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グローバル・マーケティング
黄りん

グローバル・マーケティングとは、グローバル・ネットワークにおいて企業が多様な市場環境に適応し、世界規模の効率性およびイノベーションの推進と普及を追求するとともに、競争優位性を創造し、維持する行動を指す。

取引を支える情報通信とロジスティックスの技術革新によって世界市場が変化し、従来の事業システムの有効性は急速に色褪せている。顧客の欲求が多様化し、絶えず変化するとともに、市場は現実に世界規模に広がっている。また、個々の企業のネットワークも世界規模に広がり、本国市場でも海外市場でも競争相手と直接対決するというグローバル競争の局面が現われた。このような変化は以下のような新しい課題を提起している。

(1)世界に分散する調達、研究開発、生産や販売などの付加価値活動をいかに統合させるのか。
(2)海外子会社やパートナーの戦略的な位置づけをいかに設定するのか。
(3)製品、価格、ブランドや営業などのマーケティング・プログラム、また、戦略策定や成果の評価などのマーケティング・プロセスをどの程度標準化するのか。
(4)グローバルな企業ネットワークにおける学習とイノベーションをいかに促進し、その能力と成果をいかに普及させるのか。

グローバル競争のもとでは、世界規模の効率性だけを追求する戦略の有効性は失われつつある。多国籍企業の優位性は経営資源、企業能力、市場機会のグローバルな利用にあり、この優位性を発揮するためには、競争力の基盤を共有できるような事業システムの確立がとくに重要である。以下では、事業システムの有効性を高めるためのポイントについて説明する。

第一事業システムの柔軟性とグローバル・ネットワークの伸縮自在性

世界に分散している経営資源、能力、製品と市場から競争優位を引き出し、競争相手と市場環境の変化に対応するためには、事業システムの柔軟性と企業ネットワークの伸縮自在性が重要である。柔軟性はいまグローバル競争力の主な基盤の一つになっている。

柔軟性はまず統合された事業システムから生まれる。統合の経済性とは、最終顧客に到達するまでの多種多様な企業活動を共通目標の実現に向けて統合させることによって生じる効果である。これらの企業活動には、取引形態の選択や取引相手との関係などの商取引の流れ、原材料、部品・半製品、完成品などのモノの流れ、資金調達や資金配分などのカネの流れ、そして生のデータ、技術、知識やノウハウなどの情報の流れがある。統合の経済性はこの四つの流れをうまく調整することによって実現する。事業システムの柔軟性を維持するためには、世界に分散している四つの流れの調整プロセスと活動展開を加速する必要がある。

オペレーションを迅速にすることによって流通在庫と売れ残りのロスを削減し、製品導入や事業展開の不確実性を減らし、学習やイノベーションのきっかけをつかむことができる。さらに、顧客の問題解決に迅速に対応することによって顧客にとっての価値を高め、競争優位を持続させる効果をもたらす。つまり、柔軟性とは、統合の経済性と速度の経済性を同時に追求することである。

世界市場の不確実性、複雑性および変化のスピードに対応するためには、グローバル・ネットワークの伸縮自在性も求められている。たとえば、競争相手同士の戦略的提携、ファブレス企業・委託生産メーカー・サード・パーティ・ロジスティックス(3PL)の組み合わせなどのように、企業のグローバル・ネットワークの伸縮自在性は市場リスクの低減、市場動向に合わせた新製品・サービスの開発、事業展開の俊敏さといった競争優位性を生み出す。

第二グローバル・マーケティング・イノベーション

世界のいたるところで生じる市場機会や技術変化に対しても敏感に反応でき、さらに新製品や新事業を生み出す革新能力およびその成果の活用能力はますます重要になってきている。グローバル・マーケティング・イノベーションとは、親会社や海外子会社によって生み出され、グローバル・ネットワークにおいて共通に利用される市場革新を指す。外資系企業を調査した結果、回答企業の70%がマーケティング・イノベーションの経験があると
答えている。そして、27%の企業は自分たちの開発した日本独自の新しいマーケティングを親会社や他の海外子会社に移転したことがあると答えている(『外資系企業』吉原英樹編著、同文館、pp.75-89を参照)。

グローバル・ネットワークにおいて、海外市場の戦略的重要性、現地市場への創造的適応の能力、現地市場ニーズや情報の感知能力や市場不確実性への対応能力などによって海外子会社の戦略的な役割を明確にする必要がある。海外子会社は親会社から与えられた戦略や移転された経営資源の実行者としてのみではなく、重要な戦略拠点あるいは経営資源の獲得者としての役割を担うようになってきている。世界市場の多様性、市場環境の異質性および競争の圧力はマーケティング・イノベーションを生み出すきっかけとなる。グローバル・ネットワークのどこかで蓄積された経営資源、開発されたシステムと市場革新の成果を双方向に移転しあうことは、グローバル・マーケティングの必要条件になっている。

第三市場機会に照らし合わせた企業活動の展開

グローバル・マーケティングの有効性は、標的として設定された顧客層、結合された異質な中核能力をもつ企業群、そして異なった事業システムをもつ競争企業の反応によって変わる。グローバル・マーケティングも、最終顧客からの発想が不可欠である。

特定の顧客層に対する価値の創造と向上は基本である。しかし、有効性を高めるためには、市場機会に関する情報を迅速に収集し、グローバル・ネットワークを通して共有化して事業システムの全体をすばやく調整することが肝心である。そして、市場機会に企業活動の展開方向を合わせて経営資源を集中化すること、さらに、マーケティング・ミックス(市場計画)を現地市場に創造的適応する必要がある一方で、マーケティング・プロセス(計画の策定と評価)を標準化することも重要である。

 
Copyright©, 2003黄りん
 
この「ビジネス・キーワード」は1999年2月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。