神戸大学MBA

アクセスマップ お問い合わせ
  • 文字サイズ
  • 標準
  • 標準


2014年度テーマプロジェクト研究最終発表会
 

2015年1月10日(土)

テーマプロジェクト研究最終発表会は今回で7年目になります。回数を追うごとに発表内容、発表スタイルは洗練されてきたように思います。MBAの先輩諸氏が経験、教訓を共有していただいていること、MBAフェローやシニアMBAフェローの的確な批評、親切な指導、加護野先生の経営学についての奥の深いコメント、こういうものの蓄積がみられます。とはいうものの、グループ・フィールド研究はしんどいもので、金賞を取りにいかないと、他のグループの発表と比べてずいぶん見劣りしたものになってしまいます。エキサイトメントもありました。過去、インタビューを進めるために海に飛び込んだ学生、今回は、なぜか100キロウオークに挑んだグループとか、発表があまりに感動的だったので、感極まったとしたMBAフェローなどを振り返り、神戸大学MBAのプロジェクト研究とは「いったいなんなんだ」と考えさせられます。

 この原稿を書いている時にちょうど、神戸大学専門職大学院(MBA)編の『人生を変えるMBA』が有斐閣から出版されました。この本では、以下に紹介する今回入賞の4チームがその経験、学びを述べております。是非ともご参照ください。

 今年は、12チーム、各チーム20分の発表と10分の質疑応答を12名の審査委員(加護野先生、来年度の演習担当の上林松尾貴巳内田先生、シニアMBAフェローの井上、山縣、金内、田中、白石氏、そして、指導教員の松尾博文が評価しました。発表のタイトルとケース対象企業は発表順に以下のようになりました。ここに挙げました研究に協力していただきました企業、これらのケース対象企業の他の多数の協力していただいた企業、神戸大学以外でもアドバイスをいただいた専門家の皆様に、心からお礼を申し上げます。

発表タイトルとケース対象企業・事業
『シニア市場における成功の鍵に関する考察?拡大する市場をこじ開けろ?』(マイファーム(貸農園)、カーブス(スポーツクラブ)、ヤマハ発動機(電動アシスト自転車シニア向け))
『中小企業発、モチベーション向上の秘訣』(クロフーディング(ル・クロ:レストラン)、バグジー(美容室)、大阪市音楽団、ヨリタ歯科)
『ランニング・登山・自転車市場の拡大要因についての研究?日本人を夢中にさせる「遊び」の本質への気付き?』(アシックス、ナイキ、アールビーズ、モンベル、好日山荘、ファイン・トラック、アイヴ・エモーション、シスメックス)
『技術力ある中小企業のジレンマ?成功のカギは社外にあり?』(エースシステム(工作機械設計メーカー)、アイコム(無線機専門メーカー)、キャステム(金属加工部品メーカー)
『アントレプレナーシップの知財戦略?知財を武器に変えるには』(日亜化学工業(LED製造)、ヤマシタワークス(研磨)、モリサワ(日本語フォント販売))
『ジェネリック家電におけるビジネスモデルの研究』(イズミヤ(総合小売業のチェーンストア)、山善(家庭機器事業)、ツインバード工業(家電製品等製造販売)、ダイニチ工業(石油暖房/家電製品製造販売)、パナソニック)
『女性管理職比率を急上昇させた企業に関する考察』(キリン、NTT、カルビー)
『Going concernとしての事業立地の転換を実現するために?GNT企業の一風変わった企業文化から見る一考察?』(ヤナギヤ(カニカマ製造機)、ナカシマプロペラ(船舶用プロペラ)、金剛組(寺社建築)、林原(バイオ))
『農業の新しいかたち?“農家”から“農業経営者”へ?』(JA(農業共同組合)、大手小売業者、篠田いちご園(農業・農園)、フレッシュカート(食品販売)、農業総合研究所(農産物委託販売))
『経営企画部門のあるべき姿について』(村田製作所、シスメックス、トリドール、MonotaRO(工場資材等通信販売)、JDI(ジャパンディスプレイ)、ANA)
『メガファーマを“出しぬく”中堅・中小製薬会社の研究』(JCRファーマ(バイオ医療品)、帝國製薬(パップ剤)、テルモ(医薬・医療機器)、エーザイ(抗認知症薬等)、日野薬品工業、本草製薬)
『「脱」伝統・地場産業?新たなステージに向けた、中小企業の攻めのブランディング?』(寿月堂(日本茶)、山田平安堂(漆器)、岩鋳(南部鉄器)、オザワ繊維(播州織))

金賞は、『「脱」伝統・地場産業?新たなステージに向けた、中小企業の攻めのブランディング?』を発表した「チームプレミアム」が獲得しました。ブランディングをどのようにするかというマーケティングのメインストリームの課題は過去にも何度か研究されたのですが、学術的に研究されつくされているということで難しいトピックです。「脱」伝統・地場産業という絞り込みで、実行可能で有効な方法が提案されていることが高評価につながりました。発表に説得力がありました。

 

銀賞は、『ジェネリック家電におけるビジネスモデルの研究』をした「メーカーズ」が獲得しました。こちらは、ノーブランドの製造・販売業者がサプライチェーンを洗練し、価格と品質の絶妙のバランスを取って利益につなげていることが報告されました。大企業に見られがちな荒っぽいオペレーションではなく、中規模企業のきめの細かいビジネスモデルに学ぶところは多いと思います。

 

 

銅賞は同点で2チームが受賞しました。『アントレプレナーシップの知財戦略?知財を武器に変えるには』を発表した「アントレ5・チーム」は、これもブランディングのように過去毎年のように挑戦されて、入賞チームがでなかった起業・事業創設というチャレンジングな課題で銅賞を獲得しました。起業、新規事業創設トピックは、経営全般を総合的に捉えないといけないので、絞り込みが難しい課題です。この発表では、知財という切り口で、シャープで意味のある結果が導けていたと思います。

 

同点の銅賞は、『Going concernとしての事業立地の転換を実現するために?GNT企業の一風変わった企業文化から見る一考察?』は「ワカメタルチーム」が獲得しました。チームビルディングに100キロ歩こうとしたグループですが、成功事例と失敗事例を対比させながら、事業立地の転換を支える組織力とは何かということが示されました。ストーリーが少し拡散ぎみでしたが、残像のあるケースが評価されたと思います。

 


 今回、特に敢闘賞を与えるべきではないかと感じさせた発表は、『女性管理職比率を急上昇させた企業に関する考察』と『農業の新しいかたち?“農家”から“農業経営者”へ?』の2件です。女性管理職比率と農業経営というホットなトピックで有効な処方箋が導かれていました。しかしながら、発表の説得力が弱いということで減点されたと思います。シンプリスティックではないが、シンプルなメッセージを、直にわかる正確な表現をもちいてシンプルな論理構成で、なるほどと思わせる事例と印象的なインタビューでのフレーズを使って、説得力をもって発表することが肝要です。発表時間が短いので、説明の必要なあまり受け入れられていないビジネス用語、比喩的な言葉は使わないようにしましょう。

(文責:松尾博文)

※2014年度 金賞チームのインタビューはこちら