーダー、大口ユーザーは、各々、異なった役割を果たしている。リードユーザーは、新製品・サービスの発掘、オピニオン・リーダーは既存製品・サービスの普及、大口ユーザーは既存製品・サービスの維持、において鍵となるプレーヤーである。これらのプレーヤーは一致していることもあるし、場合によっては別々のこともある。重要なのは、こうした役割を区別したうえで、その担い手は誰なのかを識別することである。真の顧客対応とはここから始まるのである。

 
Copyright©, 2003原田勉
 
この「ビジネス・キーワード」は2003年8月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。