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サーバント・リーダー
 
リーダーとは人びとを強力に引っ張るひとだ。そう思われがちだ。でも、肩書きや地位でフォロワーがついてきているだけなら、その場に、真のリーダーシップはない。課長から部長、さらにトップになるころには、「おれは偉い」と勘違いするひとがしばしば出てくる。また、そういうひとが倫理感のない決定をしてしまうこともある。非常に残念なことだ。

そのような奢り高ぶりを戒めるのに、もっともすぐれたものの見方は、サーバント・リーダーという考えだ。サーバントとは従者、召使いの意味だから、ふつうは指導者の意味で使われるリーダーとは逆の立場のように思われるはずだ。ここでは、サーバントを従者というより、尽くすひと、奉仕するひとと捉えたい。あえて、部下(フォロワー)に対してそういう意味でのサーバントとして接することがリーダーの基本的な姿勢となりうると主張した点に、この概念の提唱者であるロバート・グリーンリーフの慧眼がある。

リーダーシップは、リーダーたる人物に対して、大半のフォロワーがついていってもいい、それどころか喜んでついていく(willingly follow)ときに、リーダーとフォロワーの間に生まれるものだ。それは、リーダーの側にあるというよりも、よほどフォロワーの気持ちのなかに目覚めるものだと思ったほうがいい。実は、潜在的リーダーにリーダーシップ(このひとにだったらついていってもいいというクレジット)を与えるのは、フォロワーなのだ。

だとすれば、皆さんは、どのようなひとについていくだろうか。トム・ピーターズ・グループでリーダーシップ研修を担当するジェームズ・クーゼスたちは、ずばり「信頼」だと言った。信頼できないひとに、人びとはついていかない。それでは、どのようなひとに、いちばん信頼が感じられるだろうか。クーゼスたちの(形容詞のリストから、賞賛に値するリーダー「admired leader」を表す言葉を選ばせる)調査からは、誠実(honest)、前向き(forward-looking)、わくわくさせてくれる (inspiring)、有能(competent)というような言葉が上位にあがる。これらが全体として意味するものは、そのリーダーたる人物が信頼に値するということだ。

でも、その究極の試金石となる問いは、リーダーがフォロワーのために存在するのか、フォロワーがリーダーのために存在するのかという問いだ。そのことをグリーンリーフは知らせてくれた。このような考えは、理論というより思想であり哲学に近いが、リーダーシップをとるべきポジションに着く前に、学んでおきたいことだ。社長ならば、「わたしが社員のために存在するのか」、それとも「社員がわたしのために存在するのか」という問いだ。心ある経営者なら、前者だと答えるだろう。しかし、日々の実践において、社長には権限もあり、責任も大きいから、なぜついてこないのだ、という言葉とともに、「わたしのために動け」みたいなことについなってしまう。それでも、すぐれた戦略、倫理的に正しい道のりにむかって進めというならまだましだ。

でも、考えてみると、経営者にほんとうに信じる使命があり、その使命にむかって部下が邁進しようとしているなら、その部下に経営者の側が尽くす、奉仕するという発想があっていいはずだ。それは、使命のもとでなされる限り、高貴な行動であって、けっして冗談にも、サーバント・リーダーを「奴隷型リーダー」とか「召使い型リーダー」などと言ってはいけない。

自分たちのためを思ってくれるひと、その根っこに高い志や使命感のあるひとに、われわれはついていきたいと思う。どうせサーバント・リーダーになるなら、使命の名のもとにフォロワーに誇り高く尽くすひとになりたいものだ。

サーバント・リーダーについてもう少し詳しく知りたいひとは、グリーンリーフ自身が著した本には訳書がないが、つぎの文献もご覧ください。金井壽宏『組織を動かす最強のマネジメント心理学』中経出版、第5章「リーダーシップの志が高ければ動機も挫けない」、とりわけ第23節「新時代を開く『サーバント・リーダーシップ』」219-249頁。
 
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