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投資不動産の時価評価
古賀智敏

一般に投資不動産とは、賃貸収入や値上がり益等の獲得を主たる目的として保有する土地・建物等をいう。このような投資不動産には、自社所有の建物でオペレーティング・リースされているもの、あるいはオペレーティング・リース契約のもとで将来リースするために保有されている建物、長期キャピタル・ゲイン獲得のために保有される土地などが含まれる。これらは通常の販売目的で保有される不動産や生産活動のための自己使用を目的とした不動産とは経済的実質において異なる。前者は、生産・販売活動のために使用・保有される生産・販売財としての特性をもつのに対し、後者は、独立的かつ確定的なキャッシュ・フローの創出を意図した金融財に近い特性を持つ。

従来、投資不動産の評価アプローチとして、大きく取得原価アプローチと時価アプローチの2つがある。イギリス基準やニュージーランド基準等は時価ないしカレント・バリューを採るのに対し、国際会計基準第25号では、原価または時価の選択適用が採られてきた。同公開草案E64では、すべての投資不動産に対して公正価値(時価)で測定し、評価差額は当期の損益計算に算入すべきであるとの立場を採用したものの、最終基準第40号では「時価モデル」と「原価モデル」の選択適用を認める方向で決着した。このように、最終基準第40号では、時価と原価との選択適用を認める方向で一歩後退した感はあるものの、投資不動産について時価評価を基軸とすることは確かである。

投資不動産の時価会計は、企業、とくに不動産会社に対して企業会計の透明性を図り、業績評価を促進しようとするものである。企業会計の透明性の側面から、投資不動産会社は賃貸収入や値上がり益を含めたトータルの投資リターンの獲得を目指すものであり、したがって、不動産の評価損益は企業にとって重要な損益要素として発生時に企業の業績計算書に反映されるべきである。このように、投資不動産の時価会計は、価値変動という経済的事実は事実として忠実に財務報告上で反映しようとするものであり、企業経営者に対して利益数値のボラティリティを前提とした経営のあり方を迫るものといえよう。

海外では、既にイギリス、ニュージーランド等において、投資不動産の時価会計が制度化されてきた。とくにイギリスの投資不動産会計モデルでは、時価設定にあたって鑑定人報告書を添付することによって、時価の信頼性について情報利用者の理解を図ろうとするものであり、また、「総認識利得・損失計算書」という業績計算書の導入は、経営者の業績評価の側面から大いに参考になるであろう。このような投資不動産をめぐる国際会計基準やイギリス基準等の動向を踏まえ、わが国でも、投資不動産のための基準の整備が早急に望まれるところである。

 
Copyright©, 2003古賀智敏
 
この「ビジネス・キーワード」は2000年4月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。