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モビリティ・マネジメント

三古展弘

皆さんは「モビリティ・マネジメント」という言葉をご存知ですか? モビリティ・マネジメントとは、「ひとり一人のモビリティ(移動)が、社会的にも個人的にも望ましい方向に自発的に変化することを促す、コミュニケーションを中心とした交通政策」と定義されます。ここでいう、「望ましい方向」とは、例えば、「過度な自動車利用から公共交通・自転車等を適切に利用する方向」を意味します。

自動車はいつでもどこへでも行くことができる大変便利な乗り物です。しかし、自動車利用にはメリットばかりが存在するわけではありません。自動車の過度な利用は、渋滞、環境問題、交通事故など、社会的にも個人的にも大きな負の側面をもたらします。自動車は必要かつ便利だから乗り続ける場合もありますが、そうではない場合にも乗り続けてしまうこともあるでしょう。今よりも少しだけ、無理のない範囲で、かしこく自動車を使うことで自動車利用を減らすことができるかもしれません。公共交通を利用したほうが便利な目的地へさえも自動車で出かける人は、公共交通を利用することで自動車利用を減らすことができるかもしれません。自動車を使う場合でも、複数の用事を一度に済ませれば、自動車の利用を減らすことができるかもしれません。同じ目的地へ複数の自動車で行かずに1台に同乗すれば、自動車の利用を減らすことができるかもしれません。モビリティ・マネジメントは、過度に自動車に依存した生活から、かしこく自動車と公共交通を利用する生活への変化を促す施策といえるでしょう。

モビリティ・マネジメントを行う主体は様々です。国、地方自治体、交通事業者、職場などが考えられます。自動車の過度な利用は、渋滞、環境問題、交通事故、公共交通の存続問題、職場の駐車場確保などそれぞれの主体にとって大きな問題です。このような主体がいくつかのきめ細かいコミュニケーション手法を使って自発的な行動変化を促しています。ここでは、アドヴァイス法と行動プラン法を紹介します。

アドヴァイス法では、公共交通利用に関するアドヴァイスを個人ごとに行うという、きめ細かい情報提供を行います。例えば、ある地区に居住している個人に対しては、最寄りのバス停の位置とそのバス停の時刻表を提供します。また、そのバス停から代表的な目的地へ向かうには、「どの系統で」、「どのくらいの所要時間で」、「どのくらいの運賃で」到達できるのかという情報を提供します。つまり、特定の個人に対してオーダーメードの公共交通情報を提供するということになります。このような方法は、バス停の存在も知らないような個人や、バスがあることは知っていてもそれを使うとどこへどのくらいの時間で行けるのかを知らない個人には、自動車の代わりにバスを使うというきっかけになるでしょう。

行動プラン法では、上述のようなアドヴァイス情報を提供した上で、その情報に基づいて具体的にどのように行動を変えればよいか、を検討してもらいます。例えば、通勤や通学、日常の買い物、休日のレジャー、などの場合について、自動車の代わりに他の交通手段を利用することができないかを検討してもらいます。通勤交通で自動車の代わりにバスを使うことができるかもしれないと考えた個人の行動プランは次のようなものになります。 「自動車で会社に行く代わりにバスで行くようにする。自宅を7:00に出て歩いてバス停まで行き、○○バス停で7:07のバスに乗る。△△バス停で7:25頃に降りて、歩いて会社に行くと7:30に到着する。」 これは、個人が実際に公共交通を使った場合の行動プランを立てる機会を提供するということで、より実行される可能性が高まると言えるでしょう。

実は、2008年2月現在で、神戸市バスの車内広告にも「モビリティ・マネジメント」が取り上げられています。モビリティ・マネジメントは全国に拡がっています。皆さんの身近なところでもモビリティ・マネジメントが行われているのかもしれません。

(注)本原稿の執筆にあたっては、「土木学会(2005):モビリティ・マネジメントの手引き」を参照させていただきました。

 
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