神戸大学MBA

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2008年度テーマプロジェクト発表会
 

2009年2月7日(土)

プロジェクト方式の大事な節目の一日は、とてつもなくインテレクチュアルでした。

1年次前期のケースプロジェクト研究の学びと感動を引き継ぐために、本年度より、1年次後期にテーマプロジェクト研究を始めました。ケースプロジェクト研究では、研究テーマと研究グループの構成は、担当教員が決め、各チームは、研究の視点に相応しいケース企業を選定し、フィールド調査を行うことが課せられました。テーマプロジェクト研究では、各学生は、自主的に、研究グループを構成し、研究課題を設定し、ケース対象企業を3社以上選定し、フィールド調査研究を行い、仮説を検証し、発表するというチャレンジに直面しました。経営学は、知識体系として教室で教えることが出来る部分と、フィールド研究等を通じて自ら体験し、考えて、学ぶ部分の両方があります。MBAの研究ですので、研究のための研究ではなく、なんらかの社会的な意義というものも期待されます。働きながら、4ヶ月という短期間で結果を出すということ自体も難題ですが、無理といわずに前進できました。


12チームの研究発表があり、金賞は、『食品メーカーにおける品質不祥事の発生原因』に授与されました。雪印乳業、不二家、赤福のケースを調査し、社内のもったいない精神と安全神話が品質不祥事に繋がるという仮説を提示し、検証しました。この仮説が示唆するところは、食品メーカーの品質不祥事は、経営者のモラルの問題でなくとも、ブランド企業が普通の活動をしていても発生しうるということであり、企業にとっては、恐ろしく重大な意味があります。論拠には、弱いところも見うけましたが、インパクトのある仮説に説得力のある証拠を示せたことで、評価にあたった教員から一様に高得点を獲得しました。

銀賞は、『消費者に対するコミュニケーションによって、意図的に社会現象をひきおこせるか』に与えられました。ボディコン、焼酎、キシリトールに着目することによって、新製品が多くの消費者にライフスタイルや価値観の変化をもたらすという意味での社会現象を意図的にひきおこせるということを示しました。社会現象の仕掛け人を見つけ、その拡大・拡散に係った人々に広くインタビュー調査を行った力作です。マーケティングで社会現象を引き起こせるかという問いに肯定的な証拠を提示したことは、驚くべき成果です。



銅賞については、5つの研究課題の接戦となりましたが、『製造業界におけるVMI(Vendor Managed Inventory)の導入障壁について』(パナソニックコミュニケーション、豊田自動織機、NEC埼玉)が一歩抜きんでて、銅賞に輝きました。VMIがJITに移行するケースを持ってきて、VMIの浸透の障壁について考えさせる内容になっていました。



惜しくも、銅賞を逸した次の4つの研究は、どれも素晴らしい研究なのですが、受賞を逸した理由をあえて考えてみたいと思います。

『FA機器業界における超高収益企業の優位性に関する考察』(キーエンス、SMC、オムロン)は、キーエンスに代表される高収益企業の強さについて、文献にない情報を提供していたのですが、豊富な情報が未整理、未消化なものとなっていました。時間切れの印象を残しました。

『事業再生における成功要因を探る』(ユー・エス・ジェイ、済世会熊本病院、しなの鉄道)は、事業再生におけるターンラウンドマネジャーの役割に焦点を絞った佳作ですが、ケースの選択に妙とパンチが感じられなかったという印象があります。

『組織構造の発展パターンからの逆行要因について』(丸文、ベネッセコーポレション、NEC)は、組織構造の動態について、研究者の目で、実務を見るということに徹したアプローチを取ったもので、加護野先生が言うプロジェクト研究でのあるべき姿勢をとっていました。もう一段のブレークスルーが受賞には、必要だったか。

『企業における自律的キャリア形成と社内公募制度』(ブラザー、オムロン、NEC)は、社内公募制度の位置づけは今こうなっているということを明らかにしたという貢献があるのですが、そもそも、社内公募制度がどうあるべきかに繋がるような題材が不足していたように思います。仮説に奥行きがなかったといえます。


他に、次の5つの発表がありました。どの研究も立派に合格ラインを突破しています。

  • 『組織における知の受渡しと発展に関する考察 ?医療現場におけるナレッジマネジメントを例にとって?』(聖隷浜松病院、聖路加国際病院、神鋼病院)
  • 『業歴の長い中堅中小企業におけるファイナンスの決定要因を明らかにする?業歴の長い中堅中小企業と金融機関の最適な関係をみる?』(匿名3社)
  • 『独立系ベンチャーキャピタルの投資行動とその役割について』 (大和SMBCキャピタル、大阪中小企業投資育成、Classic Capital Corporation、グローバル・ベンチャー・キャピタル)
  • 『「顧客の声を聞かない商品開発」についての考察』 (日本コカ・コーラ、味の素、バンダイ)
  • 『製薬企業を支えるアライアンス・マネジャーのジレンマ』(日本イーライリリー、塩野義製薬、協和発酵工業、中外製薬)

  • 研究発表の評価には、重鎮から若手を含めた7名の教員が、それぞれ一定の分布に従う5点評価をし、その合計点で順位付けするという方式で行いました。全てのグループが時間、心血、頭脳をつぎ込んだ作品でしたので、順位発表時には、ブーイングのようなため息があちらこちらで漏れました。研究がそれぞれのグループでour babyのような存在にまでなっていたということでしょう。

    受賞研究は、この原石をさらに磨けば輝かしいものになるという説得力のある証拠を複数ケーススタディで提示できたという意味で優れたものとなっていました。ケーススタディが論拠の中心となるので、ケースに語らせた研究の評価が高かったと思います。抽象的な議論よりは、ケースの特色を生かした具体性。極端な事象の意味すること。発表を聞いた後の余韻等。更なる疑問を感じさせるような研究の評価が高かったようです。来年度の学生も、足元の絨毯を引っ張るような研究にチャレンジしてみてください。しかしながら、理論武装を忘れないように、また、研究の完成度で勝負するという方策も、とんでもなく素晴らしい成果に繋がる可能性も今回示唆されています。来年度の学生は、極端なポジションを取って、入賞を目指してください。

    最後になりましたが、1月10日(土)の中間発表時には、15名の神戸大学MBA終了生からなるMBAフェローの皆様に、これも丸一日かけて、全ての研究について、ピンポイントの改善点を指摘していただいたことを感謝いたします。神戸大学MBAのプロジェクト方式の伝統を再確認しました。

    (文責:松尾博文)