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ネット・コミュニティ・マーケティング

栗木契

インターネットの黎明期には、インターネットのマーケット(市場)としてのポテンシャルが強調されがちだった。このことは、マーケティングにおいても変わらない。「Webモール(インターネット商店街)さえ構築すれば、人は集まる」と考えられていたのである。アメリカより少し遅れてインターネットが普及し始めた日本でも、数年ほど前までは、こうしたインターネット観が根強く残っていたように思う。もし、このような市場万能主義の論理に誤りがなければ、コミュニティのような手間のかかる、面倒なものを運営する必要はなかったはずである。

しかし、これは、初期のインターネット・ビジネスの世界で語られた神話に過ぎなかったと、クリス・ウェリーは述べている。Webモールは、魔法の玉手箱ではない。多くの企業が直面したのは、「ただWebモールを構築するだけでは訪れる人はあまりいない」という現実だった。訪れる人のいないショッピング・モールに、商業上の価値はない。

北米のインターネットの専門家たちのなかでも、特にマーケティングに関わる人たちが、比較的早い時期に、コミュニティに関心を寄せるようになっていった理由を、ウェリーは以上のように述べている。現在では、過半の商業サイトが、何らかの「コミュニティ機能」(サイト運営者とユーザー、あるいはユーザー同士が、コミュニケーションを行うための場)を提供しているといわれる。

単に優れた製品やサービスを提供するだけでは、マーケティングは完成しない。この基本命題は、従来型のリアルのマーケティングの世界でも、インターネット上のマーケティングの世界でも変わりはないようである。ものが売れる仕組みを構築するためには、製品・サービスの魅力を継続的に高めたり、集客をはかったり、ブランドへの愛着を高めたり、買い手に製品・サービスの使用技術を行き渡らせたり、支払いの利便性を高めたりすることが必要である。たしかに、コミュニティ・サイトを構築すれば、これらの課題が一気に解決するわけではない(マーケティングは、そこまで単純ではない)。しかし、ネット・コミュニティをうまく活用すれば、いくつかの課題を改善するきっかけを掴むことができそうである(詳細は、石井・水越編『仮想経験のデザイン』有斐閣(7月発行)を参照して下さい)。

企業が、ネット・コミュニティをマーケティング・パフォーマンスの向上に活用しようとする際には、以下のような5つの基本類型がある。このような可能性の広がりが、企業のネット・コミュニティへの取り組みを多様なものとする。たとえば、企業が、コミュニティ・サイトの運営やスポンサーシップをどのような予算項目でどこまでサポートするかも、企業がネット・コミュニティを以下のどの類型で活用しようと考えるかによって異なることになる。
 
(1) ネット・コミュニティを、直接課金の対象とする。
会費や使用料金を徴収することで、企業は、コミュニティ・サイトから直接的な収益を得ることができる。

(2)ネット・コミュニティの集客性に着目する。
人の集まる場は、マーケティングの可能性の宝庫である。コミュニティ・サイトは、インターネット上の雑踏あるいは盛り場だといえるだろう。ネット・コミュニティには、インターネット・サイトの広告媒体、あるいは商業空間としてのポテンシャルを高める可能性がある。

(3)ネット・コミュニティのメッセージ性に注目する。
ネット・コミュニティのテーマや理念が、企業がマーケティングに活用したいと考えているイメージと一致することがある。このようなコミュニティ・サイトを後援することで、企業やブランドは、望ましい方向に向けてイメージを高めることができる。

(4)ネット・コミュニティは、顧客に製品情報を広める。
コミュニティ・サイトで交わされる製品やサービスにかかわる評価やアドバイス、そしてその情報ストックは、顧客が購買にあたって参照するユニークな情報源となる。

(5) ネット・コミュニティは、新製品開発の情報源となる。
上記のような顧客間の情報のやり取り、およびその情報ストックは、企業が、新製品・新サービスを開発しようとする際にも、貴重な情報源となる。

 
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