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企業の提携

波田芳治

2年前までの企業における実務経験から製造業の提携とはいかなるものかを、ご紹介します。特に、製造業の中でも重厚長大産業である鉄鋼業でのケースを実際の場面を通して、実務的な推移をご紹介しましょう。

日本の鉄鋼業界では新日鉄の誕生以降1990年代前半までは、久しく企業の提携や合併などは行われておりませんでしたが、日産自動車にゴーン社長が誕生した時点で、シェアと価格の競争による市場原理の作用する業界に変化しました。この結果として合従連合が促進され、原料および製品市場における価格決定リーダーシップを取り戻すべく、企業集団としての活動が2000年頃より活発に成されるようになりました。小職は、その時期にデュッセルドルフに駐在し、各企業集団の提携活動を実体験しました。

分けても、包括的な提携または技術提携と称するものは、その目的と実施内容において、かなり企業の戦略的な意向を反映しており、詳細には伺い知れない要素もあると推定しています。

ただし、経験上の判断にて、以下の内容の紹介は許されるであろうと判断しました。

1) 企業の包括提携では、マーケティングや製品開発から製造技術さらに製品販売に至るまでの、お互いの弱点を補強しあうことが可能なものはどれでも対象となる。
2) ちなみに A 社の例では、世界各地のリーダー的な鉄鋼会社に対して包括的提携を結んだ。その目的は、トヨタ、日産などとの将来にわたる製品納入の体制を確固たるものとするべく、各自動車会社が世界で同時に同一品質での鉄鋼製品(鋼板や棒鋼)を調達可能なように、製品の技術移転、開発の指針、品質管理基準の教示を実施し、さらに JIT などの製品の納入体制に対する要求事項とその対応を一から教え込むことである。
3) B 社においても、可能な対応として従来からの技術交流において表面処理鋼板など特定の技術分野での実績のある相手 X 企業に対して、包括的技術提携を申し入れし、締結寸前まで提携内容のつめをしていた。このころ、提携活動を通じて各社ともその当該のX社に対して技術提携の打診をしていたことが判明している。
4)

結果的に、 B 社は X 社との提携に至らず、 Y 社と提携した。これは、何を意味するのか。当時の情報網からの背景推定にて、以下のような理解をしている。

(1) A 社は、 X 社が B 社と技術提携すると、従来から交流により相当深く教示されてきたノウハウに属する技術が B 社に流出する。これへの歯止めと、 X 社がその地域でのオピニオンリーダー的な存在であり、今後の製品仕様の地域でのディファ クトスタンダード化と引き続きの公的標準化を図るに際してなど、企業活動上の有力なパートナーを得ることを戦略として据えた。
(2) 既に、 A 社は世界的なリーダーシップを持つ企業ではあるが、欧州やアジアの他国に巨大なライバルが台頭するに至り、むしろその合併により巨大化した欧州企業やアジアの新興企業とも連携を進め、トップリーグ企業群として、同じ世界戦略を共有していくつもりであると推定される。
(3) その結果として、冒頭に紹介した原料購入先や、製品納入先への発言力、価格決定力を決定的なものとすることを狙っているものと思われる。
5) 今後の課題は、一般消費者にとって有利な市場原理の働きが、このような企業活動を通じて確保されるかどうかであろう。このためには、さまざまな形での情報の透明性の確保が必要であろうと思われる。
 
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